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「かごめかごめ」の秘密:謎めく童歌にまつわる諸説
日本の童歌の中でも、とりわけ「謎めいている」と言われるのが「かごめかごめ」です。
この歌は、子どもの遊び歌として親しまれる一方で、歌詞に込められた意味や背景については数多くの解釈が飛び交い、その神秘的な響きからも興味深い議論の対象となっています。
今回は、この「かごめかごめ」の歌詞を紐解きながら、その背景や文化的価値などを深堀してみたいと思います!
1. 「かごめかごめ」ってどんな歌?
まずは基本から。「かごめかごめ」は、日本の伝統的な遊び歌です。歌詞はこんな感じ:
かごめかごめ
籠(かご)の中の鳥は
いついつ出やる
夜明けの晩に
鶴と亀がすべった
後ろの正面だあれ
子どもたちが輪になって一人を囲む形で遊び、その囲まれた子(目隠し役)が歌い終わるまでに「後ろの正面だあれ」と尋ねて、誰が後ろにいるかを当てるというもの。
ただ、遊び方はともかく、歌詞そのものが非常に意味深で謎めいていることが、この歌の最大の特徴です。
2. なぞの歌詞の解釈
「かごめかごめ」の歌詞は、表面上はただの遊び歌に見えますが、その歌詞には様々な解釈が存在します。ここではいくつか代表的なものをご紹介します。
(1) 籠の中の鳥は誰?
「籠の中の鳥」というフレーズは、しばしば「閉じ込められた存在」を象徴すると考えられます。囚われの身を表すという説もあれば、女性の妊娠を暗示しているという説もあります。例えば、「籠=子宮」「鳥=胎児」という解釈ですね。
(2) 「夜明けの晩」って矛盾?
普通に考えると「夜明けの晩」なんて時間帯は存在しません。これは一見すると矛盾した表現ですが、これを「変革の象徴」と捉える考え方があります。夜と昼の境目、つまり転換期を指しているという説です。
(3) 「鶴と亀がすべった」の意味は?
「鶴」と「亀」は、日本では縁起の良い象徴ですが、それが「すべった」というのは不吉さを感じさせます。これについては、「栄華からの転落」を表しているとか、「逆さ言葉で真逆の意味になる」といった説などもあります。
(4) 「後ろの正面だあれ」の謎
これも非常に難解な部分。「後ろ」と「正面」は真逆の方向ですが、ここで「自分自身」を問い直す哲学的な意味があるという解釈も。まるで「自分の背後に潜むもう一人の自分」を問うような歌詞です。
3. 諸説ある歌詞全体の解釈
「かごめかごめ」の歌詞には多くの説がありますが、以下にいくつかの解釈を挙げます。
(1) 妊娠と誕生を象徴する説
「籠の中の鳥」は母親の胎内にいる赤ちゃんを表し、「いついつ出やる」はその出産のタイミングを意味するとされます。
「夜明けの晩」は、新しい命が誕生する瞬間を象徴し、矛盾した表現で神秘性を強調している可能性があります。
(2) 宗教的・儀式的な意味を持つ説
一部では、この歌が日本の古代宗教や呪術的儀式の一部だったとする説もあります。
「籠の中の鳥」が魂や霊的存在を象徴し、「夜明けの晩」は輪廻や生死の境界を指していると解釈されます。
(3) 幽閉や悲劇の物語説
「籠の中の鳥」は何らかの理由で幽閉された人物(女性や囚人など)を象徴しているとされます。
その人物が「いつ解放されるのか」を暗示しており、「鶴と亀がすべった」は運命の皮肉や悲劇的な結末を示唆するという見方があります。
(4) 社会的な教訓を伝える説
「後ろの正面だあれ」という問いかけには、「自分の行動を振り返り、他者とのつながりを確認する」という教訓が込められていると解釈されます。
子どもたちに、周囲を観察し、共同体の一員として協力することの大切さを伝えているという説です。
(5) 死と再生の輪廻を表す説
「籠の中の鳥」は死者の魂を意味し、「夜明けの晩」は死と再生の境界を表していると考えられます。
生と死が循環する自然の摂理や、生命の連続性を象徴しているという説です。
(6) 単なる子どもの遊び説
特に深い意味はなく、単にリズムや語感が楽しい遊び歌として生まれたという説もあります。
子どもたちの想像力を刺激するための意図的な「謎めいた歌詞」である可能性も。
3. 歌の時代背景
「かごめかごめ」がいつ誕生したのかは定かではありませんが、江戸時代後期から明治時代にかけて広まったという説が有力です。その背景には、次のような要素が絡んでいる可能性があります。
(1) 農村社会の慣習
当時の農村では、歌や踊りが娯楽やコミュニケーションの重要な手段でした。「かごめかごめ」は、共同体の絆や自然への畏敬、道徳や教訓、文化の伝承、想像力の育成を子どもたちに伝えるための遊び歌として重要な役割を果たしていましたのかもしれません。
(2) 宗教や呪術的要素
この歌には、何となく不気味さや神秘性が漂っていますよね? それもそのはず、かつての日本では「呪術」や「宗教儀式」が日常の一部であり、歌の中にもそれが反映されていたと考えられています。例えば「籠の中の鳥」が、魂を象徴している可能性もあります。
4. 「かごめかごめ」にまつわる周辺情報
「かごめかごめ」は多方面にさまざまな影響を与えています。
(1) 都市伝説化した歌
「かごめかごめ」はホラーやオカルトの題材になることが多い歌です。特に、学校の怪談話で「この歌を歌うと幽霊が出る」といった話を聞いたことがある人もいるのでは? こうした噂の背景には、歌詞の謎めいた雰囲気が影響しているのでしょう。
(2) 海外から見た「かごめかごめ」
実は「かごめかごめ」は、海外でも研究対象になったり、注目されたりしています。「なぜ日本の童歌はこんなにミステリアスなのか?」という観点から、多くの文化人類学者が興味を持っているそうです。
例えばこんなものがあります↓
https://folklore.usc.edu/kagome-japanese-childrens-game/
(3) 近代文学への影響
「かごめかごめ」の歌詞やテーマは、日本の近代文学や現代詩にも影響を与えています。この歌を題材にして作品の神秘性を高めた作家もいました。
5. 他国の「かごめかごめ」
他国にも「かごめかごめ」に似たような遊び歌や文化的な習慣があります。以下にいくつかの例を紹介します。
「リング・ア・リング・オ・ローゼズ」 (Ring-a-Ring o' Roses)
西洋文化における「リング・ア・リング・オ・ローゼズ」は、「かごめかごめ」と似たような円を作って遊ぶ歌で、最後には皆が倒れるというものです。この歌には、特に「黒死病」(ペスト)との関連が指摘されており、遊びに隠された暗い背景や象徴性がある点で「かごめかごめ」と共通しています。「ラ・クカラチャ」 (La Cucaracha)
ラテンアメリカの歌である「ラ・クカラチャ」も、遊びの中にユーモアとともに社会的なメッセージや暗示を含んでいます。この歌は、戦争や政治的な問題に関する象徴的な意味を持つことがあり、軽い遊びの形式でありながらも社会的な教訓を含む点で共通する部分があります。ヨーロッパの「魔女の円」 (Witches' Circle)
ヨーロッパの伝統的なゲームでは、子どもたちが円を作り、魔法や儀式を模した遊びを行うことがよくあります。これらのゲームも、自然のサイクルや生命、死、再生を象徴することがあり、「かごめかごめ」のように遊びの中に文化的・神秘的な要素が絡んでいます韓国の伝統的な遊び
韓国にも「バエバエ」(Bae-bae)という円を作って行う遊びがあり、競技性と神秘的な要素が混ざった楽しい活動です。「かごめかごめ」のように、共同体や連帯感を育む遊びの形として、文化的な背景を反映しています
これらの遊びや歌は、文化ごとの伝承や歴史的背景は違うものの、共通して子どもたちの社会性や想像力を育むための役割を果たしており、「かごめかごめ」と同様に多層的な解釈が可能です。
5. 歌を通じて見える日本文化の面影
「かごめかごめ」はただの遊び歌ではなく、時代や文化、人々の思いが刻まれた一種の「文化的な遺産」とも言えます。
この歌を紐解くことで、日本の伝統的な価値観や、人々が抱えていた心の葛藤などが浮かび上がるかもしれません。
あなたの考えは?
あなたはどの説が有力だと思いますか? また、「自分の地域ではこう歌われていた」というバリエーションなどがあれば教えてください。
謎めく「かごめかごめ」を研究することで新たな歴史の発見があるかもしれません。