PGDIS POSITION STATEMENT 2016
PGDIS POSITION STATEMENT ON CHROMOSOME MOSAICISM AND PREIMPLANTATION ANEUPLOIDY TESTING AT THE BLASTOCYST STAGE
Introduction
PGT-Aの解析技術として、NGS(Next Generation Sequencer: 次世代シーケンサー)を用いた全染色体のコピー数解析がする手法が2014年頃から主流となっています。PGT-AのRCT(Randomized Controlled Trial: ランダム化比較試験)により、胚移植あたりの着床率、妊娠率、生児率が向上し、流産率が減少することが多くの研究によって示されています。またシグナル比の高いNGSを用いたPGT-Aは、染色体コピー数変化の程度を定量化することによって、正常核型(Euploidy)と異数体(Aneuploidy)だけではなく、「モザイク染色体異常(Mosaicism)」を区別できるようになりました。モザイク染色体異常は、正常核型を持つ細胞と異常核型を持つ細胞が混在している状態のことです。最近ではモザイク胚を移植した結果、妊娠や健康な児の出生が報告されています。しかし一方で、妊娠率は低く、流産率は高いという予備的なエビデンスもあります。
How does this affect aneuploidy testing in clinical practice?
モザイク胚が唯一の移植可能胚だとしたら臨床的にどのような影響があるでしょうか?モザイク胚は胎盤機能への影響など妊娠への臨床的影響を持つ可能性があり、また胎盤のみならず児への影響も考えられます。そのためモザイク胚移植は代替手段がない場合にのみ検討され、できれば患者への適切な遺伝カウンセリング後にのみ行われるべきです。
Recommendations for the laboratory (if reporting mosaic aneuploidies)
生検細胞は5細胞を目安にして、胚のダメージを最小限にする。
コピー数を正確に定量し、20%のモザイクを正確かつ再現性よく測定する手法が望ましい。
カットオフ値を設定し、Euploid<20%, 20-80%をMosaic, Aneuploid>80%とする。
Recommendations for the clinician
PGTのように僅かな細胞を用いた遺伝子解析や染色体解析は、100%正確な判定ができると限らない事を患者に通知する。
PGT実施時の説明文書や同意書に、モザイク胚の可能性や潜在的なリスクについて記載し、患者へ説明する必要がある。
モザイク胚よりも正常胚の移植を最優先にする。
モザイク胚を移植する場合、事前に患者に下記の事を説明する。
次のIVFサイクルで正常胚が得られる可能性があること。
事前に遺伝カウンセリングを行う。
移植後は随時モニタリングし、妊娠後には適切なモニタリングと出生前診断(羊水検査を推奨)を行う。
Suggested guidelines to prioritize mosaic embryos for transfer
モザイク染色体異常を持つ胎児や胎盤への影響について、これまでの報告に基づき優先順位を作成しました。
モザイクトリソミーを持つ胚よりもモザイクモノソミーを持つ胚の移植を優先する (45,Xは除く)。
モザイクトリソミーを持つ胚の移植を決定した際、モザイク率の低い胚と下記の染色体におけるモザイクトリソミー胚を優先する。
1, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 10, 11, 12, 17, 19, 20, 22, X, Y染色体でモザイクトリソミーを持つ胚を優先する。
14, 15番染色体はUPDによる疾患の可能性があるため移植優先度を下げる。
2, 7, 16番染色体は子宮内発育遅延の報告があります、移植優先度を下げる。
13, 18, 21番染色体トリソミーは出生に至るケースもある。
Clinical discussion
現在、モザイク胚の移植・妊娠率について多くの報告がされており、今後数年間でモザイク胚の臨床転帰の評価がされるでしょう。それまではモザイク胚の移植については、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる適切なカウンセリング後に検討すべきで、また移植時の潜在的なリスクや移植後のフォローアップについて患者に提言する際には、各国のガイドラインを理解する必要があります。