補助的に漢方薬を使用していると急性骨髄性白血病患者の生存率は改善しますか
〇はじめに
急性骨髄性白血病(AML)は造血器悪性腫瘍で、55歳から84歳の患者に発症することが多いです。生存率は低く、平均5年生存率は25%です。化学療法と造血幹細胞移植が治療の主流ですが、成人AML患者の長期生存率は20%から40%と低いままです。近年、中医学はがん治療として注目されています。しかしながら査読を受けていない研究も多く、いまだ主流の医学では受け入れられていません。1996年以降、台湾では中医学が国民健康保険の一部として利用され、60%の人々がそのサービスを利用しています。台湾では中医学の治療は薬価データベースに登録され、中医学の使用についての研究も活発です。長期間の追跡調査が可能であるため、ハードアウトカムをエンドポイントとした研究が様々に行われています。
〇疫学と標準療法
急性骨髄性白血病(AML)は、主に55歳から84歳の患者が罹患する、造血器悪性腫瘍です。平均5年生存率は25%です。1970年代後半以降、AML治療の一般的な第一選択化学療法(C/T)レジメンは、シタラビンとダウノルビシンからなる、いわゆる7+3療法でした。導入療法と強化療法は、イダルビシンやシクロホスファミドのような追加療法やソラフェニブのような標的療法に加え、リスクグループごとに多くの微調整を加えながら、過去40年間開発されてきました。C/Tの完全寛解率は60%から80%と幅があり、造血幹細胞移植(HSCT)の出現は、C/T不応例または予後不良な染色体核型を有する患者に治療の選択肢を提供しています。しかし、C/T療法であれ造血幹細胞移植であれ、成人AML患者の長期生存率は20%から40%と厳しいものであることが研究により示されています。これらのことから、AMLは白血病の中で最も死亡率の高いサブタイプであり、米国における白血病患者の死亡の42%を占めており、この疾患を管理する新たな方法が必要であることを物語っています。
〇がんと中医学
中医学(CM)は様々な疾患の治療法として人気が高まっていますが、生物医学の主流に受け入れられるまでにはまだ長い道のりがあります。ながらく研究者の間では、臨床の場でCMに挑戦しようという関心はほとんどなく、AMLの文脈でCMに関して利用可能な資料は、細胞による基礎研究的な実験から成り立っていました。2013年に発表されたシステマティックレビューでは、がんに対するCMを用いた中国の臨床試験が3000件近く報告されています。しかし、その多くはCONSORTやTRENDのような国際基準を用いておらず、査読も受けていないため、白血病やAMLに関連する可能性のある数少ない研究は疑わしいものとなっています。
〇中医学は台湾の国民健康保険の一部
幸いなことに、このテーマについては、実際のデータが入手可能です。例えば、1996年以降、中医学が国民健康保険(NHI)の一部として利用できるようになった台湾の過去のデータによると、少なくとも人口の60%がCMサービスを利用していました。これは、台湾人の99%がNHIに加入していることを考えると、相当なデータです。NHIは中医学的治療の3つの主要な様式を認めています:(1)中医薬(CHM)製品(単一生薬または複数の生薬から成る製品)、(2)鍼治療(灸と吸い玉も含む)、(3)手技療法(指圧、推拿、カイロプラクティックを含む)。
〇台湾薬価研究データベースによる研究
薬価の一部として償還されるすべての治療は、台湾薬価研究データベース(NHIRD)に登録されています。このデータセットは、全国的な人口ベースの請求データベースであり、長期間の追跡調査が可能であるため、サンプリングバイアスの可能性を減らすことができます。著者らはこれまでに、慢性骨髄性白血病、糖尿病、関節リウマチ、喘息、消化性潰瘍疾患などの疾患における中医学的療法の使用について調査してきました。
〇エビデンス
今回紹介する研究の邦題は「急性骨髄性白血病患者における漢方薬治療の統合による生存率の改善: 全国集団ベースのコホート研究」です。
【目的】急性骨髄性白血病(AML)は白血病の中で最も致死率の高いサブタイプであり、この疾患の患者の多くは他の補完療法を求めており、その1つが漢方薬である。我々は、死亡率を主なアウトカム指標として、AML患者に対する漢方薬(CHM)の有用性に関する信頼できるデータを提供することを目的とした。また、患者の漢方処方の特徴も明らかにした。
【方法】台湾の国民健康保険研究データベースを用いて、1997年から2010年までのAML患者を対象とした全国規模の集団ベースのコホート研究を行った。Cox回帰モデルを用いて併存疾患やその他の変数を調整し、CHM使用者と非CHM使用者のハザード比(HR)を比較した。
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