調剤薬局業界の構造的危機と、活路を見出せないドラッグストアの無能さ
調剤薬局業界は、調剤報酬改定のたびに存続を揺るがされる脆弱な収益構造を抱えている。その一方で、業界改革の中心を担う可能性を持つドラッグストア業界が、調剤分野で無策のまま、競争に埋没している状況は看過できない。本記事では、調剤薬局業界の構造的課題と、ドラッグストア業界の無能さを嘆きつつ、改革の可能性を考察する。
業界構造の危うさ:ある種の公定価格がもたらす脆弱性
調剤薬局の収益構造は、薬価と調剤報酬によるある種の公定価格に大きく依存している。この仕組みは医療サービスの公平性を担保する一方で、調剤報酬改定によって経営が大きく揺さぶられる脆弱性を内包している。
特に、在宅医療や地域支援体制加算などの加算取得が収益の柱となっている薬局では、制度改定による影響が致命的である。加算の取得要件が強化されるたびに、経営が困難になる薬局が増え、多くが市場から退出を余儀なくされている。
さらに、加算取得に必要な基準を満たすことだけが目的化し、患者への本質的なケアが形式化する現象が広がっている。この状況は、調剤薬局が医療提供施設としての本来の価値を見失う一因となっている。
ドラッグストア業界の無能:可能性を活かせない現状
本来、ドラッグストア業界は調剤分野で変革を起こす可能性を持つ。広範な店舗網、OTC販売のノウハウ、多様な顧客接点といった強みを活用すれば、地域医療の主役となるポテンシャルがある。しかし、現実にはこれらの強みを活かせず、一般の調剤薬局と同じ土俵で同質化競争に陥っている。
1. ある種の公定価格への依存
ドラッグストアの調剤部門も、調剤報酬や加算取得を収益の主軸としており、制度改定に対する脆弱性を共有している。
2. 形式的な加算取得と独自性の欠如
訪問薬剤管理指導や地域支援体制加算の取得に注力するあまり、ドラッグストア本来の強みであるOTC販売やセルフメディケーション支援が活用されていない。
3. 競争力を失ったサービス提供
調剤部門では、患者一人ひとりの健康に向き合う姿勢が希薄で、画一的なサービス提供にとどまっている。
改革への糸口:ある種の公定価格依存からの脱却
ドラッグストア業界が無能さを脱却し、業界全体を牽引する存在となるためには、以下の取り組みが必要である。
1. 多様な収益源の模索
在宅医療や地域支援体制加算だけに頼るのではなく、健康相談や特化型サービス、OTC販売を組み合わせた多角的なビジネスモデルを構築する。
2. 調剤とOTCの統合
調剤とOTC販売を連携させ、セルフメディケーション支援や予防医療を包括的に提供する「地域健康支援薬局」モデルを提案する。
3. 制度への提言
業界全体で成果報酬型の新たな報酬モデルを提案し、医療の質向上に応じた報酬体系を目指す。
結論:業界の未来を握るドラッグストアの覚悟
調剤薬局業界の構造的な危うさは、ある種の公定価格への過度な依存が根本原因である。しかし、本来この状況を打破する可能性を手にしているのはドラッグストア業界である。強みを活かせず無策のままでは、業界全体が緩やかな衰退を迎えるだろう。
変革の糸口はすでに存在している。それを掴み取るか無駄にするかは、ドラッグストア業界の覚悟にかかっている。今こそ、業界の未来を切り拓くリーダーシップを発揮すべき時ではないだろうか。