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【2024.4.24】CD発売記念公演『Works for Violin, Clarinet & Piano』 プログラムノート①

2017年に結成されたPhidias Trioは、ヴァイオリン、クラリネット、ピアノという編成で、優れた現代音楽作品を紹介してきました。
この度レーベル「蛍光資料」より、『Works for Violin, Clarinet & Piano - Francesconi, Watanabe, Manoury, Hong』をリリースいたします。
4月24日に開催する発売記念公演では、収録曲全ての演奏に加えて、CDの制作秘話を語ります。また、会場ではCDの先行販売も行います。
ぜひご来場ください!

今回のCDは、ルカ・フランチェスコーニ、渡辺俊哉、フィリップ・マヌリ、スンジ・ホンの4氏による作品を収録しております。4/24の公演では、これらの作品を、トークとともに会場でお楽しみいただければと思います。

開催に先立ち、プログラムノート(楽曲解説)を2回に分けて掲載します。

渡辺俊哉: あわいの色彩 I

この曲を作曲する際、限られた作曲時間を考慮し、2011年に作曲したクラリネット、ヴィオラとピアノのための《Light and Shade》を元に、主にそのヴィオラ・パートを手直しして再作曲しようと思った。しかし作業を進めていくうちに、個々の楽器の響きと書かれた音は密接に結びついており、単純に音の高さを高くすれば良いというものではないということに、すぐさま気が付いた。そこで《Light and Shade》の素材を一部使用するものの、その他の部分は全て新たに作曲することにした。したがって2曲の間で共通する素材はあるものの、完全に別の新しい作品だと言えるだろう。3つの楽器は非常に緊密なアンサンブルが求められる。そしてそれぞれの楽器は、光のあたり具合によって浮かんだり沈んだりするような多様な響きの層を作り出す。《あわいの色彩 I》は、岡静代(cl.)、ヨハネス・ブルーメンルーター(vn.)、宮路なのつ(pf.) によって初演された。(渡辺)

渡辺俊哉
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。同大学大学院修士課程作曲専攻修了。1999年度武満徹作曲賞第3位入賞(審査員:ルチアーノ・ベリオ)、第9回佐治敬三賞受賞など。ミュージック・フロム・ジャパン (2012) 、HIROSHIMA HAPPY NEW EAR (2013)、その他、様々なアンサンブルや個人の演奏家から委嘱を受けている。武生作曲ワークショップ、ロワイヨモン音楽セミナーなどに招聘され、2013年にはタンブッコ・パーカッション・アンサンブルより、レジデンス・コンポーザーとしてメキシコへ招かれた。2020年3月に、作品集「あわいの色彩」(ALCD-122)のCDがコジマ録音より発売され、各誌で高い評価を得た。現在、国立音楽大学准教授、東京藝術大学、明治学院大学各講師、日本現代音楽協会事務局長。作曲家、演奏家、音楽学者とともに、研究と実践を通して音楽を多角的な視点から考えるグループ、「庭園想楽」代表。
http://composerworklist.wixsite.com/ composerworklist/toshiya-watanabe

スンジ・ホン: Lucem Vitae

この作品は、クラリネットの静謐な音色のトリル、ヴァイオリンの完全5度音程による反復、そしてピアノの幽玄な上昇音階を併う三和音の、3つのアイデアによって構成されている。これらのモティーフはそれら自体で循環したり、変幻自在に移り変わっていき、作曲を展開させる軸となっている。とりわけヴァイオリンの解放弦を際立たせるための音程構造は工夫されており、徐々に完全5度の光り輝く響きが中心モティーフとして確立され、劇的なクライマックスへと高まっていく。
《Lucem Vitae》は、英国ロンドンのセント・ポール大聖堂にあるウィリアム・ホルマン・ハント(※William Holman Hunt:19世紀から20世紀のイギリスの画家)の絵画《世の光 / The Light of the World》に着想を得て、当初2017年に作曲され、その後2018年に改訂された。作品は約8分でクラリネット、ヴァイオリン、ピアノのために書かれた。2017年12月14日、東京のホール・ソワサントに於いて、Phidias Trioにより初演。作品はPhidias Trioに献呈されている。(ホン)

スンジ・ホン(Sungji Hong)
ホンの音楽は「玉虫色の瑞々しさをもつ作品」(BBCミュージック・マガジン)、「サウンドは実に光り輝く」(ファンファーレ・マガジン)、「ハーモニーと流れるようなダイナミクスが現代的」(ニューヨーク・タイムズ)と評価されている。これまでにグッゲンハイム・フェローシップ、アメリカ芸術文学アカデミーのチャールズ・アイヴス・フェローシップ、フロム音楽財団、全米フルート協会、MATAフェスティバル、統営国際音楽祭、クムホ・アシアナ文化財団、ソウル・フィルハーモニー管弦楽団などからの委嘱を受ける。声楽アンサンブルのトリオ・メディーヴァルによって演奏され、ECMニュー・シリーズ(ECM1929)に収録された彼女の「ミサ・ルーメン・デ・ルミネ(光よりの光ミサ)」は、批評家からの賞賛を受けたほか、ビルボード・クラシック・チャートとiTunesクラシックにおいてトップ10入りを果たした。ホンは漢陽大学、英国王立音楽院、ヨーク大学で学位を取得し、ノース・テキサス大学音楽学部作曲科の助教授を務めている。

Phidias Trio CD発売記念公演 『Works for Violin, Clarinet & Piano - Francesconi, Watanabe, Manoury, Hong』

2024年4月24日
19:00開演(18:30開場)
会場:マリーコンツェルト(東京都板橋区中板橋18-11)

一般 3000円・学生 2000円(当日券は各500円増し)

ご予約:
https://peatix.com/event/3835928/

【プログラム】
渡辺俊哉:あわいの色彩 I(2017)
ルカ・フランチェスコーニ:Impulse II(1985-95)
フィリップ・マヌリ:ミシガン・トリオ(1993)
スンジ・ホン:Lucem Vitae(2017/18)

【出演】
Phidias Trio(フィディアス・トリオ)
ヴァイオリン 松岡麻衣子
クラリネット 岩瀬龍太
ピアノ 川村恵里佳

【プロフィール】
Phidias Trio(フィディアス・トリオ)
ヴァイオリンの松岡麻衣子、クラリネットの岩瀬龍太、ピアノの川村恵里佳により2017年に結成。これまでの主催公演では、現代の優れたクラリネット三重奏の作品を取り上げるとともに、オーストリア、アルゼンチン、ブラジル、チリ、トルコ、韓国、日本の若手作曲家の新作を初演し、好評を博す。また、ハニャン現代音楽祭(韓国・ソウル)や、日本作曲家協議会主催「日本の作曲家2021」等、数々のプロジェクトに招聘されている。2021年12月に出演した日本現代音楽協会主催「ペガサス・コンサート vol.3」の公演の模様は、NHK-FM「現代の音楽」にて、2週に渡って放送された。https://phidias-trio.com

主催:Phidias Trio ・蛍光資料

お問合せ
phidias.trio@gmail.com

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