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映画『ルックバック』レビュー:58分間の小さな物語が、人生の「きっかけ」をくれた

「いい映画ないかな」とAmazonプライムをさまよっていると、ひときわ評価の高い作品が目に留まった。わずか60分弱の物語なのに、観終えたときには心にずっしりと温かい余韻が残っていた――『この映画に出会えて本当によかった』。


(以下、ネタバレを含みます。)


きっかけが世界をつくる


人生は、一つの「きっかけ」によって大きく動き出すことがある。
些細な言葉や偶然の出会いが、人を傷つけることもあれば、救うこともある。
その「きっかけ」は、勇気を振り絞った行動から生まれることもあれば、無意識の一言から生まれることもある。

映画『ルックバック』は、その「きっかけ」が持つ力と、そこから生まれる後悔や成長、そして前を向いて進む勇気を描いた物語だ。


生と死――儚さと尊さ

この映画には、生きることと死ぬこと、その二つが強く刻まれている。
人は簡単に死に、そして簡単には生きられない。
それでも、生き残った者はその現実を受け入れ、自分にできることを見つけていく。

「なぜ自分は生きているのか」
「なぜあの人は死んでしまったのか」


この答えのない問いが、観る者の心を静かに揺さぶる。そして最後には、「今、自分ができること」に目を向けさせてくれる。


愛することは、離れることでもあるのか

僕には大切にしたい人がいる。愛している。でも最近、お互いに新しい挑戦や目標ができて、時間を共有することが少なくなった。そしてふと考える。
愛することは、一緒にいることだけが全てではないのかもしれない。
相手を想い、相手のために離れること――それもまた、愛の形なのではないか。

しかし、「相手のため」とは何だろう。自分が存在することで相手が幸せを感じにくくなるなら、そこから離れるべきなのか?それとも、一緒にいることで小さな幸せが積み重なっていくことに気づくべきなのか?

京本はその答えを見つけたのだろう。
彼女は心を強く持ち、学校を去るという決断をした。それは、ぬくもりのある場所から離れ、自分自身の人生に賭けるということだ。

何かを捨てて、何かに本気で取り組む姿は、どこまでも美しく、尊い。
本気でやれば、どこかで誰かが必ず見ていて、応援してくれる。


守れない現実と、それでもできること

この世には、どうしようもない「悪意」が存在する。
どれだけ大切な人を守りたいと願っても、全てを守りきることはできない。
だからこそ、今できる小さなこと――例えば、「最近どう?」と連絡を送ることや、誕生日にLINEを送ること――それだけで、未来は少しずつ変わるかもしれない。

映画を観終わった後、「あの時、もっと何かできたんじゃないか」と後悔することは誰にでもあるだろう。でも、後悔し続けるのではなく、今この瞬間にできる小さな行動を積み重ねること。それが、生きることへの答えなのかもしれない。


60分弱の物語――それでも心に深く刺さる

『ルックバック』は、わずか60分弱の短い映画だ。しかし、その中には数時間の映画では描ききれないほどの感情と物語が詰まっている。

そして、ラストは**「バッドエンド」**と呼ばれるかもしれない。でも、不思議と悲しさだけが残るわけではない。むしろ、前を向いて一歩踏み出す勇気をそっと手渡してくれる。


振り返ることで見える大切な人たち

僕らは、日常を忙しさで埋め尽くすことができる。
しかし、一度立ち止まって振り返ってみれば、そこにはいつも自分を支えてくれている人、大切な存在がいることに気づくだろう。

「ルックバック」――振り返ることで、今ここにある大切なものを再確認する。
それは過去に戻ることではなく、前に進むための一歩なのだと思う。


年末年始、大切な人に連絡をしてみようと思う。
この映画を観たことが、そんな小さな「きっかけ」になった。

Amazonプライムで視聴できるので、ぜひ、この映画を観て、あなたも振り返ってみてほしい。

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