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【Phidias Trio vol.10 “Live on... Ⅱ”】作品紹介: 木下正道 «炎は炎の中に消える、そして時間は時間の中に VI» (2021)

2024年7月6日にPhidias Trioの定期公演「Live on…Ⅱ」が行われます。
今回は、田中吉史、神本真理、山本哲也、松尾祐孝、木下正道、渡辺裕紀子各氏の作品を演奏します!

公演に向けて演奏作品について紹介をさせていただきます。今回は木下正道さんの作品 «炎は炎の中に消える、そして時間は時間の中に VI» についてです。

作曲家自身による作品解説を引用します。

炎は炎の中に消える、そして時間は時間の中に VI (2021)

 この、バスクラリネット、ヴァイオリン、ピアノによる三重奏曲は、フィディアス・トリオの委嘱により、コロナ禍の中、2021年の1月に作曲しました。特に「コロナ禍だから」と何か書き方を変えたなどということはありません(そういうことは私の性分に合わないのです)。そして彼らによって動画収録され、youtube上にアップされました。今回が舞台初演になります。
 タイトルの「炎は炎の中に消える、そして時間は時間の中に "Le feu s'eteint dans le feu et le temps dans le temps "」は、エジプト生まれでフランス語で書くユダヤ系詩人、エドモン・ジャベスの詩句から取りました。
 冒頭のピアノによる単音の簡潔なメロディが、この曲の「種」であり、そこから順次(ノイズや装飾にまみれながらも)旋律が生み出されていきます。それらはゆっくりと確実に育ち、互いに異質さを纏いながら層を作っていきますが、実はそれらの背後には、極めて厳密に制御された、細部と全体を統合する、言わば「聴こえない構造」が埋め込まれています。これと、表面の「聴こえてくる構造(歌と言い換えてもよいでしょう)」が持つ表層の時間との齟齬が、実際にこの作品を演奏し、また聴く場合に、例えると恰も近似の音程を複数鳴らした際に生ずる「うなり」のような効果を、音楽の立ち上がり方そのものに与えるかもしれません。その結果、そこで揺らぎ始める「時間・空間」の間-隔化とでもいうものが、この曲の(に限らず私の曲は殆どそうなのですが)作法の目指すものの中核であると言えるでしょう。そしてやがてそれらに「炎」が放たれ、作曲された、作為をこらしたすべての結果が、静寂に帰していくまでを追います。そこではもっと根源的な、かつ絶対的な消尽の結果としての「無、沈黙」の世界をかいま見る、一つの機会になることを、願ってもいるのです。

木下正道 

この作品を委嘱する前から、木下正道さんの曲は、Phidiasの各メンバーがさまざまな折に演奏させていただいていて、その独特な作品世界や時間感覚に魅せられていました。

コロナ禍の折、公演を開催するのが難しい状況でも、Phidias Trioとして何か新しいことに挑戦しようということで、3人の作曲家に新作を委嘱し、演奏をYouTubeで公開しました。そのときに木下正道さんに書いていただいたのが、この作品「炎は炎の中に消える、そして時間は時間の中に VI」です。

今回、満を持してこの作品を舞台初演できることをとても嬉しく思います。
この音楽が持つ「炎」、そして極限の静寂がもたらすものを、ぜひホールの臨場感の中でじっくりお聴きいただけたら幸いです。(Phidias Trio)

木下正道 (きのした まさみち)
 1969年、福井県大野市生まれ。吹奏楽とハードロックの経験の後、東京学芸大学で音楽を学ぶ。大学入学後はフリージャズや集団即興、お笑いバンド活動なども行った。武満徹作曲賞、文化庁舞台芸術創作奨励賞、現音楽新人賞などに入選。現在は、様々な団体や個人からの委嘱や共同企画による作曲、優れた演奏家の協力のもとでの先鋭的な演奏会の企画、通常とは異なる方法で使用する電気機器による即興演奏、の三つの柱で活動を展開する。ここ数年は主に室内楽曲を中心として年間20曲程度を作曲、初演。東京近辺で活動する現代音楽に関心を寄せる演奏家の殆どがその作品を初演、再演している。また多くの先鋭的な若手作曲家、演奏家たちによる企画に招聘されている。最近は童話制作も始め、自ら執筆、朗読している。また大変なブルックナーマニアであり、今年11月には、ブルックナーの交響曲第9番の「第4楽章補作完成版」の初演も控えている。

公演詳細

phidias-vol10.peatix.com

【Phidias Trio vol.10 “Live on… II”】

2024年7月6日(土)
15:00開演(14:30開場)
KMアートホール (渋谷区幡ヶ谷1-23-20 京王新線幡ヶ谷駅より徒歩6分)
一般3,000円 / 学生2,000円(当日券500円増)

プログラム
田中吉史 : bogenspiel Ⅰ for violin solo(2003)
神本真理 : 記憶のコラージュ (2002/2024 revised)
山本哲也: Psychedelic Study for clarinet solo (2011)
松尾祐孝 : The Stratosphere (1985)
木下正道 : 炎は炎の中に消える、そして時間は時間の中に VI (2021)
渡辺裕紀子 : Memory and Stain (2019)


フィディアス・トリオ10回目の定期公演となる今回は、〈vol.7 “Live on…”〉に続き、現代を生きる日本人の作曲家たちを特集する。
田中吉史、神本真理、山本哲也、松尾祐孝、木下正道、渡辺裕紀子 — 彼ら6人の作品は、もはや一括りに形容できないほどに、多彩な個性や価値観を感じさせる。この多様性をもたらしているのは、何よりも、徹底した独自の思索と、妥協なき創作姿勢である。
今を生きる音、これからも生き続ける音。それをひたすらに追い求める作曲家たちの軌跡を追う。


出演
Phidias Trio (フィディアス・トリオ)
ヴァイオリン・ヴィオラ 松岡麻衣子
クラリネット 岩瀬龍太
ピアノ 川村恵里佳

2017年に結成。これまでの主催公演では、現代の優れたクラリネット三重奏の作品を取り上げるとともに、 オーストリア、アルゼンチン、ブラジル、チリ、トルコ、韓国、日本の若手作曲家の新作を初演し、 好評を博す。また、ハニャン現代音楽祭(韓国・ソウル)や、日本作曲家協議会主催「日本の作曲 家2021」等、数々のプロジェクトに招聘されている。2021年12月に出演した日本現代音楽協会 主催「ペガサス・コンサート vol.3」の公演の模様は、NHK-FM「現代の音楽」にて、2週に渡って放送された。読売新聞に掲載の「評論家4氏が選ぶ今年の公演ベスト3」にて、2023年の主催公演「Phidias Trio vol.9 “Re-interpret”」が選出される。

https://phidias-trio.com


お問合せ
phidias.trio@gmail.com

主催:Phidias Trio



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