【アルバム紹介】Birth of the Hot / Jelly Roll Morton & His Red Hot Peppers(1927 / 1995remix)
今回は、ジャズ黎明期のアルバムをご紹介します。
(note始めた当初は、J-Popのヒットチャートとかを紹介しようと思ってたんですが、全然してませんね……)
ラグタイムとは何か
この時期のジャズについて語るとき、ラグタイムを欠くことはできません。
ラグタイムとは19世紀後半〜20世紀前半にアメリカで流行した、黒人ルーツ音楽のジャンルです。ジャズが確立するよりも前の音楽で、マーチの影響を色濃く受けた伴奏(2拍子に近いズンチャッ、ズンチャッというリズム)と、シンコペーションが特徴。
※シンコペーションとは、強拍をズラす手法のこと。だから、その強拍のズレが「遅れ」と捉えられたんでしょうね。ちなみに、シンコペは現代のPOPsでも多用されている超重要手法です。詳しくは調べてくれ……いっぱい解説本が出てる。
ピアノをメインに、黒人ルーツのシンコペーションを多用したラグタイムは、当時主流だったクラシックに対して「遅れている(rag time)」と評されたことがルーツと言われています(諸説あり)。
聞けばわかるように、クラシックやマーチなど、従来の音楽の系譜をひきつつも、後に発展するジャズにも大きな影響を与えた、音楽史上の超重要ジャンルです。
ラグタイムは結構有名ですよ!
ラグタイムってなんだ??と思った方、アルバム紹介の前に1曲だけご紹介します。これを聞けば、なんとなくジャンルのイメージが付くのではと思います。
超有名曲、「エンターテイナー」。ピアノを始めたばかりでよく弾く曲ですね。実はこれもラグタイムです。確かに、シンコペーションが多用されており、よく聞けばスウィングの雰囲気もありますね。
ジャズの創始者!?Jelly Roll Morton
さて、みなさんに今回ご紹介するのは、Jelly Roll Mortonと、彼が率いたRed Hot Peppersというバンドによるアルバム、Birth of the Hotです。
このアルバムがでた当時は、Jazzというジャンルがまさに生まれつつある時代です。当時、ラグタイム作曲家・ピアニストとして名を馳せていたジェリー・ロール・モールトンは、後年になり「自分のピアノ演奏スタイルをジャズと名付けた」と主張し、ジャズの創始者を名乗っていたようです。
※この発言が真実であるかは、疑わしいとされていますが……。
そんな彼が率いたバンド、Red Hot Peppersは、レッチリの語源になったとも言われる、1920年代に活躍したバンドです。バンド、といってもイメージとしてはビッグバンドの方が近いかもしれません。
※レッチリの語源は諸説あります。
この、Red Hot Peppersの曲は、もちろん、明らかにジャズのような曲もあるのですが、ラグタイムっぽい曲も混じっていたり、果ては合いの子のような曲も。その辺りの、ジャンルの勃興期の、入り混じった感じが聴きどころです。
アルバム「Birth of Hot」
さて、アルバム紹介に移ります。
まず最初は、アップテンポな01.「Black Bottom Stamp」から。冒頭から始まるテーマが印象的です。続いて02.「Smoke House Blues」。タイトルに入っていながらも、あんまりブルースっぽくはないですね……。スローテンポな、ブラスが魅力的な曲です。
04.「Dead Man Blues (Take 1)」は、21.「Dead Man Blues (Take 2)」とセット。イントロだけ聴いても、まとまった当たり障りないテイク1に比べて、テイク2の方が、各楽器が気の赴くまま……悪く言えばやり過ぎな演奏になっています。こういった、テイクごとの演奏の違いを比べるのも、とても楽しいですね。
08.「Grandpa's Spells (Take 3)」と、09.「Original Jelly-Roll Blues (Remastered 1995)」は、かなりラグタイムの影響を感じる曲。ベースのリズム進行が、まさにそれです。それはともかく、1995にリマスターしてるんですね……。あんまり大幅な変化は感じないですが。
唯一、「ジャズ」の文字が入っている10.「Doctor Jazz (1992 Remastered)」。各楽器のソロが魅力的な曲ですが、確かにソロの演奏はかなり後年のジャズにも近いですね。少し飛んで、12.「Billy Goat Stomp」は、ヤギの鳴き声から始まる謎曲。変拍子や、中間部のオーケストラヒットみたいな部分(?)は、現代でもなかなか見ないチャレンジぶりですね。
私が一番好きなのは、17.「The Pearls (1995 Remastered)」。冒頭から、そんなのあり?と思ってしまうようなコード進行で度肝を抜かれます。19.「Mr. Jelly Lord」もお気に入り。おやつ食べる気怠い昼下がりに流したい。ジャズ系のピアノって、私の感覚では「音が立っている」という感じなのですが、クラシック畑の私からすると、とても魅力的に感じます。あと、ミスタッチも味、みたいなのもすごいですよね。クラシックではありえない。
おわりに小咄:ディズニーランドのBGM
いかがでしたでしょうか。たまには趣向を変えて、いつも聴いているジャンルから外れたものを聴いてみると、発見がたくさんありますよね。
さて、最初の方で、ラグタイムの具体例として、「エンターテイナー」を挙げましたが、他にも街中でも聴く機会はたくさんあります。
ディズニーランドのワールドバザール(入り口すぐのアーケードのお土産物屋街)〜プラザ前(シンデレラ城前)で流れているBGMもラグタイムが多いですね。
例えば、こんなの。
こんだけ曲紹介したら、もう十分ですかね。では、今回のところはこの辺で。
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