2024年前半頃に聴いた、新譜と旧譜(その①洋楽編)
どうもおはこんばんちわ。
だいぶ御無沙汰したんですけど、さすがに、そろそろ聴いている曲を自分のためにも、整理することにしました。というわけで、2024年1月以降に出会った曲(新譜・旧譜)のうちで、皆さんのお耳に入れるに値するような気がするものを、つらつらと並べておきます。
半分おすすめしたいもの順、半分ざっくりジャンル順ということで、それらを総合的に評価した結果順(?)に並べています。結構コメントの量に多少がありますが、必ずしも多ければおすすめということでもなく、皆さんがよくご存知そうなやつは省いたりなんだりしています。
アルバムたち
the record(boygenius, 2023/3/31)
いきなり旧譜ですみません。
boygenius(ボーイジーニアス)は、米国の女性シンガーソングライター3人組のユニット。既にある程度のキャリアがある3人が集まって結成した、いわゆる「スーパーグループ」で、ジャンルは、インディーロック。
皆さんの前で釈迦に説法をするつもりはありませんが、日本でいう、いわゆる「インディーズ」とは若干ニュアンスが異なり、80年代の英米圏をルーツとする音楽ジャンルのことです。
今年になってから知ったユニットなんですが、なんと2024年2月に活動一時休止を宣言。「いいな!これ!!」と思った人たちに限って、既に活動を休止してるパターン、めっちゃ多いんですけど、何なんですかね……。どうやら、2023年のコーチェラにも出てたらしいんですが、配信、聴き逃しました。
3人全員曲書くので、アルバムを通しで聴くと違いが面白いとか、色々特徴はあるんですけど、個人的な好きポイントとしては、まぁ結局コーラスですね。コーラスがきれいなバンド、癖です。
1曲選ぶとしたら、やはり6.「Not Strong Enough」ですかね。
本アルバムは、活動5年目でのリリースですが、まるでメンバー全員が長年連れ添ってきたかのような安心感があります。しかし一方で、やはり別々のキャリアを歩んできた3人の、別々の世界観や自我がぶつかり合う緊張感もある。ここが、この曲の魅力を引き立てています。
3名がそれぞれ交代でリードを取っているので、その点を意識して聴いてみると一層楽しめます。スーパーグループで、途中でリードが変わるってのは、まあめずらしくないと思いますが、サビのコーラスが聴きどころ。
Aメロ→サビ、A'→サビ'、A''→サビ''という構成ですが、サビの裏のコーラスは、リードを取っていない2名が担当しています。つまり、リードが代わるごとに、裏のコーラスののメンバーも変わるんですよね。
リードが変わるだけで、全く別の地平が現れる、でもやっぱり同じ曲でもあり連続性もある。それぞれがリードを取れる実力と個性とカリスマを持っていながら、コーラスで合わせることもできる。このめちゃくちゃ微妙な紙一重のバランスが、このユニットの全てを表していると言っても過言ではないと思いますし、アルバムを通して現れています。
紙幅の都合(?)から、他の曲をいちいち詳説することは避けようと思いますが、例えば12.「Letter To An Old Poet」は、ちょっとエンディング風ですし、曲順とアルバムを通しての構成も、ちゃんと良く考えられているので、是非通しでご試聴ください。
Only God Was Above Us(Vampire Weekend, 2024/4/5)
Vampire Weekend(ヴァンパイア・ウィークエンド)から、フルアルバムが4月に出ました。まぁ、これは、もう世界中で大騒ぎでしたし、私がとやかく言う事ではないですよね。完成度も高いし、Vampire Weekendらしいし、申し分ないアルバムだと思いました。あ、そういえば、これもインディー・ロック系統ですね。癖がバレます。
米NY出身の彼らですが、アメリカの大都会の洗練された空気感と、若干イデオロギーに生きるアメリカ人の感じ(?)を、そのまま届けて曲に乗せて届けていただいています。まぁ、巷にたくさん紹介記事が出てると思いますし、私ごときが特に付け足せることは特にないので……とにかくお聴きください。
地球儀が印象的だった前作「Father of the Bride」との対比で言えば、音楽的にも、技術的にも、バラエティ豊かになったなというのが、初見時の感想でした。まぁ個人的には、前作の方が、逆に言えば、もっと純粋で焦点が合ってる感じがして、衝撃度としては大きかったんですが、それは単に、前作がVampire Weekendとの邂逅だったからかもしれません。巷の評価は、今作の方が高そうです。
いずれにせよ、唯一無二の音、世界観、クオリティーは健在で、今年の必聴アルバムです。
Charm(Clairo, 2024/7/12)
まーたアメリカだ。すみませんね。お次は、シンガーソングライターClairo(クレイロ)です。
自分でも何故だかわからないんですが、このアルバム、聴いててものすごい心地良いんですよね。例えば、家の掃除をしながら音楽をかけてるときとか、そういう「ながら聴き」のときに、わざわざ手を止めてまで、巻き戻してもう一回再生したくなることが多かったのが、この『Charm』というアルバムでした。
ローファイな志向の、いわゆるベッドルーム・ポップというジャンルに属するわけなんですが、好感ポイントとしては、ローファイがわざとらしくないというところ。
もうピークは過ぎた感もありますが、ローファイって、今、一大ブームで、猫も杓子もローファイって感じじゃないですか。私も、レコード集めたりしてるんで、人のこと言えないですが、デジタルネイティブ世代の、あの「偽アナログ信仰」みたいなの、正直気持ち悪くないですか?で、よくよく聴いてみると、寿司でいうカリフォルニア・ロールみたいな感じ。まぁ別に、それはそれとして、もうジャンルは確立してるんでいいんですけど、ファッションローファイみたいな、いやそうじゃねえだろ感。
そこに来て、Clairoの音は、明らかにローファイ系なんですが、「ローファイってかっこいいね!チルいね!!」みたいな感じではなく、息をするようにこのサウンドに行き着いてる感が、ものすごく心地良いです。
まぁ、本人に取材したわけじゃないんで、蓋を開けてみれば、本人は単なる
「ミーハーなローファイってチルいよね勢」なのかもしれませんが。少なくとも、曲からは、そうではないように聴こえます。
Run Your Mouth(The Marías, 2024/3/7)
うっわ、知らなかったけど、またアメリカか。西海岸はLA発のバンド、The Marías(マリアス)です。ちょっとドリーム・ポップっぽい、ポップ・ロック。一応、紹介順考えてやってるんですけど、見えてきました??
先行シングルになっていた4.「Run Your Mouth」は、聴いてるだけで体を揺らしたくなるノリの良さが魅力。フロントマン(ウーマン?)が、Maria Zardoyaという方で、プエルトリコ出身だそう。このリズム感は、彼女の出自にもあるのか、とかいうのは、この時代良くないですね。
ベッドルーム・ポップとは違う種類なんですが、こっちの方が夢のようですよね。精神世界を彷徨っている感じというか。打ち込みを多用しながらも、全体を通して、よくよく聴くと結構がっつりなバンド系サウンドですし、一回生で観てみたいですね。
Twice Around the Sun(Ugly, 2024/4/3)
さて、お次は、英ポスト・パンクバンドUgly(アグリー)のアルバム。なんか、その筋の人からは、ずっとしばらく脚光浴び続けてるらしいですね。
本当に「その筋の人」、手が早すぎませんか。Black Country, New Roadとかと同世代の、若手バンドです。
2.「Sha」は、米ジャズ・ピアニストのHerbie Hancockが、日蓮宗について語るビデオ(があるらしい……)から着想を得た曲。なんと、曲中にも、「南無妙法蓮華経」というコールが何度もかかります。もともと、そういうスピリチュアルなものに興味がある人たちらしく、6.「I'm Happy You're Here」でも、4:15を超えたあたりから、絶対にハッピーではない感じの、"I'm happy you're here"のコーラスが続き、時空が歪むかのような音像が続きます。
しかしながら、明らかに曲の作りは、サイケではなく、やっぱりジャンルとしては、ポスト・パンクとしておくのが適当でありつつも、スピリチュアルなパートがあったり、どことなくビョークを思わせるような和音やリズムが急に顔を出したりと、癖になる楽曲ばかりで、すっかりハマってしまいました。
Yes Da Da Da(Windows 96, 2024/5/11)
まぁ、これはなんでもなく、単に私が、Windows 96が好き、というだけの話です。なので、一応遠慮して、一番最後に回しました。笑
Windows 96は、ヴェイパーウェイブの世界で、割とずっとコンスタントに曲を出し続けてる超人なんですが、普通にめちゃくちゃ聴きやすい。
というのも、ヴェイパーウェイブってのは、消費資本社会への風刺とか、そういうイデオロギーを持った音楽ジャンルのはずで、曲に引っ掛かりがあって当然なんですが、それが全然ない。でも、それが良い。普通に聴けます。
辛いことを添えておけば、若干、手癖的に作っている素人臭い部分が顔を出すこともあるんですが、まぁもともとこのジャンル自体が、ネット発祥ですし、もともとそういうもんでしょう。違和感は特にないです。
いろいろ言いましたが、改めて、この曲を何に分類しますか、と聞かれたら、ヴェイパーウェイブ以外ないですね……。この記事の読者の皆さんであれば、カフェとか経営されてると思うので、お店のBGMに、Windows 96はいかがでしょうか。
シングルたち
Balimele(DBD Gogo, Tyler ICU, Lee Mckrazy, 2024/7/10)
ちょっと、これは完全にSpotifyのおすすめ機能で見つけたんですが、この半年、初見で衝撃を受けたもののうち一つ。噂のアマピアノってやつですよね。私、全然アマピアノって、聴いたことなかったので、なんというかリズムにも、音にも、ちょっと圧倒されました。
南アフリカのDJ、DBD GogoとTyler ICU、それにアマピアノシンガーのLee Mckrazyのタッグ。ちょっと、これを評するバックグラウンドを、残念がら持ち合わせていないんですが……強いて言えば、ベースが、破壊的に強烈ですね。笑
ド素人なので、探せば他にもいい曲がいっぱいあるはず。これを足がかりに、今後、アマピアノを開拓していきたいとおもいます。
Cinnamon Curls(Tom Misch, 2024/6/13)
同じ米国のアーティストでありながら、東海岸のVampire Weekendに対して、西海岸のTom Mischというのは、ちょっと先入観が入りすぎでしょうか。
まさに、「歌うようなギター」。めちゃくちゃテクいのに、ギラついてない。これは、並大抵のことではないと思います。あと、ものすごく感覚的で恐縮なんですけど、エフェクターに塗りつぶされていないというか、もともとそうあるべきであったかのように、エフェクター使いがぴったりハマっているというか。まぁとにかく凄腕なんだろうなぁと、凡人の私は、関心することしかできません。
Escapism. - 4am Remix(RAYE, 2024/2/2)
英シンガソングライターのRAYE。先日のフジロック2024でも、かなり好評のようでしたね。圧倒的な歌唱力と、障害やレコード会社との確執に苦しんだ自身の経験に基づく、ソウルフルで力強い楽曲が魅力の、王道シンガーです。
No Rush(Tokyo Tea Room, 2024/7/10)
英国のドリームポップ・バンド、Tokyo Tea Roomから新譜が出ました。気づけば、Tokyo Tea Roomは、もうしばらくこのジャンルの代表選手として君臨している気がしますね。
この人たちは、前々から音作りが巧み(だと私は評価している)なのですが、これまでのバンド基調サウンドを維持しつつ、更にもうもう一段踏み出したなという感じがします。
これが、次のアルバムからの先出しリリースということなので、期待しています。
終わりに
ちょっと、ここ1年くらい、生活上の変化が色々あって、あんまり音楽に集中できない日々が続きました。ただ、それでも振り返ってみると、まぁさすがに半年もあれば、それなりに聴いてますね。
振り返っておもしろいなと思ったのが、環境の変化に応じて、聴く曲のジャンルが変わってる気がしました。一昨年〜昨年くらいまで続いた電子音楽へのドハマりは鳴りを潜め、インディーロックだとか、ベッドルーム・ポップだとか、ドリームポップだとか、そういう比較的優しめ(?)の音楽に惹かれた半年だったかもしれません。
もちろん、洋楽ばっかり聴いていたわけではなくて、邦楽も、あとはクラシックとかも色々聴きました。が、記事が長すぎるので、そいつらは、別の機会に紹介したいと思います。
今年後半も、「食べるように聴く」。
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