まもるンち

お話を書くことが大好きです。カクヨムでも他の作品を連載中。そちらもご一読いただけたらとてもとても嬉しいです。→X(Twitter)のリンクから飛べます。 ※無断転載はお断わりしています。

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    共同マガジン|レオンファミリーの誕生日は2024年5月19日。 参加者は200名以上。 目的は愛を届けること。この一点。 トップの表示の文言やタイトル画面は変更しないでほしい。 変更された場合、予告なくマガジンから追放することがあるから注意。 詳しくはこちらから。 https://note.com/leon0812/n/ne50160a3b856?magazine_key=mfb3685bde725

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【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- あらすじ

みていろ。おれはかならずサムライになってやる―― 「まさかりかついだきんたろう」の、誰も知らない真実の物語。 平安時代後期。 わけあって人里を追われ、 山の岩屋へと逃れた女から生まれた金太。 金太は、生まれつき赤い肌と金色の髪を持つ先天異常児だった。 その異容から、 里の村人より陰湿ないじめを受け、ゆがんでゆく金太。 心を許せるのは母と、父親の異なる兄。 金太は自身が抱えた劣等感と決別するため、 侍になる決意をする。 同じ頃。 唐国から渡海した一艘の船が嵐で難破した。

    • 【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 19-シュタインと山の民-その②

      何週間かが過ぎた。 その日の夕食も、 シュタインはまるで水でも飲むかのように勢いよく流し込んだ。 囲炉裏の火に照らされながら一心不乱に食べるシュタインを、 イーヴァは自分の箸を止めて興味深そうに見ていた。 「ほんとによく食べるな、おまえ」 「毎日色々なことを覚えて、体と頭を一緒に使っている。すごく腹が減るんだ。そりゃあ、若衆ほど働いているわけじゃないがね」 「でもよくやっているみたいじゃないか。狩りにもなんとかついてこれるようになってきたし、体術も上達している。女衆の仕事

      • 【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 19-シュタインと山の民-その①

        シュタインはイーヴァとともに森を駆けていた。 雄の鹿を追っているのだ。 シュタインの前にはイーヴァの背中があり、さ らにその前には他の山民が三人いた。 いや、三人いたはずだった。 しかしもう遥か先を駆けていて、 その姿はほぼ見えなくなってしまっていた。 少し前を駆けているイーヴァも、 シュタインが不案内な森の中で狩手衆を見失うことのないよう、 気を使って速度を落としている。 それでもシュタインは、 ただ後をついてゆくだけで精一杯だった。 山民の狩手衆が本気で獣を追ってい

        • 【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 18-隻腕の弓手-

          駕籠女は山間の小さな集落に生まれました。 集落の大人達は主に病死した牛馬の死骸を処理したり、 皮を剥いだりといった生き物の死に携わる仕事に携わっており、 侍はおろか農業に従事している他の村人からも〈穢〉などと呼ばれ差別されていました。 そんな身分にあったので、 集落の人間はいつも身の危険を身近に感じていました。 道を行こうとしている侍の前にたまたま立っていたというだけで「道を塞いだ」と言われ、 斬り捨てられることなど集落の人間にとってさほど珍しいことではありませんでした。

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        【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- あらすじ

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          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 17-イーヴァと山の民-その④

          山民の隠れ里には、 なるほど坂の民と呼ばれるに相応しい要素が多分にあった。   シュタインの目には、 緩やかな山の斜面に、 まるで一つの村が田螺のようにへばりついているように見えた。 斜面の最も下方には大木で設えられた大きな山門があり、 その山門から同じく大木の塀が村をぐるりと一周している。 数十戸ある民家は、 村の中央に鎮座している社殿のような建物から放射状に等間隔で散らばっていた。 斜面のあちこちには巨大な岩が出っ張っており、 その岩の形を利用して何やら訓練施設のような建

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 17-イーヴァと山の民-その④

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 17-イーヴァと山の民-その③

          何日かが過ぎた。 ある夜、 シュタインはざわめきで目が覚めた。 この国に流れ着いてからずっと、 どこか緊張した状態で眠りについていた。 あの小屋にいた時でさえ、 心から安らいだことなど一度もなかった。 ほんの少しの物音でも起きていた。 それでも悲喜院に来てからは、 一人ではないという安心感からかよく眠れるようにはなっていたが、 その夜は様子が違った。 異変に気づき、 勝手に覚醒した。 妙な臭いが部屋の中に充満しつつある。 「シュタイン!」 突然木戸が開いて、イーヴァが

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 17-イーヴァと山の民-その③

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 17-イーヴァと山の民-その②

          二人は夜更けまで語り合った。 語ることは山ほどあった。 まずは互いのことだ。 イーヴァはシュタインよりも七つ年上の二十八歳だった。 シュタインと同じく神聖ローマ帝国の出身だ。 シュタインもイーヴァもともに商用で唐に渡り、 渡海していた。 シュタイン同様、 イーヴァの乗った船も十三年前に嵐によって難破し、 この国に漂着したのだ。 自分より十三年も先輩であるイーヴァの苦労話を聞いているだけで、 またもシュタインは涙ぐみそうになった。 イーヴァも同じようにこの国の人間に罵られ、

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 17-イーヴァと山の民-その②

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 17-イーヴァと山の民-その①

          もう一歩も進めなかった。 農民らしき一団から逃げている時に投げつけられた大人の握りこぶしほどの大きさの石は、 男がちょうど振り向いた瞬間、 左目の上の額に命中した。 そこから血が流れ出た。 しかし足を止めるわけにはいかなかった。 死にもの狂いで走り続け、 いつしか追手はいなくなった。 捕まえるのが目的ではなく、 この周辺から追い払いたかっただけなのだ。 ずきずきと頭が痛む。 血はまだ出ている。 そして大きな瘤もできていた。 男は腰に下げていた水筒から水を飲んだ。 もう水

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 17-イーヴァと山の民-その①

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 16-頼光と綱-

          綱は、嵯峨源氏の源宛の子として生まれました。 ですから正式な名前は源綱。 武州の出身でしたが、 のちに母方の里である摂津国西成郡渡辺に居を移し、 それから渡辺姓を名乗るようになりました。 金太も剛力ですが、 綱のそれも「摂津に並ぶ者無し」と言われるほどでした。 まだ綱が十五歳のころ。 摂津源氏の取り計らいで催された早駆けの競争に、 綱は大人に交じって参加しました。 折り返し地点まで駆けると、 そこには印の付いた米俵が積んであります。 その米俵を担ぎ、 出発点まで戻って

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 16-頼光と綱-

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 15-放浪者-その③

          考えたくはないが、 村人がもし追ってきたら。 集団で山狩りを始めたら。 自分は山歩きに慣れていないうえ、 重い荷物を持っている。 きっと追いつかれる。 そしたらもう、 何をされるかわからない。 男は青年の形相を思い出し、 身震いした。 (何としても逃げなくては。距離をかせがなくては) 男は急ぎ足で、 それでもへばってしまって動けなくなってはいけないので、 一定の速度を守りながら山道を急いだ。 とりあえずは、 青年が逃げ去ったのとは逆の方向へ。 (でも……それでどうなる

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 15-放浪者-その③

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 15-放浪者-その②

          気づくと、空が白んでいた。 男は戸口の前でうつ伏せになっていた。 泣き疲れて、 そのまま外で眠ってしまっていたのだった。 手足が傷だらけになっている。 辺りかまわず殴りつけたせいだ。 あちこちから血がにじんでいた。 体は自分の吐しゃ物にまみれて、 ひどい臭いを放っていた。 男はそのまま川へ降りた。 あの死体を見ないよう少し上流までゆき、 服のまま水浴びして体中を洗う。 水は冷たく、心地よかった。 体中の傷から熱を奪ってくれた。 男は両手で水をすくい、 心ゆくまでのどを潤

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 15-放浪者-その②

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 15-放浪者-その①

          この年、この地には飢饉があった。   前年から越冬した浮塵子の大発生により稲穂は徹底的に痛めつけられ、 急いで田畑に油を流したもののもはや手遅れだった。 虫祈祷も行ったが、 それもまるで効果はなかった。 近年稀にみる凶作だ。 よって物価騰貴と、 強者による略奪は自然発生的に起こり、 農村はますます飢えてゆく。 里に食べられるものは少なくなり、 人々は稗の糠さえもかき集めて石臼で挽き、 水と混ぜて団子にして食べるほどだった。 これは栄養価がないどころか消化されるものですらない

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 15-放浪者-その①

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 14-戦地に咲く花-(第1部最終話)

          空はよく晴れていました。 真っ青な中に、 染みだしたように白い雲がぽつりぽつりと湧き、 時折吹く乾いたやわらかい風が、 その雲をゆるやかに横滑りさせていました。 草原の岩舞台に並んで腰かけていたのは、 綱と駕籠女。 駕籠女は前髪を短く切り揃え、 長い髪を後ろできっぱりと一つに束ね、 女ながらに地味な墨色の男用の着物と袴を身に着けていました。 対して、 綱は男としては珍しいほどの派手な朱色の着物姿で、 一升徳利に入ったどぶろくを直接あおっていました。 あおりながら、 自分が

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 14-戦地に咲く花-(第1部最終話)

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その③

          最期の力を振り絞って一声嘶くと、 環雷は腕を払い、 懐にいる金太を横薙ぎに吹っ飛ばした。 金太はもんどりうって転がり、 すぐに起き上がる。 その手には俎は握られてなかった。 環雷の首に深く突き刺さったままだった。 環雷は動かなかった。 風も止んでる。 聞こえるのは金太と環雷の荒い息の音だけ。 月の光が、 うるさいくらいに環雷を照らしてた。 そのまま音もなく、 環雷はぐにゃりと横倒しになった。 体中から力が抜けたみたいだった。 それを見た金太の膝の力も抜け、 その場にぺた

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その③

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その②

          金太は軽く振りかぶり、 俎を力いっぱい振り下ろした。 (う、腕が引っ張られる⁉) 金太をもってしても、 その鋼の塊はまだ重すぎた。 狙った肩口から大きく外れ、 俎の一撃目は地面に吸い込まれた。 どおん、 という大きな音に驚いて、 環雷は金太を噛むことをやめて、 いったん飛びのいて離れた。 その音の凄さに一悟の張りつめ続けた精神はあっけなく崩壊し、 呆けた顔のまま気を失った。 金太は力を込めて、 地面から俎を引き抜く。 めりめりめり、と音がして、 地面の表が大きく引き剥が

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その②

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その①

          迫り来た第一陣を、 環雷はその爪と牙と力でなぎ払った。 何が起こったのかもわからず死んだ者もいれば、 大怪我を負って倒れ伏した者もいた。 しかし男どもはひるまなかった。 大の男が大切なものを守るために、 また大切なものを奪った奴を斃すために集まったんだってこと。 さらに、手にしたかりそめの武器の光と松明の光が、 男衆の気持ちをぼんやりとした膜のようなもので覆ってた。 まるで麻の葉を吸った時みたいに、 男衆の心は大儀に酔って痺れてたんだ。 しかしその痺れも酔いも、 環雷の強

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その①