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【"Faint Lights" 田中慎太郎 with Phidias Trio】 曲目紹介その3

2022年12月10日の【"Faint Lights" 田中慎太郎 with Phidias Trio】の公演が、いよいよ明日行われます。最終リハーサルを終え、田中慎太郎さんの音楽を、会場の皆さまと共有できるのが楽しみです。

私と田中作品との出会いは、彼が主宰するwinter light ensembleの収録においてでした。このプロジェクトは、2020年のコロナ禍の中スタートし、これまでに映像収録とCD録音を行いましたが、いずれも無観客での実施でした。私にとって、彼の作品をライブで演奏する機会は、今回がはじめてとなります。

田中さんの音楽には、空間を浄化する作用があると、いつも演奏しながら感じます。
簡潔に書かれた楽譜は、一見平易に見えますが、ひとつひとつの音選びにこまやかな配慮があることに気づかされます。立ち昇った音と音は微妙な色彩を描いたり、融け合いながら調和し、有機的な世界を映し出します。独特の揺らぎや移ろい、気配のようなものは、ぜひ生の演奏で感じていただけたらと思います。(松岡麻衣子)

引き続きnoteでは、演奏曲について、田中さんからのコメントをご紹介します。
今回は、クラリネットソロ作品《音の火影》と、ヴァイオリンソロ作品《月は窓辺で夢を見守る》についてです。どちらも今回が初演となる新作です。

【音の火影】
クラリネットのための小品。火影とは灯火に照らされた影のことですが、ここでは灯明皿や蝋燭のような微弱な灯火による影をイメージしています。灯火・照らされるもの・その影をテーマとした3つのセクションを、点灯と消灯に見立てたイントロとアウトロで挟み、灯りが微かに絶えず揺れ動くように、クラリネットの音も淡く揺れ動きます。灯火が曲だとしたら、作曲は演奏家を照らすこと、そして音楽はその影。私も微かにでも何かを照らす小さな灯りになれますように。

【月は窓辺で夢を見守る】
主題はウクライナの民謡「夢は窓辺を過ぎて」から引用。主題と変奏のような形式ですが、どちらも断片が提示され、ハーモニクスと共に消え去ります。この曲で試みている限られた要素による音楽の展開は、winter light ensembleをはじめ様々なプロジェクトで長く追求しているテーマのひとつです。私ははっきりと何かを主張することが苦手で、言葉を選び続けて何も言えなくなってしまうこともしばしば。(なのでここでも長くあれこれは書きませんが…)これは言葉や声にならない祈りです。

田中慎太郎

公演詳細

"Faint Lights" 田中慎太郎 with Phidias Trio
2022年12月10日(土) 15:00開演(14:30開場)
KMアートホール(東京都渋谷区幡ヶ谷1-23-20 京王新線幡ヶ谷駅より徒歩6分)

Program
アルヴォ・ペルト
・鏡の中の鏡
・Variations for the Healing of Arinushka

田中慎太郎
 アルバム "永遠と一日" より
 ・春は馬車に乗って
 ・落葉の踊り
 ・灯火
・月は窓辺で夢を見守る #
・音の火影 #
・重なり合った時間 #
・ほのかな明かり #
# 世界初演

田中慎太郎
音の肌触り・静けさをテーマに、モダンクラシカルからアンビエント、映像作品への楽曲提供など多様な形式での制作活動を展開。2018年、堀坂有紀とのユニット「静かの基地」としてアルバム「つきのふね」をリリースする。以降、バイオリニスト新村隆慶とのデュオ「詩音李」によるアルバム「夢は真冬の追憶のうちに凍る」のリリース(2021年)、踊りと演奏によるグループ「満月カルテット」による2日間公演「明月の夜」(2022年)など、コラボレーションによる活動も多数。2022年、室内楽アンサンブルによるソロアルバム「永遠と一日」をリリース。


チケット
一般 3,000円 / 学生 1,500円 (当日券は各500円増し)
こちら↓のリンクからご購入いただけます。

お問合せ phidias.trio@gmail.com
主催: Phidias Trio
文化庁「ARTS for the furure! 2」 補助対象事業

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