ホラー小説「ドールハウス」第13話 あなたを愛したい

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注意喚起
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。

27.美夏

あたしは佐々木愛美がマリーと呼んでいる死体が飾られている部屋に居た。
「ガチャン」
急にこの部屋のドアが開いた。
そこから、佐々木愛美が車いすを押しながら入ってきた。
隠れる余裕が無く、完全に見つかった。
愛美が押していた車いすには春香が座っていた。
春香はもう死んでいたようだ。全く、動いていなかった。
もう少し、早く二階に来ていたら春香を救えたかもしれない。あたしは後悔していた。
写真で見た二人は仲が良さそうだったのに、こんな感じになっているのを見て、赤の他人のあたしですら言葉が出なかった。
友達の春香を殺して、車いすで殺した春香を運んでいる佐々木愛美の様子は明らかに異常だった。
「ツバサちゃんもマリーちゃんに会いに来てくれたのね。」
愛美はあたしに話しかけた。
「紹介するね。この子はマリー。」
「マリーはね、みんなと仲良くするのが大好きなんだ。よろしくね。」
急に愛美は死体に付けたキャラ設定みたいなことを話した。
「そして、この子はモニカ。」
「絵本から来た魔法使いなんだ。」
愛美は春香の死体に付けた設定を説明していた。
「ツバサちゃん、かくれんぼはわたしの勝ちだね。」
あたしは怖くて、誰も助けに来ないのに助けを求めていた。

「あなたは生きるのがつらくて、死にたかったのでしょ？」
「だから、レッグカットしていたのね。」
「高低差でスカートの中が見えた時、傷が見えたの。」
愛美が急に歩み寄ってきた。
なぜか、あたしのレッグカットの跡を知っていた。
一人を除いて友達にも傷跡のこと言ったことないのに。

中学の頃、生きるのが苦しくて付けた傷。
家庭環境は悪く、学校ではいじめられていた。
痛いし、血がいっぱい流れたが、それを見て楽になっていた。
でも、脚の傷跡のことや悩みを話せた絵里という友人が居た。
絵里は病気で片腕が無く、それが理由であたしをいじめていたグループにいじめられていた。
小学校の頃に絵里と仲良くしていたクラスメイトも中学校に進学して、新しい人間関係ができて絵里をいじめていた。
あたしと絵里は辛い事を共有できる仲だった。
絵里が居たから、あたしはレッグカットをやめれた。
しかし、絵里は急にこの世を去った。
中学三年の冬休みが開けて間もない頃、絵里はショッピングセンターの屋上から飛び降りて亡くなった。
絵里が残した遺書には「耐えれなかった」と書かれていたらしい。
絵里はいじめっ子に殺された。
あたしは春香の様子を見て、友達だったクラスメイトに裏切られた絵里と春香を無意識に重ねてしまって、あたしは春香を守ろうとしていた。
愛美に「自分の近くに居た人が殺された」というトラウマを掘り起こされた。

辛い事があっても、あたしは生きようとしていた。
あたしは今、死にたいと思っていない。
だって、脚の傷跡は過去の物だから。

「ツバサちゃんはすごくカッコよくて、イケメンだね。」
「脚の傷も含めて、あなたのことが好きよ。」
「今まで、辛い思いをしていたんだね。」
「でも、これからはわたしがツバサちゃんをお人形さんにして、ずっと可愛がってあげる。」
愛美は笑顔でボウガンをあたしに向けて話していた。
「大好きだよ」と言いながら、愛美はボウガンから鋭利な矢をあたしに撃った。
その瞬間、あたしは死んだと思ったが、まだ生きていた。
矢は外れて壁に刺さった。ギリギリの所だった。
愛美はスカートのポケットから目打ちを取り出した。
今度こそ殺される。
その時、あたしは壁に刺さった矢を引き抜いて、矢を愛美の足に刺した。
「痛い！痛い！」愛美は痛がって転がった。
あたしは愛美が鍵を持っていないか調べた。
スカートのポケットに鍵が入っていた。
あたしは鍵を取って、急いで玄関に行って鍵を開けてこの屋敷を出た。
生きて、出られた。空は薄暗くなっていた。
屋敷の門を出て、コンパスを頼りに街を一望できる丘を下りた。

28.愛美

痛いっ！痛いっ！
ツバサちゃんに裏切られた。矢でわたしの足を刺して、逃げた。

わたしは力を振り絞って、マリーちゃんに抱きついた。
冷たい肌触りが気持ちよい。
わたしはお人形さんが大好き。
なぜなら、お人形さんはわたしを裏切らないから。
マリーちゃんはいつもにこにこしている。わたしもつられて、笑ってしまう。
マリーちゃんの固くて温かみのある笑顔はとてもかわいい。
「愛美ちゃんは悪くないよ。」とマリーちゃんは言ってる。
そうだよね、わたしは悪くない。
わたしはお人形を集めて、遊んでいただけ。
そして、モニカちゃんは魔法を使って、ツバサちゃんに裏切られたわたしを慰めようとしている。
お人形さんたちはみんな優しくて暖かい。
わたしもみんなのことが大好きだよ。

しばらくマリーちゃんを眺めていたら、いきなり誰かがこの家に入ってきた。
そして、この部屋に誰かが来た。
警察？
「もしかして、小柳百合か？」
警察はマリーちゃんのことを小柳百合と呼んでいた。
人の名前を間違える失礼な人だった。この子はマリーという名前なのに。
「この屋敷で7名の遺体を発見しました。おそらく、一連の行方不明者と思われます。」
警察は人形のことを遺体と呼んでいた。
勝手に家に上がり込んで、失礼な方々だった。
警察は「署で話を聞こう」と言って、わたしに手錠を付けてパトカーに乗らされた。
また、お母さんに怒られる。

29.美夏

あの日から数日経った。
10月31日、今日はハロウィンだ。
朝、テレビを見ていると、あたしが巻き込まれた事件のニュースをやっていた。
「行方不明になっていた小柳百合さんらを誘拐し殺害した容疑で逮捕された17歳の女子高校生のクラスメイトに独自インタビューをしました。」
その後、佐々木愛美は殺人の容疑で逮捕され事件は終わった。
「事件の現場となった、女子高生の家族が所有する洋館で女子高生のクラスメイトの川崎春香さん16歳、行方不明になっていた小柳百合さん19歳ら7名の遺体が発見されました。」
「女子高生は殺害した被害者を人形のように見立てて、服やアクセサリーを着用させていたとされています。」
笑顔で写っていた春香の写真がテレビで流れていた。あたしは見てるのが辛くなり、テレビを消した。
ここ数日、テレビはどこのチャンネルも佐々木愛美の事件のニュースばかりだった。

今日も何事も無かったように、また一日が始まる。
朝ごはんを食べて、支度を済ませて、バス停に向かった。
バス停には春香と同じ聖イリス女子高校の生徒が居た。何か話してるようだった。
「あの連続行方不明事件、犯人は2年1組の佐々木愛美らしいよ。ネットで特定されてた。」
「昨日、先生から愛美が退学したと聞いたけど、そういう事だったのね。」
「愛美とは去年同じクラスだったわ。まさか、ネクロフィリアだったなんて、怖いわ。」
あの事件の話をしていた。
彼女らは同じ学校の生徒が逮捕されたという非現実を話していた。
数日経った今でも、救えたかもしれない春香の命を救えなかったと考えることがある。
そのたびに、あの世の絵里と春香に対して申し訳ない気持ちになる。
あたしは人を救おうとしても、救えなかった。
そう思ってしまうこと以外はいつも通りだった。

小説「ドールハウス」終わり

あとがき

最後まで、ホラー小説「ドールハウス」を読んでくださりありがとうございました。
私は初心者なので、いろいろ上手く表現できてないかもしれません。
でも、皆さんが愛美の狂気的な人形遊びの世界を楽しんでくださったら嬉しいです。
設定資料も今後公開する予定なので、そちらも見てくださるとうれしいです。
この小説は私にとって、大きな挑戦でした。
こんなに長い物語を書くのは初めてで、ネットで多くの方に見せるのも初めてでした。
大規模なことをやり遂げた時の達成感はすごかったです。
前から、「死体を人形に見立てる殺人鬼」というアイデアを思いついていて、この小説で形にできました。
この小説は私が好きなホラー映画・ゲームの影響の影響もあって、特に「SAW」や「ドキドキ文芸部！」「Ib」からの影響が大きいです。
一次創作を書くことで、作り手の大変さが分かってきました。
でも、楽しかったので今後も一次創作をやりたいなと思っています。
もし、今後も私が一次創作をすることがあったら、また応援してくださると嬉しいです。
改めて、最後まで読んでくださりありがとうございます。