モーラム・ミーツ・ダブ・ミックス、セットリスト
2月25日に大塚のバー「地底」で開催された、今回で34回目を迎えるワールドミュージックのパーティー「Salud!!」。
光栄にも主催のKONPEXさんからDJのご依頼をいただきまして、参加させていただきました。
今回はアジア・オセアニアスペシャルという事で、他のDJの皆さんもアジア関連のレコードをプレイされていましたが、僕はいつも通りタイものでセットを組みました。
ミックスのテーマを「ダブ色のあるモーラム」に決めて選曲して、持ち時間は35分でしたが、1曲をじっくり聴いてもらいたかったので、曲数は少なめになっています。
踊れる要素は薄いかなと思っていましたが、当日は結構お客さんも来てくれていて、踊ってくれている人もいたので安心しました。
では、その時に使った曲を紹介します。気になった曲があったら、参考にしてもらえれば幸いです。
1.Salavan Powa (feat. Molam Inten Keawbuala) - Srirajah Sound System
タイのレゲエバンド「Srirajah Rockers(シーラヂャー・ロッカーズ)」のサブ・プロジェクト「Srirajah Sound System」の曲で、ラオスのモーラム歌手「インテン・ゲーオブアラー」をフューチャーした曲。
曲のタイトルになっている「サラワン」というのは、ラオス~タイ東北部(イサーン)に伝わる伝統的な舞踊音楽の事です。
2.Lam Toey Pason - Apichat Pakwan
オランダ人DJとイサーンのミュージシャンによるプロジェクト「アピチャート・パークワーン(人の名前のようですが、バンド名です)」の1stフルアルバム「Esantronics」に収録されている曲。
ピンをフューチャーしたインストですが、タイトルに「ラム・トゥーイ」とある事からも、踊りをテーマにした曲。
3.Lam Tang Way - Jah Wobble's Invaders of The Heart
こちらは若干古い曲で、イギリスのベーシストJah Wobbleが世界各地のミュージシャンとコラボレーションし、ダブミックスするというシリーズの中の1枚で、2000年にリリースされた、彼とラオスのモーラムとのコラボアルバムに収録されている曲です。
1990年代のワールドミュージック・ブームの時に、モーラムのCDが何枚か出ていましたが、昨今の欧米でのタイ音楽ブームが起こる全然前に作られたアルバムなので、少し早すぎた感もあります。
なので、むしろ今の時代の方にこそ合っているコンセプトと言えます。
4.Dejame Volar(feat.Junlaholaan) - Amaru Tribe
ここでBPMも落として、曲の雰囲気もがらりと変わります。
というのも、このAmaru Tribeというバンドはオーストラリアのバンドだからです。では、なぜ、このセットに組んだかというと、この曲でフューチャーされているのが、イサーンのフォーク・ロック・バンド「ヂュンラホーラーン」だからです。
Amaru Tribeはタイの音楽に関心があるようで、実際タイを訪れてStudio Lam(DJ Maft Saiが経営するバー)でイサーンのミュージシャンと共演した事もあるようです。
彼らのクンビアとイサーンの音楽という不思議な組み合わせですが、意外とマッチしていて、面白い曲です。
5.ไทเท่ (feat.ไวพจน์ เพชรสุพรรณ) - TaitosmitH
次の曲はさらに強引にテンポを変更しても、どうしても入れたかった、タイのプア・チーウィット・バンド「TaitosmitH(タイ・トッサ・ミット)」の2ndアルバム「プア・チーウィット・グー」に収録されている曲。
タイトルの「タイ・テー」とは、意訳すれば「リアル・タイ・スタイル」という事。
歌詞の内容は「みんな、やたら欧米に憧れるけど、俺たちの住むタイには素晴らしいものが沢山あるんだぜ。自分たちにもっと誇りを持てよ」という事を歌っています。
そして、なぜこの曲を入れたかったかというと、ここでフューチャーされているのが、昨年この世を去ったタイ音楽の巨人ワイポット・ペットスパンで、彼にとってこの曲が生前最後の録音となったからです。
しかし、さすが巨人、最後まで存在感と迫力のある喉を聴かせてくれています。
6.Chase A Dreams - HED
ピンやケーンといったイサーンの伝統楽器を操る名手で、バンド「ASIA7」でも活躍しているトントラグーン・ゲーウヨーンが組んでいる3ピースバンド「HED(イサーン語のเฮ็ดのローマ字表記で、「創造する」という意味)」の2ndアルバム「a life」に収録されている曲。
インプロビゼーションを主体とした、疾走するビートがカッコいい曲です。
7.Lai Sing - Khun Narin Electric Phin Band
ペッチャブーン県ロムサックのピン・プラユック・バンドの演奏を、アメリカのレーベルがフィールド・レコーディングしたアルバムからの1曲。
このバンドは単なる田舎のオッサンたちの集まりだけど、本物だからこその荒々しさが見事にパッケージされていて、最高にカッコいい。
8.Si Phan Don Lovers Rock (feat. Molam Inten Keawbuala) - Srirajah Sound System
最後は1曲目と同じ組み合わせによる曲ですが、雰囲気はだいぶ違って、ゆったりしたレゲエのリズムに、インテンのモーラムがたゆたう、心地よいラバーズ・ロック。
実はこの曲を歌っているインテンは、昨年金銭問題を苦に自らメコン川に身を投げ、この世を去ってしまってしまいました。今回のセットで冒頭とラストに彼女の歌を入れたのは、裏テーマとして彼女の捧げるという意味もありました。
このミックスを練習用に録音したものをmixcloudにアップしてあるので、時間があれば聴いていただけると嬉しいです。
今度はいつDJできるでしょうね。ご依頼も承っておりますので、よろしくお願いいたします。