父親由来の染色体異常(異数体)の頻度は?

PGT-Aを行う理由として、染色体異常を持つ胚の移植を避けて、移植あたりの着床率や妊娠率を向上し、流産率を下げることが挙げられます。染色体が1本多いトリソミー(Trisomy)や染色体が1本少ないモノソミー(Monosomy)など、数の異常である異数体(Aneuploidy )は母親由来が多く、卵子を作る過程の減数分裂時に発生することが知られています。またその頻度は加齢とともに増加することが知られています。では父親由来の染色体の数の異常は、どれほどの頻度で起こっているのでしょうか?また年齢やBMI、精子の質との相関はあるのでしょうか?今回は染色体の数の異常の由来を調べた論文を紹介したいと思います。

参考論文
Bonus, M. L. et al. Relationship between paternal factors and embryonic aneuploidy of paternal origin. Fertil Steril (2022)

  • 胚盤胞期に見られた染色体異常のなかで異数体のうち、父親由来の異数性は8.4%(144/1,720)でした。

  • 父親由来の異数性は年齢との相関は見られず、<50歳では8.2%(138/1,674)、>50歳では13.0%(6/46)でした。

  • 父親由来の胚異数性の割合は、BMI間で差は見られませんでした。BMI 18-24.9 kg/m2は7.2%、BMI 25-29.9 kg/m2は8.4%、BMIR30 kg/m2は9.1%でした。

  • 精液検査が正常な男性の胚における、父親由来の異数性の頻度は 8.8%(75/854) でした。一方で、精液検査が異常な男性の胚における、 父親由来の異数性の頻度は8.0% (69/866) でした。同様に、父親由来の異数性の頻度は、精子濃度(8.7%:7.0%=正常:異常)、精子数(8.5%:8.1%=正常:異常)、運動率(8.8%:6.0%=正常:異常)となり、精子の質における影響は見られませんでした。

結論
父親の年齢、BMI、精子の質と父親の異数性との間に関連性は認められなかった。またこのデータは以前の報告(父親由来の異数性の頻度は 9.9%)ともほぼ相違のないデータが得られています。


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