PGT-A費用対効果の計算方法
論文
要旨
これまで、noteの記事でPGT-Aの費用対効果の論文を紹介しました(1, 2)。今回は、いくつもの論文を読んだ中で、費用対効果の計算方法が適していると思った論文を紹介したいと思います。
方法
PGT-Aを行わず、移植可能な全ての胚盤胞を連続的に移植する従来のアプローチ(論文ではConventional approach, 最初の新鮮胚移植とその後の凍結胚移植)と、PGT-A(TE生検、全胚凍結、及び染色体正常胚の凍結胚移植)の費用対効果を比較検証しました。母体年齢と利用可能な胚盤胞の数を変えながら実施されました。
日本においては、以前では、IVF治療は自費でしたので、各診療施設ごとの治療費が異なり、各施設ごとの費用対効果は異なるかもしれません。また最近では、一部の不妊治療が保険収載になりましたので、PGT-Aの費用対効果の計算方法も、この論文で用いられている手法とは異なります。
Conventional Approachの計算式
TotKConv = (NBlasto * KET) + (PmiscConv * Kmisc) + [(PmiscConv + LBRConv) * KdrugsPreg] – [If NBlasto >1, (NBlasto/2) * LBRConv * KET]
PGT-Aの計算式
TotKPGTA = KPGTA + [Peuploidy * NBlasto * KET) + (PmiscPGTA * Kmisc) + [(PmiscPGTA + LBRPGTA) * KdrugsPreg] – [If NBlasto >1, (Peuploidy * NBlasto/2) * LBRPGTA * KET]
用語解説
K: コスト
TotKConv: Conventional Approachの総コスト
TotKPGTA: PGT-Aアプローチの総コスト
KET: 新鮮または凍結された胚移植(ET)のコスト
KPGTA: PGT-Aのコスト(胚盤胞の数に応じて変動)
Kmisc: 流産管理のコスト
KdrugsPregnant: 妊娠時の薬剤のコスト
P: 確率を示すために使用されます。
PmiscConv, PmiscPGTA: はConventional ApproachとPGT-Aの流産率
Peuploidy: PGT-Aの染色体正常率
LBRConv, LBRPGTA: Conventional ApproachとPGT-Aグループの出産率
結果
一般的に、PGT-Aは母体年齢が上がるにつれて費用対効果が高くなりました。特に、母体年齢が36歳以上や、少なくとも3つの胚盤胞を持つ35歳の女性に対してConventional Approachよりも優れていました。今回の計算方法では、PGT-Aを支持する閾値年齢は、それぞれ1、2、3、4個の胚盤胞に対して母体年齢が42、40、39、38歳となりました。
胚盤胞数ごとの費用
Conventional ApproachとPGT-Aの費用比
まとめ
PGT-Aの臨床的有用性に関する議論では、累積出生率ばかりではなく、費用対効果が注目されるべきだと考えています。本研究は、PGT-Aの費用対効果をConventional approachと比較検証し、理論上ではPGT-Aは母体年齢が高く胚盤胞数が多いほど費用対効果がたかいことが分かりました。日本においても学会で治療成績のデータが出ていますし、このような計算を行い、PGT-Aの費用対効果を検証したいところです。