ケアマネがAIと仕事する未来(後編)
前編では、AIとの出会いやケアマネの不安、ケアマネージャーにしかできない仕事についてお話ししました。後編では、ケアマネージャーがAIと共に働く未来について詳しくお話しします。それでは、続きをご覧ください。
AIと一緒に働く未来
AIがますます進化する現代において、ケアマネージャーの業務も大きく変わっていくと思われます。AIを活用することで、私たちの業務がどのように改善されるのか、そしてどのような未来が待っているのかを考えてみましょう。
AIがバックオフィス業務をサポート
まず、AIがバックオフィス業務を担当することで、ケアマネージャーの時間と労力が大幅に削減されます。書類作成やデータ整理、問い合わせ対応といった定型的な業務は、AIの得意分野です。例えば、AIを活用することで、利用者の既往歴やモニタリング履歴、認定調査内容やフェースシートから現在の課題(ニーズ)が提案され、ケアプラン作成に役立てることができます。これにより、ケアマネージャーは現場での活動に専念することができるようになります。
現場の生きた情報をインプットし、ケアの質を向上
AIに適切な判断をさせるには、ベースとなる情報の提供が必要です。ここがケアマネ領域とAI領域の交差点であり、具体的な良い情報を多く提供することで、AIも良い結果を出すことができ、ケアの質を向上させることができます。AIは、利用者の状態やニーズをデータとして収集し、分析する能力に優れています。このデータを元に、ケアマネージャーはより的確な判断を下し、個別に最適なケアプランを作成することができます。例えば、訪問の際に得られた情報をリアルタイムでAIに入力し、すぐに適切な対応策を提案してもらうことが可能です。
ケアプランの質と利用者満足度の向上
AIと協業することで、ケアプランの質が向上し、利用者満足度も高まります。AIは膨大なデータを分析し、最適なケアプランを提案することができます。これにより、利用者一人ひとりに合ったケアが提供され、満足度が向上します。具体的には、AIが過去のデータを基に、似たようなケースの成功事例を提案し、それを参考にしてケアプランを作成することで、より精度の高いプランが作成できます。
AIはサポートツールとして活用
重要なのは、AIはケアマネージャーの仕事を奪うのではなく、サポートするツールとして活用することです。AIが定型業務を処理することで、ケアマネージャーはより高度な判断や、利用者との対話に集中できるようになります。AIはあくまで補助的な役割を果たし、ケアマネージャーの専門的な知識や経験を活かすためのサポート役として存在します。
私の実践例:情報収集の効率化
タイピングで感じた限界
私はモニタリングや担当者会議の際、会話を進めながら同時にタイピングでiPadにメモを取り、記録を作っていました。しかし、会話内容の詳細や微妙なニュアンスを短時間で記録するのは難しく、AIに読ませる情報としても不足しています。またタイピングと並行して話をするために会話に集中できず、やり取りの間が空いてしまうため、肝心の情報も引き出せないという課題がありました。色々と改善案を検討した結果、現状では情報の入力手段として、音声が良いのではないかと思っています。
音声入力で業務をスムーズに
現在、モニタリングや担当者会議の際に文字起こしアプリを利用して、会話内容をリアルタイムでテキストに起こし、事務所に戻った際にモニタリング記録用と担当者会議録作成用にそれぞれ作成したGPTs(色々な用途に特化したChatGPT)へテキストを貼り付け、報告書や議事録の原案を作ってもらい、手作業で修正したものを業務システムに貼り付けると言う効率化を図っています。会話の際に相手の反応を見ながら、確認すべきことや提案できること、次に振るべき話題などを考えて話すことに集中できるようになったため、集める情報の質や量も格段に向上しました。
AIに活躍してもらう
文字起こしアプリにはnottaを使っていますが、その他にもいろいろな文字起こしアプリが出ていますので、導入の際にはお好きなものを使うと良いかと思います。なお私が作成したモニタリング記録用GPTsは公開しておりますので、ぜひお試しください。
会話の文字起こし内容は、そのまま読むと何が何だか不明な事が多いのですが、プロンプトを工夫して意味を読み取れるようにしました。
※会話の中に個人情報が入る可能性が高いですので、文字起こししたテキストから注意深く個人情報を外す必要があります。もしくは事業所内でモニタリングのロールプレイングを行ってみて、会話の文字起こし内容を使ってみると言う方法もあります。また、ChatGPTのteamエディションを使えば情報漏洩のリスクを回避できます。(私はこの方法を使っています)
現在のAIの機能では、音声から文字起こしを行ったテキストをもとに記録を作成するのが現実的な選択ですが、最新のAIの機能では、音声や映像をリアルタイムに認識する機能も備わってきました。今後はカメラやマイクの情報から、利用者の感情や言語外のニーズ等が読み取れるようになるかもしれません。
まとめ
AIと一緒に働く未来は、ケアマネージャーにとって非常に有望です。AIの力を借りることで、私たちの業務は効率化され、利用者に対してより質の高いケアを提供することができます。AIがバックオフィス業務を担当し、ケアマネージャーは現場でのコミュニケーションと情報収集、適切な判断に集中することで、ケアの質と利用者満足度が向上します。私たちケアマネージャーは、AIを恐れるのではなく、積極的に活用し、自分たちの専門性を高めるためのツールとして取り入れるべきです。この未来に向けて、一歩ずつ前進していきましょう。
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