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【Phidias Trio vol.10 “Live on... Ⅱ”】作品紹介: 松尾祐孝 «The Stratosphere» (1985)

2024年7月6日にPhidias Trioの定期公演「Live on…Ⅱ」が行われます。
今回は、田中吉史、神本真理、山本哲也、松尾祐孝、木下正道、渡辺裕紀子各氏の作品を演奏します!

公演に向けて演奏作品について紹介をさせていただきます。
作曲家による作品解説を引用します。

1985 年に行われた第3回日仏現代音楽作曲コンクールに応募するために作曲した作品です。冒頭でいきなり強奏されるピアノによる動機が全曲にわたって音楽の推進力の源になって、この作品は進行していきます。三重奏曲ではありますが、各楽器の独奏カデンツァ的な部分や二重奏が魅力を発散する部分も織り込まれていて、作曲者としては、三人の演奏者それぞれの妙技を味わいながらじっくりとお聴きいただきたいと思っています。Phidias Trio によってこの作品に新たな光が当てられることは、作曲者にとってこの上ない喜びです。
尚、この作品は上述のコンクールの本選会で漆原啓子(vn.)、板倉泰明(cl.)、中川俊郎(pf.)の3氏によって初演され、特別賞を受賞することができました。その特別賞の特典として翌年に個展演奏会を開催し、それが契機となって作曲家でありピアニストでもある中川俊郎氏との協力関係が始まり、現在のチーム百万石などでの活動に繋がっています。
約 40 年前に作曲した若き日の作品をお聴きいただけることは、ややもすると面はゆくもありますが、皆様にお楽しみいただければ幸いです。

松尾祐孝 

ピアノの激しい動機の中から現れるクラリネットの弱音、それをヴァイオリンが受け継ぎ、3人が交互に語り合うように音楽が進んでいきます。3者の一体感はクライマックスに向けて増していゆき、そして最後は繊細な響きの中で、また個々の楽器が語り合います。

40年という時間が経っても生き生きとした力を持つこの作品からは、現在の松尾作品の面影をはっきりと読み取る事ができるでしょう。

こうした作曲家の歴史をたどる再演はとても意義のあることと私たちは考えています。
なおかつ、作曲家に直接、作曲当時のいろいろなお話を聞ける贅沢は、現代音楽ならではの醍醐味のひとつでもあります。

ぜひ会場で皆様にお楽しみいただけましたら幸いです。(Phidias Trio)

松尾祐孝(まつお まさたか)

1959 年東京生まれ。芸大作曲科を経て1984 年同大学院修士課程修了。85 年日仏現代音楽作曲コンクール特別賞、88 年 ACL 青年作曲賞第1位、92 年 ISCM 世界音楽の日々ワルシャワ大会入選、その他、村松賞、別宮賞等、受賞多数。94 年には、〈PHONOSPHEREI~尺八と管弦楽の為に〉が東京フィル欧州楽旅で絶賛を博す。以後、邦楽器の分野にも積極的に関わり、2014 年《松尾祐孝邦楽器作品個展》は大きな反響を巻き起こした。国際交流活動にも積極的で、98 年ブザンソン国際作曲コンクール審査員、《ISCM 世界音楽の日々2001 横浜大会》等の実行委員長、メキシコ《セルバンティノ芸術祭 2005》招待作曲家、エクアドル《日本=エクアドル交流演奏会 2006》招待指揮者、NY《Music From Japan 2007》委嘱作曲家、ポルトガル《Musica Viva 2010》委嘱作曲家、ウクライナ《Donbas Modern Music Art 2013》招聘指揮者、等を歴任。現在、(N法)日本現代音楽協会理事、(公財)日本音楽教育文化振興会理事、(一社)日本木文化学会代表理事、洗足学園音楽大学教授、等。

公演詳細

phidias-vol10.peatix.com

【Phidias Trio vol.10 “Live on… II”】

2024年7月6日(土)
15:00開演(14:30開場)
KMアートホール (渋谷区幡ヶ谷1-23-20 京王新線幡ヶ谷駅より徒歩6分)
一般3,000円 / 学生2,000円(当日券500円増)

プログラム
田中吉史 : bogenspiel Ⅰ for violin solo(2003)
神本真理 : 記憶のコラージュ (2002/2024 revised)
山本哲也: Psychedelic Study for clarinet solo (2011)
松尾祐孝 : The Stratosphere (1985)
木下正道 : 炎は炎の中に消える、そして時間は時間の中に VI (2021)
渡辺裕紀子 : Memory and Stain (2019)


フィディアス・トリオ10回目の定期公演となる今回は、〈vol.7 “Live on…”〉に続き、現代を生きる日本人の作曲家たちを特集する。
田中吉史、神本真理、山本哲也、松尾祐孝、木下正道、渡辺裕紀子 — 彼ら6人の作品は、もはや一括りに形容できないほどに、多彩な個性や価値観を感じさせる。この多様性をもたらしているのは、何よりも、徹底した独自の思索と、妥協なき創作姿勢である。
今を生きる音、これからも生き続ける音。それをひたすらに追い求める作曲家たちの軌跡を追う。


出演
Phidias Trio (フィディアス・トリオ)
ヴァイオリン・ヴィオラ 松岡麻衣子
クラリネット 岩瀬龍太
ピアノ 川村恵里佳

2017年に結成。これまでの主催公演では、現代の優れたクラリネット三重奏の作品を取り上げるとともに、 オーストリア、アルゼンチン、ブラジル、チリ、トルコ、韓国、日本の若手作曲家の新作を初演し、 好評を博す。また、ハニャン現代音楽祭(韓国・ソウル)や、日本作曲家協議会主催「日本の作曲 家2021」等、数々のプロジェクトに招聘されている。2021年12月に出演した日本現代音楽協会 主催「ペガサス・コンサート vol.3」の公演の模様は、NHK-FM「現代の音楽」にて、2週に渡って放送された。読売新聞に掲載の「評論家4氏が選ぶ今年の公演ベスト3」にて、2023年の主催公演「Phidias Trio vol.9 “Re-interpret”」が選出される。

https://phidias-trio.com


お問合せ
phidias.trio@gmail.com

主催:Phidias Trio



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