原因不明の反復性流産カップルにおける隠れた染色体転座の同定
論文
要旨
原因不明の反復性流産(uRPL: unexplained recurrent pregnancy loss)カップルにおいて、以前に受けた核型分析(G-banding, karyotyping)で見逃された均衡型の染色体転座を、NGSを用いた解析で核型解析では検出の困難な染色体転座を同定することを目的としています。
方法
この研究は、以前の核型分析で正常核型と診断されたを48組のuRPLのカップルを対象としています。不妊治療を行ったカップルから得られた胚は全てPGT-Aを行い、PGT-Aの結果に基づき、48組のカップルは2つのグループに分類しました。17組は複数の胚で類似の染色体構造異常(PGT-Aの結果ではSegmental aneuploidyと報告しますす)が検出されたもの。残りの31組は前述のような所見はないが、少なくとも3つの高品質な胚盤胞を検査しても正常な胚を得られなかったもの。それぞれのパートナーの末梢血からゲノムDNAを抽出し、メイトペアシーケンシング(MPseq: Mate-pair sequencing)を用いて、均衡型の染色体転座保因者か判定しました。
結果
MPseqにより、類似の染色体構造異常が検出された17組のカップルのうち13組(13/17, 76.47%)において均衡型の染色体転座が同定されました。また、正常な胚を移植しても生児を得られなかった31組のカップルのうち3組(3/31, 9.68%)において3つの染色体転座が特定されました。MPseqで特定された16組の染色体転座のうち6組は、染色体転座切断点が染色体の末端付近に位置しており、核型分析では見逃されていました。
まとめ
核型分析で染色体が正常核型と診断されたカップルでも、uRPLの背景に均衡型の染色体転座保因者である可能性が示されました。PGT-Aの使用により、核型分析で見逃された「保因者カップル」を認識できる可能性が増加し、複数の胚の中で2つの染色体に常に類似した染色体構造異常が検出される場合、隠れた染色体転座が見つかる可能性があります。しかし、核型分析やPGT-Aの解像度以下の転座セグメントを持つ転座保因者(現在の技術ですと約5Mb以下)は依然として見逃される可能性があるります。
不育症患者のカップルで染色体検査を行うことあがりますが、その際に用いる染色体検査は核型分析なんですよね。この論文では核型分析の結果、16/48, 33.3%の症例で染色体転座保因者を見落としているとなると、核型分析が狩猟の検査方法でいいのか?と考えてしまいます。