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日本のビジネスパーソンの生産性はなぜ低いのか? 〜鍵を握るのはマネジャーの役割〜

1. 日本の生産性の現状

「日本の労働生産性は低い」—— これは長年指摘されていることですが、実際のデータを見てみると、その状況がはっきりと分かります。

OECDの統計によると、日本の時間当たりの労働生産性は主要先進国の中で 最下位クラス

たとえば、アメリカやドイツと比べても約6〜7割程度しか生産性がないとされています。

「え、日本人って勤勉で仕事熱心なのに、なぜ生産性が低いの?」と疑問に思う人も多いでしょう。

それもそのはず、日本のビジネスパーソンは長時間働き、細部までこだわり、真面目に仕事をこなしているはずです。

それではいったいどこに原因があるのでしょうか。

2. 個人の能力が原因ではない

冒頭の疑問にあるように、決して「日本人のビジネスパーソンが無能だから生産性が低い」というわけではありません。

むしろ、日本人は一般的に 教育レベルが高く、責任感が強く、勤勉で細かいところまで気を配る という強みを持っています。

PISA(OECDの国際学力調査)では数学・科学分野で常に上位に位置し、識字率もほぼ100%。

海外の企業からも「日本人の仕事の質は高い」と高く評価されることが多くあります。

では、なぜ日本の生産性は低いのでしょうか?

ここで大きく影響するのが、日本の 組織文化やマネジメントの問題 です。

3. 生産性を下げる組織の問題点

① 非効率な業務フローと長時間労働

日本には「とりあえず会議」「とりあえず報告書」「とりあえず確認」といった、決定に時間がかかる文化 があります。

意思決定に関わる人が多すぎたり、稟議(りんぎ)制度で何度も承認を取る必要があったりするため、なかなか前に進みません。

また、「長時間働く=頑張っている」という意識がいまだに根強く、成果よりも労働時間の長さが評価されがちです。

この結果、ダラダラと仕事をする環境が生まれ、海外と比べて相対的な非効率を生んでいます。

② メンバーシップ型雇用の弊害

日本ではいまだに 「専門性」よりも「何でもこなせるゼネラリスト」が評価される 文化があります。

そのため、せっかく営業やエンジニアとして優秀な人材がいたとしても、定期的な異動でまったく畑違いの部署に配置されることも珍しくありません。

その結果として、

  • 専門スキルの蓄積が難しい

  • 「自分の仕事にオーナーシップを持つ」意識が弱まる

  • 無駄な教育コストがかかる

となどいった問題が発生し、生産性が上がりにくいのです。
もちろんジェネラリストも職業としては必要ですが、全員がジェネラリストになる必要はありません。

③ デジタル化の遅れ

2024年にもなって、まだ 紙・ハンコ文化、FAXの使用 が根強く残っています。

わたしも先日人事部から、ハンコをもって来てください、と言われて思わず苦笑してしまいました。

ITツールの導入は進んでいるものの、「導入しただけで使いこなせていない」というケースも多く、業務効率化につながっていません。

欧米では 「業務をなくす」 ことにフォーカスするのに対し、日本は 「業務のやり方を工夫する」 ことにフォーカスする傾向があります。

そのため、日本では既存のプロセスの「効率化」に意識が向かい、無駄な慣習そのものが温存されやすいのです。

「その業務を人がやる必要があるのか?」を問い直し、可能ならばソフトウェアやシステムに置き換えることで、仕事そのものをなくしてしまうというような発想が必要です。

④ 意思決定の遅さ

「会議が多すぎる」「責任の所在が曖昧」「リスクを取る人がいない」—— これらは日本の企業によくある問題です。

意思決定のプロセスが長く、誰もリスクを取らないため、スピーディな変化が求められる時代に対応できません。

結果として、新しいアイデアが生まれても、実行されるまでに時間がかかりすぎて競争力を失うのです。

わたしの別のマガジンでも紹介しているアジャイルの発想が足りないのです。

4. マネジャーの役割が生産性向上の鍵

では、こうした状況を改善するにはどうすればいいのでしょうか?

その答えのひとつが 「マネジャーの意識改革」 です。

① マネジャーがチームの生産性を決める

優秀なマネジャーがいると、

  • 目標が明確になり、無駄な業務が削減される

  • メンバーの強みを活かした配置ができる

  • 障害となるボトルネックを排除し、仕事が進みやすくなる 

    などといった変化が生まれます。

逆に、マネジャーがただの「調整役」にとどまってしまうと、チーム全体の生産性が大きく低下します。

② 「指示型マネジメント」から「コーチ型マネジメント」へ

日本のマネジャーは、細かい指示を出す「管理者」になりがちですが、今の時代に理想的スタイルは 「コーチ型」のマネジメント です。

  • 「この作業をやれ」ではなく、「どうすればうまくできるか?」を一緒に考える

  • メンバーが自らの専門性を駆使して動ける環境を整える

  • 「結果」を重視し、「プロセス管理」にこだわりすぎない

こうしたマネジメントができるかどうかが、生産性向上のカギを握ります。

5. これからの日本企業が取るべきアクション

  • ジョブ型雇用を進め、専門性を活かす

  • 不要な会議・書類作成を削減し、「成果」で評価する文化を作る

  • デジタルツールを適切に活用し、業務フロー自体を変革する

  • マネジャーの意識改革を進め、「管理者」ではなく「チームの生産性向上のリーダー」としての役割を果たす

日本の生産性向上には、個々のビジネスパーソンの努力だけでなく、マネジメントの質の向上 が不可欠です。

この変革を実現できるかどうかが、日本企業の未来を大きく左右するでしょう。

今回はかなり総論的な話になりましたが、具体的にどうするか、という点は今後紹介していきますね。

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