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ホラー小説「ドールハウス」第9話 崩れていく世界

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注意喚起
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


18.美夏

佐々木愛美が物置部屋を出てから、しばらく経った。
あたしはドアの隙間からロビーを覗いていた。
佐々木愛美は目打ちとボウガンを持ちながら、応接間、書斎、和室とあたしが入った部屋を調べていた。
その後、一階を探し終わったのか、二階に戻っていった。
ふと窓の外を見ると、鉄塔がある山の上みたいだった。
物置部屋を出る前に詳しく調べてみたが、洋服や布くらいしか無かった。
物置部屋を出て、まだ入っていないドアを開けてみた。
そこは薄暗い廊下だった。
まずは入って、すぐ手前にあったドアを開けて覗いてみた。
部屋にはチャイナドレスを着た死体が椅子に座っている。
この死体にもガラス玉をはめ込む加工がされていた。
部屋のあちこちには中華風の物が置かれていて、雰囲気を出していた。
「あれ?」あたしは何かを見つけた。
死体のひざの上にコンパスみたいのがある。気になる。
春香に廊下で待つように言ってから、一人でその部屋に入った。
あたしは死体のひざの上にあった物を調べた。
やっぱり、人類で偉大な発明品の一つであるコンパスだった。
「子丑寅?」よく見ると、コンパスの周りには干支の漢字が書かれていた。
でも、東西南北も書かれていて普通のコンパスとしても機能しそうだ。
コンパスがあれば、ここを出て森だったとしても、迷わない。
出た時のためにとっておこう。
調べ終わったこの部屋を出て、廊下のいちばん奥の部屋に入った。
浴室だった。浴槽があって、バケツが置いてあった。
水が入っているバケツの中には、人類で最も偉大な発明品であるスマホが入っていた。
バケツの中のスマホを取り出した。
黄ばんだカバー、画面には保護フィルムを貼る代わりにコーティングが施されている。それは、3年愛用しているあたしのスマホだった。
水に濡れているが、使えるかな?
電源ボタンを長押ししてみた。
しかし、反応は無かった。完全に水没して壊れたみたいだ。
希望はすぐ消えてしまった。

19.春香

私は疲れていた。この屋敷が現実なのか幻覚なのか分からなくなっていった。
視界に入っている物は本物なのか気になった。
例えば、目の前に居る田中美夏という人物。
もしかしたら、美夏さんは存在しないのかもしれない。
「ねぇ、美夏さんは本当に存在しているんですか?」
私は美夏さんに質問をしてみた。
「急にどうしたの?大丈夫、あたしはここに居るよ。」
美夏さんは私の質問に答えた。
「美夏さんは私の不安が生んだ幻覚だよね?」
私は美夏さんの存在を疑っていた。初対面の私でも優しくしてくれるなんて、怪しすぎる。
最初から、美夏さんの事がちょっぴり怖かった。
「春香、落ち着いて!」
「確かに、お友達の愛美さんが死体に話しかけるのを見て、信じられないのは理解してるよ。」
「私も春香と愛美さんが写っている写真をみたよ。仲良さそうだった。」
「今の愛美さんは異常だ。あたしと春香を殺そうとしている。」
美夏さんは愛美さんのことを異常と言っていた。
「美夏さんは赤の他人だから、分からないでしょうね!優等生の愛美さんはこんなことしないわ!」
「ここに居る愛美は愛美に化けたなにかよ!」
愛美はこんな事しない。私は信じている。
「落ち着いて!あたしは幻覚じゃないよ。」
「死体に話しかけている愛美は本物よ。信じられないことかもしれないが、今は命を守るのが最優先だよ。」
本当に私は悪夢を見ているんだ。
「あなたは存在しないのよ!」
私は美夏さんを突き飛ばして、浴室を後にした。

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