PGT-A検査後の正常胚移植後のNIPTはPGT-Aと高い一致率と低い陽性的中率を持つ
論文
要旨
以前にPGT-A後の出生前診断にNIPTを選択するのは適しているのか記事を書いたことがありました。今回紹介する論文では、IVFによる出生数が増加する中、PGT-Aにより正常胚移植後のNIPTの有効性を評価しています。特に、PGT-Aを経た妊娠におけるNIPTの陽性的中率(PPV: Positive Predictive Value)とPGT-A結果との一致度を調査しました。
方法
PGT-A後に正常胚を移植したか、PGT-Aなしで胚移植した患者を対象に、後ろ向きコホート研究を実施しました。合計2973件の単胎妊娠からのNIPTの結果が分析され、PGT-A後に正常胚移植を行った患者群(n=1204)と、PGT-Aを受けていない胚を移植した患者群(n=1769)の2つのグループに分けられました。NIPTの対象の染色体異常は、21, 18, 13番染色体トリソミー(T21, T18, T13)と、性染色体異数性(47XXX , 48XXXX, 45X, 47XXY, 47XYY)、および5つの微細欠失(1p36, 4p16.3, 5p15.2, 15q11.2, 22q11.2)です。続く出生前または出生後の診断結果から、NIPTの陽性結果を真陽性または偽陽性に分類しました。主な評価項目は、NIPTの精度、PPV、陰性的中率(NPV)、およびPGT-A結果との一致度です。
PGT-A群の結果
NIPTの結果、PGT-A群では、13件(1.1%、13/1204)で陽性と診断され、そのうち9件は染色体異数性(T21が2件、45Xが2件、47XXXが4件、47XYYが1件)でした。さらに、1件の性別不明および3件の微小欠失/重複(22q11の欠失/重複が2件、15q11.2が1件)がありましたが、フォローアップの診断で13件のうち1件(22q11重複)だけが真陽性と確認されました。したがって、PGT-A群におけるNIPTのPPVは7.7%(1/(1+12), 真陽性/(真陽性+偽陽性))でしたが、常染色体や性染色体の異数性に関してはすべて誤陽性でした(PPV=0/(0+10))。
非PGT-A群の結果
非PGT-A群では27件(1.5%、27/1769)で陽性と診断され、12件は常染色体トリソミー(T21が6件、T18が3件、T13が3件)で、15件は性染色体異数性(45Xが5件、47XXXが2件、47XYYが2件)でした。21人の患者に対して、NIPTで陽性結果が出た後、遺伝カウンセリング後に選択的に侵襲的診断出生前検査が行われました(T21が6件、T18が3件、T13が3件、45Xが1件、47XXXが2件)。フォローアップの診断で8件が真陽性と確認されました。したがって、非PGT-A群におけるPPVは38%(8/(8+13))でした。また常染色体トリソミーに限ればPPVは67%でした。
まとめ
NIPTとPGT-Aは、染色体異数性に対して高い特異度と感度を有しており、さらにNIPTは、技術的にはPGT-Aでは検出の困難な微細重複/欠失を検出することができ、その場合のPPVは67%でした。
著者はPGT-Aを受けた女性には、主に微細欠失/重複、あるいは着床後に検出限界を超えて発生する可能性がある事象をスクリーニングするために、NIPTを推奨すべきと主張しています。正常胚移植後の妊娠におけるNIPTの陽性的中率が低く、偽陽性率が高いことを患者に説明し、安心させることができます。
それならば、PGT-Aの一致率が高く染色体異数性に関しては、PGT-Aの検査結果が正しく、NIPTの誤陽性だったのですから、出生前診断では羊水検査や絨毛検査で、染色体マイクロアレイによりPGT-Aでは検出の困難な微細欠失/重複の検出を目的とすることでいいのではないでしょうか?