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【Phidias Trio vol.10 “Live on... Ⅱ”】作品紹介: 田中吉史 «bogenspiel Ⅰ » for violin solo(2003)

2024年7月6日にPhidias Trioの定期公演「Live on…Ⅱ」が行われます。
今回は、田中吉史、神本真理、山本哲也、松尾祐孝、木下正道、渡辺裕紀子各氏の作品を演奏します!

公演に向けて、演奏作品の紹介をさせていただきます。作曲家自身による作品解説を引用します。

《bogenspiel I 》for violin solo(2003)
私の作品の中には、結果として得られる響きそのものよりも、楽器でその音を出すときの身体的な動作のほうに着目したものがいくつかある。2003年に辺見康孝氏のために作曲されたbogenspiel I(ドイツ語で「弓の遊び」とでも訳せるだろうか)は、こうした興味に基づく最初の作品であった。
伝統的な西洋音楽では、一般に滑らかで安定した音が要求される。理想的な音を得るためには、弓の圧力、速度、弦上の弓の位置、等の要素の微妙なバランスが必要で、そのためにかなり不自然な身体動作を習得しなければならない。言ってみれば、ただ「美しい」音だけが求められ、演奏家の体はそのためだけに調教され、酷使され、見えないところに追いやられる。
この作品では、理想的とされる要素間のバランスをあえて崩して、むき出しの荒々しい響きが作り出される。これによって、音の背後にある演奏家の体の動きこそが本質的な意味を持つような音楽を目指した。

(田中吉史)


 田中吉史さんと初めてお会いしたのは2013年、ドイツから帰国早々に参加した山口県の「秋吉台の夏」現代音楽セミナー&フェスティバルでした。以前、田中さんが指揮講座(講師は杉山洋一氏)用に書かれた短いアンサンブル作品を演奏したことがありましたが、本格的な独奏作品に挑むのは初めてです。長年演奏してみたいと考えていたので、とても嬉しく思っています。「秋吉台の夏」では、多くの作曲家や演奏家と出会い、貴重な経験を得ることができ、今も続く交流のきっかけとなりました。
 《bogenspiel I》は、作曲家自身が述べているように、音ではなく身体の動きにフォーカスを当てた作品です。西洋音楽的に整った“美しい”音を無意識に探るのではなく、動作そのものに意識を向けることに取り組んでいます。タイトルの“弓の遊び”の通り、様々な弓の動きから生まれる遊び心に満ちた響きを楽しんでいただけるでしょう。(松岡麻衣子)

田中吉史:プロフィール
1968年生まれ。独学で作曲を始め、1994-5年にChaya Czernowinに師事。1988年と89年に現音作曲新人賞入選。1990年より作曲家グループ"TEMPUS NOVUM"のメンバーとして活動。1996年に秋吉台国際作曲賞を授賞。国内外の様々な現代音楽フェスティヴァルで作品を発表。これまで器楽・声楽作品を中心に手がけてきた。近作に、楽器演奏する際の身体的制約に注目した独奏曲、既存の音楽作品から素材を抽出した作品、人間の話し声の録音に基づく「発話移植計画」シリーズなどがある。2005年より金沢在住、最近は「北陸の新しい音楽」を主宰してコンサートの企画なども行っている。


公演詳細

phidias-vol10.peatix.com

【Phidias Trio vol.10 “Live on… II”】

2024年7月6日(土)
15:00開演(14:30開場)
KMアートホール (渋谷区幡ヶ谷1-23-20 京王新線幡ヶ谷駅より徒歩6分)
一般3,000円 / 学生2,000円(当日券500円増)

プログラム
田中吉史 : bogenspiel Ⅰ for violin solo(2003)
神本真理 : 記憶のコラージュ (2002/2024 revised)
山本哲也: Psychedelic Study for clarinet solo (2011)
松尾祐孝 : The Stratosphere (1985)
木下正道 : 炎は炎の中に消える、そして時間は時間の中に VI (2021)
渡辺裕紀子 : Memory and Stain (2019)


フィディアス・トリオ10回目の定期公演となる今回は、〈vol.7 “Live on…”〉に続き、現代を生きる日本人の作曲家たちを特集する。
田中吉史、神本真理、山本哲也、松尾祐孝、木下正道、渡辺裕紀子 — 彼ら6人の作品は、もはや一括りに形容できないほどに、多彩な個性や価値観を感じさせる。この多様性をもたらしているのは、何よりも、徹底した独自の思索と、妥協なき創作姿勢である。
今を生きる音、これからも生き続ける音。それをひたすらに追い求める作曲家たちの軌跡を追う。


出演
Phidias Trio (フィディアス・トリオ)
ヴァイオリン・ヴィオラ 松岡麻衣子
クラリネット 岩瀬龍太
ピアノ 川村恵里佳

2017年に結成。これまでの主催公演では、現代の優れたクラリネット三重奏の作品を取り上げるとともに、 オーストリア、アルゼンチン、ブラジル、チリ、トルコ、韓国、日本の若手作曲家の新作を初演し、 好評を博す。また、ハニャン現代音楽祭(韓国・ソウル)や、日本作曲家協議会主催「日本の作曲 家2021」等、数々のプロジェクトに招聘されている。2021年12月に出演した日本現代音楽協会 主催「ペガサス・コンサート vol.3」の公演の模様は、NHK-FM「現代の音楽」にて、2週に渡って放送された。読売新聞に掲載の「評論家4氏が選ぶ今年の公演ベスト3」にて、2023年の主催公演「Phidias Trio vol.9 “Re-interpret”」が選出される。

https://phidias-trio.com


お問合せ
phidias.trio@gmail.com

主催:Phidias Trio



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