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第7章: データの重複

カズマたちデータガーディアンズは、いくつかのデータが重複していることに気づいた。さらに、同じ日付のデータにもかかわらず異なる内容が複数登録されており、データの信頼性が保証できない状態となっていた。そのため、原因の調査が急務となった。

「これを見てくれ。」

カズマはモニターに映し出されたデータを指し示した。

「この患者の6月30日の検査データが2つある。しかも値が異なっているんだ。」

「たしかに、内容が微妙に違うわね。」

ハルカが不審そうにデータを見つめる。

「システム統合時のデータ移行の際に何か問題があったんじゃない?」

カズマたちは、このデータ重複を、データ収集方法の設計ミス、システムエラー、意図的な操作、の3つの可能性から考え始めた。
そして調査の結果、データの移行中にデータの欠落や、転送エラーが多数発生していることが判明した。

「どうやら、データベースの設計ミスはないようだ。EDCデータと外部データで同じ値を収集するようなミスは起きていない。DTA(Data Transfer Agreement)にも問題はなかった。」

「じゃあどこでデータの重複が起こっているの?」

「どうやらデータ統合の過程があやしいな。しかし、これはただの技術的な問題とは思えない。」

「どうして?」

ハルカが尋ねた。

「データ統合システムの動作確認は徹底的に行われているんだ。こんな初歩的なエラーが発生する可能性は低い。」

カズマは考えうるさまざまな仮説を検討した。そしてついに、特定のサイトから報告されたデータが異常な頻度で修正されていたことを見つけ出した。特に、データが移行されるタイミングを狙ったかのように、不自然なデータ転送の挙動が多数存在した。これによりシステムに過剰な負荷がかかり、データ転送のミスや重複などのエラーが起こっているようだった。

「この移行ログを見て。データが部分的にしか移行されていない。」

リョウがシステムのログを指差した。

「しかも、データ間の整合性がめちゃくちゃだ。」

「つまり、データが正しく移行されていない上に、どこかで意図的に改ざんされている可能性があるってことか…」

カズマは頭を抱えた。今回の事件は、単なる技術的なエラーを超えたものだった。

このデータ移行中の不正操作が、どこで、誰によって行われたのかを突き止めるため、カズマたちは監査証跡(Audit Trail)を基に徹底的な調査を開始した。移行されるデータのログを一つずつ検証し、不自然なタイムスタンプや変更の履歴を追い始めた。

「このデータ移行の時点で、すでに何者かが介入しているのは間違いない。だが、どの段階でどんな操作が行われたのかを突き止めていこう。」

カズマは落ち着いた声で言った。

「監査証跡のタイムスタンプとデータ転送のタイミングを比較してみる。」

ハルカはすぐにログを解析し始めた。

調査の結果、あらかじめ定められたデータ転送の時間帯を狙ったかのように、異常なシステム負荷が外部からかけられていることが分かった。

「どうしてこんなにシステムやスケジュールなどに精通しているんだ?」

カズマは疑念を抱きながらも、徐々に黒幕の存在を感じ始めた。

「この人物、ヤマダの時と同じように…システムの深い部分にまで入り込んでいる。」

「でも、まだ証拠が足りないわ。もっと具体的な痕跡をつかまないと。」

ハルカは焦りながらも、次の手がかりを追った。

コラム: データ移行のリスク

近年臨床試験データはEDCだけでなく、様々なシステムで収集されます。これらのデータ移行プロセスにおいて、データ間の整合性を確認することは非常に重要です。特に、データ重複」や「データの破損」は、臨床試験において致命的な問題となる可能性があります。

監査証跡を活用して、データ移行中の不正操作や異常な変更を早期に発見することが、システム全体の信頼性を保つために不可欠です。データ移行プロセスの透明性を確保し、問題が発生した際には迅速に対処するための監視体制が必要です。 


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