塩化カリウム徐放錠600mgの6錠/日をグルコン酸カリウム(4mEq/g)へ変更したら1日何gが望ましい? ※アスパラKへの変更は注意!
という処方が、医療機関変更のため
という処方内容に変わっていた。体調は安定しており、Dr.からは「薬の量は変わらずに出しておく」と言われたそう。
※過量投与気味だが、そこは今回は横に置いておいて・・・(^_^;)
さて、この処方内容はカリウム力価的に同等と言えるかどうかを考えていこう。
電解質の力価を比較する際は、「mg」ではなく「mEq」を使わなければならない。添付文書を見ると、
塩化カリウム徐放錠600mg「St」 : 1錠=8mEq
グルコンサンK細粒4mEq/g : 1g=4mEq
とあるので、上記処方はどちらも48mEq/dayとなるので等量とみなせる。
でも、「KCl」というシンプルな無機物と、グルコン酸という炭素鎖のある有機物(下図)では分子量や分配係数(脂溶性)等に大きな差が出るので、吸収能(バイオアベイラビリティ)も違ってくるような気はしないだろうか?
投与量が同じでも、血中濃度に差が出てきそう。
でも、カリウム製剤間の力価換算というのは、存在しない様子。
そこで、常用量対比換算を試みる。
【常用量】
塩化カリウム徐放錠600mg「St」
約16mEq(1,200mg)/回、1日2回・・・約32mEq(2,400mg)/day
グルコンサンK細粒4mEq/g
10mEq/回、1日3~4回・・・30~40mEq/day
アスパラカリウム錠300mg・散50%
5.4~16.2mEq(0.9~2.7g)/day(極量18mEq(3g)/day)、1日3回
塩化カリウム「フソー」
26.8~134mEq(2~10g)/day、1日数回
こう見てみると、塩化カリウム徐放錠 と グルコンサンK はほぼ1:1の関係なので、単純にmEq比較だけで処方変更は可能そう。
でも、アスパラカリウム錠 は投与量上限が1/2以下になる・・・これは要注意だ! 他の2製剤と比べるとバイオアベイラビリティがいいのかも。
実際、アスパラカリウムのインタビューフォーム「Ⅵ.薬効薬理に関する項目」の「2.薬理作用」の項目や、「Ⅶ.薬物動態に関する項目」の「4.分布」の項目には、下記のような記載がある。
ちなみに、グルコンサンK細粒4mEq/gのインタビューフォームにも以下のようなグラフがある。
ここからも無機カリウム塩よりは有機カリウム塩の方がバイオアベイラビリティが良さそうに見えるが、上述したアスパラカリウムの場合も含めウサギやラットのデータになっており、1日投与量がヒト体重60kg換算で120mEq~380mEqという高用量になっておりそのまま参考にはできそうにない。
では、ヒトの血中濃度数値を実際に比較してみる。
塩化カリウム徐放錠600mg「St」とアスパラカリウム錠300mg・散50%には有用な体内動態データがなかったが、グルコンサンK細粒4mEq/gと塩化カリウム「フソー」にあったデータを比べてみる。
まずはグルコンサンK細粒4mEq/g
血清中K濃度が4.1→4.6mEqに上昇してるので、40mEq投与で約0.5mEq血中濃度が上昇したということになる。
そして塩化カリウム「フソー」は、
KCl 6gは、約80mEq(※)。血清K濃度は4.4mEqから最高値は5.5mEqまで上がっているので、80mEq投与で約1.1mEq血中濃度が上昇したことになる。
※KClの分子量は74.55g/mol、mEq=mmolなので、6,000mg÷74.55g/mol≒80.5mmol
40mEqで約0.5mEq上昇、80mEqで約1.1mEq上昇・・・つまり、グルコンサンK細粒と塩化カリウムはほぼ同等のバイオアベイラビリティだと判断していいだろう。
体内動態の比較を試みてきたが、カリウム製剤はデータが少ないので、やはり投与量の確認には、やはり常用量対比換算が妥当だと思われる。
仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。