なぜ染色体正常胚でも妊娠しない?

参照論文

Cimadomo D et al. Opening the black box: why do euploid blastocysts fail to implant? A systematic review and meta-analysis. Hum Reprod Update. 2023 May 16:dmad010.

要旨

受精卵における染色体異常の有無は、出生の可否において最も大きな予測因子です。そのためPGT-Aにより、染色体異常を持つ胚の移植を避け、胚移植の成功率を改善することが期待されます。しかしながら、PGT-Aによる染色体検査を行い、染色体正常胚と判定された胚を移植に用いても、着床・妊娠しないことがあります。
これまでの研究からPGT-A後の着床率や妊娠率は50-60%に過ぎません。
それでは染色体正常胚の移植不成功の原因は何でしょうか?本論文では、胚、母体、父体、臨床、体外受精など、染色体正常胚の移植でART不成功となる要因を精査しました。

方法

TE生検およびPGT-A後に染色体正常胚の胚盤胞移植を行った際の出生率(LBR)および/または流産率(MR)に関連する何らかの特徴を評価した研究を対象としました。原著論文372報(レトロスペクティブ研究335報、プロスペクティブ研究30報、RCT7報)、レビュー論文41報を対象としました。しかし、ほとんどの研究がレトロスペクティブであったり、サンプルサイズが小さいという特徴があり、バイアスがかかりやすいため、エビデンスの質は低いものとなっています。

ICM, TE, 胚全体の質

胚の染色体状態と胚盤胞の質には相関があり、高品質のICMやTEは、高い染色体正常胚を持ち、逆に、質の悪いICMやTEは、高い染色体異常率を示すことが知られています。
グレードCのICM(N=470)は、グレードA/BのICM(N=6403)よりも、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に低く(OR=0.37, 95%CI=0.27-0.52, I2=53%, P<0.01)、妊娠ごとの流産率の差は、グレードCのICM(N=511)とグレードA/B(N=3108)では、統計的に有意差はありませんでした(OR=1.31, 95%CI=0.96-1.80, I2=0%, P=0.09)。
グレードCのTE(N=1909)は、グレードA/BのTE(N=6110)よりも、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に低く(OR=0.53, 95%CI=0.43-0.67, I2=70%, P<0.01)、妊娠ごとの流産率の差は、グレードCのTE(N=527、グレードA/B(N=3230)でも、前者で有意に高い結果となりました(OR=1.44, 95%CI=1.09-1.90, I2=10%, P=0.01)。
質の悪い胚盤胞(N=722)は質の良い胚盤胞(N=4384)よりも、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に低く(OR=0.40、95%CI=0.24-0.67、I2=83%、P<0.01)、妊娠ごとの流産率の差は、質の悪い胚盤胞(N=230)と質の良い胚盤胞(N=1907)では、統計的に有意差はありませんでした(OR=1.42, 95%CI=0.63-3.22, I2=68%, P=0.40)

生検のタイミング

Day5での胚盤胞到達率はIVFにおける重要業績指標として採用すべきとされています。それにもかかわらず、PGT-Aのコホート研究では、Day5からDay7まで胚盤胞到達日が混在しています。
Day6-7の胚盤胞到達(N=4627)はDay5の胚盤胞到達(N=6716)と比較して、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に低く(OR=0.56, 95%CI=0.49-0.63, I2=47%, P<0.01)、妊娠ごとの流産率の差は、Day6-7の胚盤胞到達(N=1753)はDay5の胚盤胞到達(N=3062)と比較して、前者で有意に高い結果となりました(OR=1.49, 95%CI=.25-1.76, I2=0%, P<0.01)

タイムラプス顕微鏡で検出された形態力学的異常

1PN受精卵や、day2で見られる3PNなどの多核化、割球期胚の異常な分裂パターンは、より悪い生殖結果と関連していました。

その他の分子指標

mtDNAスコアの測定は13の研究が見つかりましたが、mtDNAの定量方法や臨床的意義の閾値は異なっており、現在ではmtDNAが着床率や妊娠率改善の指標になるかは不明です。
TE生検のPGT-A解析で染色体正常と報告された胚で、SCM培地で正常/異常と報告された胚の転帰を調べた研究では、SCMで染色体異常(N=19)と染色体正常(N=24)では、同様の移植あたりの出生率で(OR=0.38, 95%CI=0.07-2.06, I2=33%, P=0.26)、妊娠ごとの流産率の差は、SCMで染色体異常(N=10)と染色体正常(N=14)では、統計的に有意差はありませんでした(OR=4.05, 95%CI=0.35-46.15, I2=32%, P=0.26)。

母体要因

卵子採取時年齢

胚の異数性は、母体年齢の上昇と関連していることがよく知られています。そのため、若年齢層よりも母体年齢が高い女性のPGT-A後の転帰が良いという報告が多いです。またPGT-A後の着床・妊娠率においても若年齢層の方が転帰が良いいう報告が多いです。
これまでの論文をまとめた結果、採卵時38歳以上の女性(N=3175)は、38歳以下の女性(N=7563)よりも、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に低く(OR=0.87, 95%=CI0.75-1.00, I2=31%, P=0.05)、妊娠ごとの流産率の差は、38歳以上の女性(N=1631)は、38歳以下の女性(N=4623)と比較して、統計的に有意差はありませんでした(OR=1.17, 95%CI=0.99-1.38, I2=0%, P=0.07)。

原因不明不妊

不妊症と診断された女性(N=2590)と原因不明不妊症の女性(N=627)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.62, 95%CI=0.35-1.10, I2 =78%, P=0.1)。妊娠ごとの流産率の差は、不妊症と診断された女性(N=1701)と原因不明不妊症の女性(N=541)で、有意差はありませんでした(OR=0.93, 95%CI=0.71-1.23, I2=0%, P=0.63)。

多嚢胞性卵巣症候群

PCOS罹患女性(N=383)とPCOS罹患していない女性(N=2921)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.87, 95%CI=0.70-1.08, I2=0%, P=0.2)。妊娠ごとの流産率の差は、PCOS罹患女性(N=228)とPCOS罹患していない女性(N=1968)で、有意差はありませんでした(OR=1.47, 95%CI=0.85-2.54, I2=49%, P=0.17)。

卵巣予備能の低下(DOR)

DOR女性(N=513)と非DOR女性(N=2500)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.90, 95%CI=0.74- 1.09, I2=0%, P=0.28)。妊娠ごとの流産率の差は、DOR女性(N=328)と非DOR女性(N=1723)で、有意差はありませんでした(OR=0.95, 95%CI=0.68-1.34, I2=0%, P=0.78)。

子宮内膜症

子宮内膜症女性(N=350)と非子宮内膜症女性(N=3607)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=1.11, 95%CI=0.87-1.40, I2=0%, P=0.40)。妊娠ごとの流産率の差は、子宮内膜症女性(N=196)と非子宮内膜症女性(N=2390)で、有意差はありませんでした(OR=0.79, 95%CI=0.51-1.24, I2=0%, P=0.31)。

子宮腺筋症

子宮腺筋症も生殖予後に影響を与えると考えられていますが、これまで1論文しか見つけられず、その研究では、染色体正常胚の移植あたりの出生率や妊娠ごとの流産率には有意差はありませんでした。

卵管性因子

卵管因子不育症の女性(N=172)と非卵管因子不育症の女性(N=2841)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.88, 95%CI=0.64-1.20, I2=0%, P=0.40)。妊娠ごとの流産率の差は、卵管因子不育症の女性(N=85)と非卵管因子不育症の女性(N=1966)で、有意差はありませんでした(OR=0.15, 95%CI=0.87-2.60, I2=0%, P=0.15)。

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患は骨盤を大きく変化させることがあるとされていますが、これまで1論文しか見つけられず、その研究では、染色体正常胚の移植あたりの出生率や妊娠ごとの流産率には有意差はありませんでした。また潰瘍性大腸炎とクローン病の診断も、転帰に影響を与えませんでした。

着床不全(RIF)

RIF女性(N=310)は、非RIF女性(N=1672)よりも、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に低く(OR=0.72, 95%=CI0.55-0.93, I2=0%, P=0.01)、妊娠ごとの流産率の差は、RIF女性(N=143)と、非RIF女性(N=849)で、有意差はありませんでした(OR=1.17, 95%CI=0.68-2.01, I2=0%, P=0.58)。

習慣流産(RPL)

RPL女性(N=436)と非RPL女性(N=2457)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.75, 95%CI=0.50-1.12, I2=69%, P=0.16)。妊娠ごとの流産率の差は、RPL女性(N=138)と非RPL女性(N=968)で、有意差はありませんでした(OR=1.97, 95%CI=0.89-4.36, I2=58%, P=0.10)。
*トータルでは出生率や流産率に差は見られませんでしたが、本論文で集計しました4つの研究のうち、2つの研究で、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差が見られました。

体格指数と体脂肪

BMI>30女性(N=554)はBMI<30女性(N=5948)よりも、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に低く(OR=0.66, 95%CI=0.55-0.79, I2=0%、P<0.01)、
妊娠ごとの流産率の差は、BMI>30女性(N=283)はBMI<30女性(N=3296)と比較して、前者で有意に高い結果となりました(OR=1.80, 95%CI=1.08-2.99, I2=52%, P=0.02)

ホルモン, 薬剤

本論文では、AMH(抗ミュラーホルモン), プロゲステロン, エストラジオール, TSH(甲状腺刺激ホルモン), インスリン成長因子1,2, ビタミンD, レボサイロキシン, セロトニン再取り込み阻害薬との関連を調べましたが、胚移植前日のプロゲステロンレベル<10.65ng/mlで、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に低く、妊娠ごとの流産率が高い結果がありましたが、その他は、染色体正常胚の移植あたりの出生率や妊娠ごとの流産率との関連は見られませんでした。

子宮内膜スクラッチ

子宮内膜の損傷を誘発し、サイトカインや成長因子を局所的にリクルートすることで、子宮内膜の受容性を改善する試みです。小規模な研究では改善が示唆されていますが、大規模な多施設共同試験では、効果がないことが示されています。

子宮内膜受容性解析検査(ERA)

一部の着床不全の患者は、胚を子宮内膜、特に患者固有のWOI(window of implantation)を適切に同期させることができないことに起因すると考えられています。ERA検査後移植(N=4190)とERA検査なし移植(N=4397)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.89, 95%CI0=.59-1.35, I2=0%, P=0.58)。妊娠ごとの流産率の差は、ERA検査後移植(N=113)とERA検査なし移植(N=137)で、有意差はありませんでした(OR=1.06, 95%CI=0.48-2.34, I2=0%, P=0.88)

その他

子宮体液由来細胞外小胞の遺伝子発現解析や子宮内膜と膣の細菌叢との関連を調べる研究も進んでいます。これらについても今後の大規模な研究に期待しています。

父体要因

父年齢

父年齢>40(N=1199)と父年齢<40(N=3143)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.95, 95%C=I0.83-1.09, I2=0%, P=0.45)。妊娠ごとの流産率の差は、父年齢>40(N=905)と父年齢<40(N=2391)で、有意差はありませんでした(OR=1.16, 95%CI=0.90-1.49, I2=0%, P=0.25)。

男性因子(SMF)

SMF(N=962)と非SMF(N=3697)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.96, 95%CI=0.83-1.11, I2=0%, P=0.58)。妊娠ごとの流産率の差は、SMF(N=602)と非SMF(N=2255)で、有意差はありませんでした(OR=0.89, 95%CI=0.54- 1.45, I2=49%, P=0.64)。

精子DNAの断片化

精子DNA断片化率の高い患者で出生率や妊娠ごとの流産率に差は見られませんでした。

治療方法

卵巣刺激

自然周期と卵巣刺激による卵子採取周期の比較

卵巣刺激プロトコルの影響については、10年以上前に遡り議論が続いており、明らかにするためにはさらなる大規模な調査が必要です。自然周期群と卵巣刺激群で、異数性率や染色体正常胚の移植あたりの妊娠率に有意差はありませんでした。*次回紹介する論文で述べますが、卵巣刺激群では、母体の健康への影響が懸念されます。

ゴナドトロフィン(Gn)の投与量

Gn投与量>3000IU(N=311)とGn投与量<3000IU(N=740)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=1.04, 95%CI=0.76-1.42, I2=0%, P=0.83)さらGn総投与量を連続変数として検証した結果もありますが、色体正常胚の移植あたりの出生率や流産率に有意差はありませんでした。

卵巣刺激後に回収された卵子の数

卵巣刺激後に回収された卵子の数と、胚移植成績との関連性を検討した研究がいくつかありますが、1報を除いて、影響は見られていません。

二重卵巣刺激

黄体期刺激群(N=4215)と卵胞期刺激群(N=4189)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=1.21, 95%CI=0.82-1.80, I2=0%, P=0.33)。妊娠ごとの流産率の差は、黄体期刺激群(N=4124)と卵胞期刺激群(N=4100)で、有意差はありませんでした(OR=0.90, 95%CI=0.43-1.91, I2=0%、P=0.79)。

排卵トリガー

hCG群(N=803)とGnRH-agonist群(N=1216)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.86, 95%CI=0.55-1.35, I2 =71%, P=0.52)。妊娠ごとの流産率の差は、hCG群(N=123)とGnRH-agonist群(N=197)で、有意差はありませんでした(OR=1.43, 95%CI=0.76-2.68, I2=0%、P=0.26)。

卵子ガラス化保存法

卵子ガラス化保存法群(N=451)と新鮮卵子群(N=86)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=1.21, 95%CI=0.58-2.53, I2=0%, P=0.61)。

受精方法

単精子受精を保証し、透明体に付着した精子や残留する卵丘細胞によるコンタミリスクを最小限に抑えるため、PGTサイクルではICSIが推奨されてきましたが、現在でもconventional IVFは使用されています。ICSIとconventional IVFを用いたサイクルにおいて、染色体上胚移植後の臨床妊娠率について、1件の研究がありますが、有意差は見られませんでした。

胚培養

培地の影響

Continuous media群(N=632)とSequential media群(N=374)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.93, 95%CI=0.71–1.21, I2 =0%, P=0.58)。妊娠ごとの流産率の差は、Continuous media群(N=320)とSequential media群(N=192)で、有意差はありませんでした(OR=1.71, 95%CI=0.96–3.04, I2=0%, P=0.07)。

培養条件

個体培養とグループ培養での比較、培養温度を37C°と36C°の2群に分けて比較、培養方法を動的と静的に分けての比較はすべて、染色体正常胚の移植あたりの出生率や流産率に有意差はありませんでした。

TE生検

ここ10年でPGT-Aのための生検はDay3の割球生検からDay5のTE生検へと変遷しました。これがどのような影響を及ぼしているか検証しました。

TE生検プロトコル

透明体除去と同時に生検群(N=950)はday3にハッチングする群(N=950)よりも、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に高い(OR=1.41, 95%CI=1.18-1.69, I2 =0%、P<0.01)。妊娠ごとの流産率の差は、透明体除去と同時に生検群(N=620)は、day3にハッチングする群(N=529)と比較して、統計的に有意差はありませんでした(OR=1.00, 95%CI=0.68-1.49, I2=0%、P=0.99)。

TE生検の操作

以前にARTクリニック間でPGT-Aの成果に幅があることを報告があり、熟練度の低い胚培養士による生検がその技術的あるいは臨床的結果に影響を与えるリスクは無視ませんが、訓練された複数の生検実施者間で結果が異なるか調査した結果、出生率などに差は見られませんでした。

生検細胞数

胚本体への侵襲性を考えますと、生検する細胞数は少ないほうがよく、一方で診断を正確にするためには、多くの細胞を生検する必要があるため、生検する細胞数は非常に重要な問題です。実際のこれまでの報告では、より多くの細胞を生検するほど、着床率の低下を招くという報告もあります。

生検とガラス化保存の時間

これまでの報告では、生検の30-60分前に胚盤胞のガラス化保存する方が妊娠率が向上するという報告がある一方で、生検後の180分以上後に保存することが出生率の向上に寄与するという論文もあります。主張が異なっており、今後大規模な研究が期待されます。

再生検

2回生検群(N=86)と1回生検群(N=6896)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.68, 95%CI=0.43-1.07, I2=4%, P=0.10)。妊娠ごとの流産率の差は、2回生検群(N=34)と1回生検群(N=3789)で、有意差はありませんでした(OR=0.77, 95%CI=0.23-2.51, I2=0%, P=0.66)。

生検とガラス化保存回数

生検1回ガラス化保存2回群(N=4121)は生検1回ガラス化保存1回群(N=4071)よりも、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に低い(OR=0.41, 95%CI=0.22-0.77, I2=50%, P<0.01)妊娠ごとの。流産率の差は、生検1回ガラス化保存2回群(N=47)は生検1回ガラス化保存1回群(N=2410)で、有意差はありませんでした(OR=2.14, 95%CI=0.99-4.62, I2 =0%, P=0.05)。

胚移植

新鮮胚移植とガラス化保存胚移植の比較

ガラス化保存胚移植(N=489)は、新鮮胚移植(N=362)よりも、染色体正常胚の移植あたりの出生率が有意に高い(OR=1.56, 95%CI=1.05- 2.33, I2=23%, P=0.03)。

移植操作

胚移植操作する人による妊娠率の違いは見られませんでした。

ガラス固化体温存移植のための子宮内膜準備プロトコール

子宮内膜準備プロトコルは、修正自然周期療法(MNC)または外因性エストロゲンとプロゲステロンによホルモン補充療法(HRT)で比較しました。HRT後移植(N=4368)とMNC後移植(N=4283)において、染色体正常胚の移植あたりの出生率に有意差はありませんでした(OR=0.73, 95%CI=0.41-1.30, I2=66%, P=0.29)。
妊娠ごとの流産率の差は、HRT後移植(N=167)とMNC後移植(N=144)で、有意差はありませんでした(OR=1.57, 95%CI=0.79-3.09, I2=0%, P= 0.20)。
*一方で他の研究では、HRT後移植よりもMNC後移植で高い妊娠率が得られたとの報告もあり、さらなる調査が求められています。

結論

非常に長くなってしまいましたが、染色体正常胚を移植しても妊娠出生に痛ない原因として、下記のことが考えられます。

母体の高年齢化と肥満

染色体異常以外にも生殖の老化に関わるメカニズムや、生活習慣や栄養状態が生殖能力にどう影響するか調べる必要があります。

子宮内膜の受容性や選択性、胚・子宮内膜の相互作用

ブラックボックスである子宮と胚盤胞内膜の相互作用をより知る必要があります。

胚盤胞の質の低下

胚の評価とIVF手順の標準化と自動化する必要があります。

過度な胚操作、または不十分な胚操作

できうる限り非侵襲的に胚選択できるようになる必要があります。

これらのギャップを埋めることによって、「着床のブラックボックス」の謎を明らかにすることができるかもしれません。重要なことは、本論文で紹介した関連性は、ほとんどがレトロスペクティブな研究から得られたものですので、エビデンスレベルは低く検証が必要です。

まとめ

とてつもなく長い論文で読むのに苦労しましたが、私もPGT-A後の胚移植成績が思ったよりも低いと感じていたので(当院の成績はこの論文に記載のある成績よりも良いです!)、その原因を探る研究は非常に重要と考えていました。PGT-Aの次の研究、"Beyond PGT-A"として、胚移植あたりの着床・妊娠・出生率の改善を目指す研究が盛んになってほしいです。

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