反復着床不全は本当に存在するのか?染色体正常胚を5回移植した際の成績

論文

Gill P et al. Does recurrent implantation failure exist? Prevalence and outcomes of five consecutive euploid blastocyst transfers in 123 987 patients. Hum Reprod. 2024 Mar 7:deae040.

要旨

以前の記事で、染色体正常胚を3回移植した際の累積生児獲得率の調べた論文を紹介しました(PGT-Aにより染色体正常と判定された胚を3回移植した結果、累積生児出生率は92.6%でした)。本論文では、前回の論文よりも症例数と移植回数を最大で5回まで増やしており、着床に影響を及ぼす既知の因子がない女性が、3回の胚移植失敗後にさらに2回の染色体正常胚を移植した場合の臨床妊娠率および累積生児獲得率を調査しています。

方法

国際的な多施設共同レトロスペクティブ研究が25のクリニックで実施されました。123,987例の患者の、64,572個のPGT-Aにより染色体正常と判定された胚盤胞移植を対象としました。

結果

全集団の0.085%の105例の患者が3回の染色体正常胚移植を実施しても、妊娠出生に至りませんでしたので、その後、少なくとも1回の追加の染色体正常胚移植を行いました。4回目と5回目の染色体正常胚移植の結果は、参加施設間で差はありませんでした。4回目と5回目の成績は下記のようになり、差はありませんでした。

  • 生化学妊娠率は、4回目移植が64/105(60%)、5回目移植が31/45(68.9%)。

  • 臨床妊娠率は、4回目移植が54/105(51.4%)、5回目移植が28/45(62.2%)。

  • 出生率は、4回目移植が42/105(40%)、5回目移植が24/45(53.3%)。

  • 1回移植の累積生児獲得率は約65%

  • 2回移植の累積生児獲得率は約84%

  • 3回移植の累積生児獲得率は92.6%

  • 4回移植の累積生児獲得率は95.2%

  • 5回移植の累積生児獲得率は98.1%

まとめ

反復着床不全(RIF: Recurrent Implantation Failure)という概念があります。RIFは、複数回の胚移植にもかかわらず妊娠に至らない状況を指します。しかし、RIFの定義はさまざまで、その原因もまだ完全には解明されていません。特に、染色体異常が除外された染色体正常胚を移植した場合のRIFは、3回までの移植結果は以前の研究で明らかにされていましたが、4回目以降の移植に関するデータは限られていました。本研究により、染色体正常胚移植を5個まで行った結果、高い出生率を考えると、原因不明のRIFの有病率は2%未満と試算されました。着床障害の既知の病因が除外されれば、追加の胚移植を行うことが最良の次のステップであると考えられます。

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