PGT-AでSegmental aneuploidと診断された胚移植の結果


論文

Besser A et al. Healthy live births achieved from embryos diagnosed as non-mosaic segmental aneuploid. J Assist Reprod Genet. 2024 Oct 10.

要旨

本研究では、PGT-Aで非モザイク型のSegmental Aneuploid(NM-SA: non-mosaic segmental aneuploid)と診断された胚の移植結果を調査しました。
*Segmental Aneuploidとは、染色体の一部に増加(重複)または減少(欠失)がある状態を指します。PGT-Aの解析では、量的変化(コピー数の増減)を見ており、実際に染色体の形態が重複や欠失までは見ておりませんので、このような染色体全体の異数体をaneuploid、染色体の部分的のコピー数の変化をsegmental aneuploidと呼んでいます。

方法

2021年3月から2024年4月までの間に行われた凍結胚移植(FET: frozen embryo transfer)で、少なくとも1つのNM-SA胚を移植した患者を対象に分析しました。患者は、認定遺伝カウンセラーとの相談を受け、リスクと出産前診断の選択肢について説明を受けた後、NM-SA胚移植に同意しました。移植後の妊娠転帰として、出生率および出産前の診断結果が主要な評価項目としました。

結果1

本研究では、25個のNM-SA胚の移植を行いました。そのうち17個は単一胚移植であり、6個はNM-SA胚とモザイク胚を、2個はNM-SA胚と正常胚の移植です。
13/25胚(52.0%)は欠失を持ち、8/25胚(32.0%)は重複を持ち、5/25胚(20.0%)は少なくとも2つのNM-SAを持っていました。合計では26個の胚になってる?移植された胚の40%(10/25)は、モザイク異常も持っていました。NM-SAと判定された96.8%(30/31)が染色体の末端に位置しており、1つだけが染色体中間部に位置していました。NM-SAのサイズは4.2-139.0Mb(平均=52.5Mb, 中央値=39.3Mb)でした。

結果2

NM-SAを持つ胚移植の結果、出生率は24%(6/25)でした。4/6は重複を持つ胚からのもので、2/6は欠失を持つ胚からのもので、重複がある胚は欠失のある胚よりも高い出生率を示しました。これらの胚のNM-SAのサイズは6.7-131.4 Mbでした。妊娠した6件のうち3件で羊水穿刺および/または絨毛検査による出生前診断が行われ、その結果はいずれも正常でした。
単一胚移植では、妊娠率は11.7%(2/17)、着床率は35.3%(6/17)、流産率は16.7%(1/6)でした。この流産の染色体検査は行われなかったため、PGT-Aで診断されたNM-SAと関連するかは不明です。
*染色体を通常2本1対でありますので、欠失があると染色体の数は2本から1本へ、重複があると2本から3本になります。そのため、重複の方が誤診断の可能性が高いかと思っておりました。また染色体の末端にはテロメアに代表されるようにリピート配列が多く、これあも誤診断のリスクが高くなる要因だと考えています。重複と判定された胚や、染色体末端の重複や欠失と判定された胚のみが妊娠出生の結果になりますと、PGT-Aの誤診断かなと考えています。

まとめ

本研究は、NM-SA胚が健康な出産をもたらす可能性があることを初めて報告したものです。PGT-AによってSegmental Aneuploidと診断された場合、その胚は異常と見なされ、移植が推奨されないことが多かったですが、NM-SA胚でも妊娠および出産の可能性があることが示されました。*もちろん染色体正常胚、さらには低頻度モザイク胚よりも妊娠率や出生率が低いことは考慮する必要があります。NM-SAの胚は、健康な新生児の誕生につながる可能性があることを示しており、異数体と診断される胚とは異なるアプローチで評価されるべきでないでしょうか?
また、今回の研究では限られたサンプルサイズで行われたため、さらなる大規模な研究が必要です。またNM-SAと診断されたものは偽陽性によるものか(PGT-A診断の限界?)、それとも、PGT-Aで診断するために生検した細胞全てに欠失や重複を持っていたのか知りたいです。

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