まもるンち

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お話を書くことが大好きです。カクヨムでも他の作品を連載中。そちらもご一読いただけたらとてもとても嬉しいです。→X(Twitter)のリンクから飛べます。 ※無断転載はお断わりしています。

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    共同マガジン|レオンファミリーの誕生日は2024年5月19日。 参加者は200名以上。 目的は愛を届けること。この一点。 トップの表示の文言やタイトル画面は変更しないでほしい。 変更された場合、予告なくマガジンから追放することがあるから注意。 詳しくはこちらから。 https://note.com/leon0812/n/ne50160a3b856?magazine_key=mfb3685bde725

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【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- あらすじ

みていろ。おれはかならずサムライになってやる―― 「まさかりかついだきんたろう」の、誰も知らない真実の物語。 平安時代後期。 わけあって人里を追われ、 山の岩屋へと逃れた女から生まれた金太。 金太は、生まれつき赤い肌と金色の髪を持つ先天異常児だった。 その異容から、 里の村人より陰湿ないじめを受け、ゆがんでゆく金太。 心を許せるのは母と、父親の異なる兄。 金太は自身が抱えた劣等感と決別するため、 侍になる決意をする。 同じ頃。 唐国から渡海した一艘の船が嵐で難破した。

    • 【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 15-放浪者-その③

      考えたくはないが、 村人がもし追ってきたら。 集団で山狩りを始めたら。 自分は山歩きに慣れていないうえ、 重い荷物を持っている。 きっと追いつかれる。 そしたらもう、 何をされるかわからない。 男は青年の形相を思い出し、 身震いした。 (何としても逃げなくては。距離をかせがなくては) 男は急ぎ足で、 それでもへばってしまって動けなくなってはいけないので、 一定の速度を守りながら山道を急いだ。 とりあえずは、 青年が逃げ去ったのとは逆の方向へ。 (でも……それでどうなる

      • 【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 15-放浪者-その②

        気づくと、空が白んでいた。 男は戸口の前でうつ伏せになっていた。 泣き疲れて、 そのまま外で眠ってしまっていたのだった。 手足が傷だらけになっている。 辺りかまわず殴りつけたせいだ。 あちこちから血がにじんでいた。 体は自分の吐しゃ物にまみれて、 ひどい臭いを放っていた。 男はそのまま川へ降りた。 あの死体を見ないよう少し上流までゆき、 服のまま水浴びして体中を洗う。 水は冷たく、心地よかった。 体中の傷から熱を奪ってくれた。 男は両手で水をすくい、 心ゆくまでのどを潤

        • 【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 15-放浪者-その①

          この年、この地には飢饉があった。   前年から越冬した浮塵子の大発生により稲穂は徹底的に痛めつけられ、 急いで田畑に油を流したもののもはや手遅れだった。 虫祈祷も行ったが、 それもまるで効果はなかった。 近年稀にみる凶作だ。 よって物価騰貴と、 強者による略奪は自然発生的に起こり、 農村はますます飢えてゆく。 里に食べられるものは少なくなり、 人々は稗の糠さえもかき集めて石臼で挽き、 水と混ぜて団子にして食べるほどだった。 これは栄養価がないどころか消化されるものですらない

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        【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- あらすじ

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          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 14-戦地に咲く花-(第1部最終話)

          空はよく晴れていました。 真っ青な中に、 染みだしたように白い雲がぽつりぽつりと湧き、 時折吹く乾いたやわらかい風が、 その雲をゆるやかに横滑りさせていました。 草原の岩舞台に並んで腰かけていたのは、 綱と駕籠女。 駕籠女は前髪を短く切り揃え、 長い髪を後ろできっぱりと一つに束ね、 女ながらに地味な墨色の男用の着物と袴を身に着けていました。 対して、 綱は男としては珍しいほどの派手な朱色の着物姿で、 一升徳利に入ったどぶろくを直接あおっていました。 あおりながら、 自分が

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 14-戦地に咲く花-(第1部最終話)

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その③

          最期の力を振り絞って一声嘶くと、 環雷は腕を払い、 懐にいる金太を横薙ぎに吹っ飛ばした。 金太はもんどりうって転がり、 すぐに起き上がる。 その手には俎は握られてなかった。 環雷の首に深く突き刺さったままだった。 環雷は動かなかった。 風も止んでる。 聞こえるのは金太と環雷の荒い息の音だけ。 月の光が、 うるさいくらいに環雷を照らしてた。 そのまま音もなく、 環雷はぐにゃりと横倒しになった。 体中から力が抜けたみたいだった。 それを見た金太の膝の力も抜け、 その場にぺた

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その③

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その②

          金太は軽く振りかぶり、 俎を力いっぱい振り下ろした。 (う、腕が引っ張られる⁉) 金太をもってしても、 その鋼の塊はまだ重すぎた。 狙った肩口から大きく外れ、 俎の一撃目は地面に吸い込まれた。 どおん、 という大きな音に驚いて、 環雷は金太を噛むことをやめて、 いったん飛びのいて離れた。 その音の凄さに一悟の張りつめ続けた精神はあっけなく崩壊し、 呆けた顔のまま気を失った。 金太は力を込めて、 地面から俎を引き抜く。 めりめりめり、と音がして、 地面の表が大きく引き剥が

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その②

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その①

          迫り来た第一陣を、 環雷はその爪と牙と力でなぎ払った。 何が起こったのかもわからず死んだ者もいれば、 大怪我を負って倒れ伏した者もいた。 しかし男どもはひるまなかった。 大の男が大切なものを守るために、 また大切なものを奪った奴を斃すために集まったんだってこと。 さらに、手にしたかりそめの武器の光と松明の光が、 男衆の気持ちをぼんやりとした膜のようなもので覆ってた。 まるで麻の葉を吸った時みたいに、 男衆の心は大儀に酔って痺れてたんだ。 しかしその痺れも酔いも、 環雷の強

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 13-血闘-その①

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 12-松明の群れ-

          そいつは微睡の中にいました。 夢と現の狭間で、人間の肉の味を反芻していました。   あの、肉のやわらかさ。 はらわたの舌触り。 他のどの獣とも違う、血の甘さ。 あれは美味いのだ。 そしてこれからも、 自分はあの美味い二本足の獣をたらふく喰い続けることができるのだ。 何故なら、 山を下ればあの二本足は群れを成しているからだ。 そういう群れ場を、自分はいくつか見つけている。 でも雄には少し注意が必要だ。 比べるとやはり肉が固いし、 何よりも手に持った道具で強く抵抗してくること

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 12-松明の群れ-

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 11-正義-

          ずぶ濡れで岩屋に帰ってきた金太に、 観童丸は大事なことを伝えた。 観童丸がたたら場の男に聞いた、 まあ噂でしかないんだけどね。 つまり、環雷が狂った理由だ。 熊のはらわたを欲しがったかりそめの狩人が、 放った下手くそな矢の話だ。   岩屋に帰ってきた時、 金太は気が高ぶっていたのか獣みたいな目をしてたけど、 その話を聞いて目の光がどんどん失われていった。 無理もないことだ。やりきれない話だ。 岩屋の入り口に呆然と立ち尽くす金太の手には、 わたしも観童丸も見たことのない道

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 11-正義-

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 10-熊胆-

          いくつかの村の男衆が夜に集まり、 総出で山狩りをするのは、 決して初めてのことではありませんでした。 ただ、 この度に至っては少し様子が異なっていました。 鋤、鍬、鎌といった農具で武装した男衆の殺気の度合いが、 これまでとはまったく別種のものだったのです。 そう、 武装という表し方が喩えではないと思わせる、 鬼気迫った様子でした。 それほどまでに、 かの人喰い熊に対する民の怒りは凄まじかったのです。 それぞれが手にした松明の光が、 小雨に濡れた男衆の顔を殊更異様に照らして

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 10-熊胆-

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 9-まさかり-その③

          真昼間なのに、 もうたたら場の火は落ちてたよ。 何日も降り続く雨のせいじゃない。 人喰い熊がこうも人を襲ってては仕事どころじゃない、 家を空けるのだって心配だからね。 そんな申し立ても多く出て、 山狩りが終わって落ち着くまでたたらは踏まない、 ってことに決まったんだ。 だから誰もいない。 金太と佐吉以外は。 「……一本鍛えるだけだったらな……なにもたたらなんてでかいもんを動かす必要ないんだ。 あれは、たくさんの砂鉄を一気に溶かすために動かしてるんだからな」 そう言って

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 9-まさかり-その③

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 9-まさかり-その②

          駆けながら、金太は環雷との出会いを思い出してた。 観童丸と二人で森を歩いてた時だ。 猪のためのくくり罠に子熊がかかってるのを見つけた。 でもこれは観童丸の作った罠じゃない。 造りがずいぶん雑だった。 観童丸も金太も獲れた獣は苦しませないようすぐに屠ったし、 罠の形がいたずらに獣を傷つけることのないよう気を付けて作った。 場も慎重に選んで設えてた。 だからその罠の雑な造りは気になった。 これは狩人の手によるものではない、と感じた。 案の定その子熊は、 罠が巻き付いた右後ろ足

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 9-まさかり-その②

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 9-まさかり-その①

          あれからずっと、 金太はたたら場には行かなかった。 あの綺麗な、 鉄を打ってく作業は見たかったけれども、 どうにも環雷のことが心に引っかかって、 心おきなく楽しめないだろうと思ってたんだ。 金太は何かを吹っ切るみたいに、 狩りに没頭した。 観童丸と一緒に山を駆け、 くたくたになるまで獣を追った。 そうして岩屋に帰ってくると、 剣の修行のつもりなのか、 腕が上がらなくなるまでまさかりを振った。 汗みずくになるとそれを止めて、 晩飯を食べてすぐに寝た。 雨の日は、 ひたすら

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 9-まさかり-その①

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 8-変貌-

          そいつは体にずっと違和感を覚えていました。 一体いつ頃から、 その違和感は芽生えたのか。 そいつは考えてみました。 といっても獣のこと、 人間のように思考を巡らせ論理的に考えたわけではありません。 自身が体験した場面を、 場面ごとに切り取るように思い出しただけです。   自分があの、 大好きな黒い実をたくさん食べていた時。 突然、自分は大声で追い立てられた。 あの岩穴に棲む、 白い毛の生えた、 強い奴に似た姿だった。大勢いた。 自分は驚いてしまい、 わけもわからず怯えて逃

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 8-変貌-

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 7-金太と佐吉-その③

          金太と佐吉は、 たたら場いちの大きな煙突が見える土手に並んで座ってた。 そこは佐吉の仲間や、 たたら場で働く他の職人やなんかにも見つかりにくい、 言ってみれば二人だけが知ってる秘密の場所だった。 金太は佐吉の握り飯を一つ分けてもらった。 佐吉の女房が作る握り飯が、 金太は大好きだった。 かわいそうなことに、 米も麦もほとんど食べたことない金太だったから、 ただの麦の塩むすびでも気を失ってしまうくらいの美味しさだったみたいだ。 目の色を変えて握り飯をほおばる金太を見て、 佐

          【歴史小説】ラブリンマン -真説 坂田金太郎- 7-金太と佐吉-その③