【タイ・音楽の旅2023】6日目:もしかしたらモーチットで観るモーラムはこれが最後になるかも・・・
2023年10月26日
帰国日を除けば、バンコクの滞在はこの日が最後になった。そして、後で判明した事だけど、モーラムが好きな身としては、記憶に留めておくべき重要な1日なるかもしれない。
今回のタイ滞在は2週間だったので、前半1週間が過ぎた訳だけど、持ち合わせのバーツが最初に空港で両替した分では足らないかもしれないという状況になってきたので(いかんせんタイの物価が上がっている上に円安なもんで)、イサーンに行く前にもう少し両替することにした。
ラップラオの宿から近めの両替所だったら、ザ・モール・バンガピの中にあるスーパーリッチが分かりやすかったけど、もう少し近い場所はないかとGoogle Mapで調べた所、宿から歩いて5~6分の所にあるウェーッターニー病院の中にもスーパーリッチがある事が分かった。
両替の為だけにバスに乗ってバンガピに行くのも面倒なので、ウェーッターニー病院の方へ行くことにして、通りすがり、お昼ご飯を食べに、前日カオマンガイを食べたお店にもう一度寄る事にした。
この日は気分を変えてクウィティアオを注文。盛り付けもきれいだし、味も申し分ない。お店は「カオマンガイ・バーン・プン(ข้าวมันไก่บ้านปุณณ์)」という名前だそうで、営業時間は9~14時のお昼のみとのこと。またこの辺に泊まったら、もう一度必ず行きたい。
食べ終わった後、スムージーをテイクアウトして、歩道橋を渡りウェーッターニー病院へ向かった。
スーパーリッチは病院の入り口を入ってすぐにある、受付の横にあった。しかし、Google Mapのレビューにも書かれていたように、窓口には誰もいない。情報だと病院の受付の人が兼任していると書かれていたので、受付に「両替お願いします」と声をかけた。すると「トイレに行っているので少し待ってください」とのこと。しばらくソファーに座って待つことにした。
20~30分ほど待っただろうか。ようやく両替担当の人が戻ってきた。あまり期待していなかったのだが、レートを見て愕然とした。
1週間前の空港の両替所では1万円=2,410バーツだったが、この日は2345バーツとさらに悪くなっていた(しかも、この1週間後には2300バーツ代ギリギリにまで落ちる)。つくづく日本人である事が悲しくなってくる。
がっくり肩を落として、一旦宿へ戻る。この後はモーチット・バスターミナルへ行くのだが(といっても、バスに乗る訳ではなくモーラムを観る為)、時間的にはまだ余裕があるので、しばらく部屋で休憩。
モーチットへ行くにはラップラオから電車で行くことも可能だが、2回乗り換えがあるし、最後は車かモーターサイを使わなければならない。バスだと1本で直接モーチットまで行くことが出来て楽だし、安上がりで済む。
しかし、バスで行くとなると時間がかかるし、夕方のラップラオ通りは渋滞するので、少し余裕をもって17時ころ宿を出発した。バンコクでのモーラムは19時前後から始まるので、2時間もあれば、そのくらいの時間には着くだろう。
とはいえ、乗りたいバスがなかなか来ないと、どうしても気持ちが焦ってしまう。15分くらい過ぎたあたりから、乗りたいモーチット行きのバスが来るまで、あと何分待つのだろうかと、不安になってきてしまった。
モーチットへ行くバスはいくつかあるんだけど、一番確実な路線がなかなか来ないので、といあえず来たバスでBig Cラップラオまで進む事にした。
なぜBig Cまで来たのかというと、すぐそばにあるチャイカー・パッカイというパブの予定を見たかったからである。
チャイカー・パッカイはタイ人には人気の高いパブで、いつもたくさんのお客さんが入っている。ゲスト歌手のチョイスも結構良いので、個人的にも好きなお店だ。泊っている宿からも近いし。
ただ、この時はタイミングが合わず、行くチャンスはなかった。特に、11月11日のミーントラー・インティラーは、本当に残念。もう少し早い日だったら、自分の滞在中に来ることが出来たのに・・・。
バス停に戻って、改めてモーチット行きのバスを待つ。今度はそれほど待つことなく、目的のバスが来た。時間は18時近くになっていた。
ラップラオからモーチット・バスターミナル方面へ行くルートは、以前はBTSモーチット駅前を通り、MRTガムペーンペット駅付近でUターンして、JJモール前を通過してバスターミナルへ入っていたのだが、この日はガムペーンペット駅付近でUターンせず、違うルートを通っていった。
一瞬不安になったものの、しばらくすると新しく出来たバンスー駅が見えてきた。どうやらバンスー駅が出来て、そこからモーチットに行くお客さんを乗せるルートに変更されたようである。
そんなこんなで18時半ころモーチットに到着。モーラムをやっている会場はバスターミナルから歩いて行ける距離なので、バスを降りると既にコンサートの音が聞こえていた。
もしかしたら、モーラムのコンサートにこんなに早く来たのは初めてかも。会場内にはまだほとんど人がいなかった。
今回の「サーン・ラオ・バントゥンシン(ซานเล้าบันเทิงศิลป์)」は、ラビアップ・ワータシン(ระเบียบวาทะศิลป์)に在籍していたブート・チャッカパン(บู๊ท จักรพันธ์)が立ち上げた、今年(2023年)で2年目になる、まだ若い楽団。なので、僕も観るのは今回が初めてである。
実はこの楽団を観に来たのは、以前から親しくさせてもらっている人がスタッフにいるので、その挨拶がてらに来たという理由もある。
ちなみに、この日の入場料は180バーツだった。僕がモーラムのコンサートに行きはじめた2016年頃は120バーツだったので、こういう所からもタイの物価が上がっている事が感じられる。
しばらくすると、ぼちぼち人が入り始めてきた。バンコクでのモーラムは19時頃から会場に入れるが、人が集まるのは21時頃なので、それまでは言わば前座の様な感じで、ステージでは「ラムトゥーイ」という、歌手がメドレーで歌いつないでいくリラックスしたムードの時間が続く(下の動画参照)。
20バーツで椅子を借りて、写真や動画が撮りやすい位置に場所を取り、写真の試し撮りなどをして時間を過ごす。どれくらいの人が集まってきているのか、ふと後ろを振り返って確かめると、その中にバンコクに住んでいた頃コンサートでよく一緒になったタイの友人がいた。彼とは僕が日本に帰って来てからは、ほとんどコンサート会場で顔を合わせる事が無かったので、5~6年ぶりになる。
ステージではラムトゥーイがいったん終わり、伝統的なモーラム・タイムになった。最近は伝統モーラムをプログラムに入れる楽団が少なくなっているので、こういうのを観られるのは貴重だ。
そうこうしている内に20時半を過ぎ、いよいよメインのプログラムが始まった。ダンサブルな音楽と共に、50人近くのダンサーが一気にステージに登場してくる。
創立して間もない楽団は、往々にしてダンサーが少なかったり、セットやバンドが小規模だったりする事があるが、この楽団はまだ2年目なのに、キャリアのある楽団に引けを取らないくらい、しっかりとしたクオリティーを持っている事が、オープニングを観ただけでも伝わってきた。
モーラム楽団にとって大事なのは、演出やプログラムをしっかり組み立てているかはもちろんだが、どれだけ魅力的な歌手や実力があるスタッフを揃えられるかという事も重要である。特にまだ出来たばかりの楽団は、その辺が最も苦労するところかもしれない。
その点から見ても、このサーン・ラオ・バントゥンシンは若いながらもかなり良い線行ってると感じた。ただ、残念だと思ったのは女性歌手のラインナップだ。僕が見る限り、パッと目を引く歌手がこの時はいなかった。それはルックスだけでなく、歌の実力も含めて。その反面、男性歌手は結構充実していた。それを証明するかのように、会場には多くの女性ファンの姿が見られた。
気が付けば、会場は身動きを取るのが難しいほどの超満員になっていた。モーチットはそれほど大きくないという事もあるが、モーラムは本当に沢山の人が集まるので、21~22時には大体どの楽団もすし詰め状態になる。また、モーチットは利便性が良い事もあって、人が集まりやすい傾向がある。
コンサートが中盤に差し掛かった頃、この日のゲストで、かつてシラピンプータイ(ศิลปินภูไท)やサーオノーイ・ペット・バーンペーン(สาวน้อยเพชรบ้านแพง)で活動していたゴイ・チャーリニー(ก้อย ชาลินี)が登場。知名度と人気がある歌手の登場で、客席はさらに沸き立った。
その人気ぶりはファン対応でほとんど立って歌っていられないほどだった。いまはソロで活動している彼女に会えて、観客の人たちもよほどうれしかったのだろう。
僕もゴイの事は、シラピンプータイの主要歌手として舞台に立っていた頃から知っているから、かれこれ6年ほどになる。シラピンプータイが似合っていた彼女だったから、サーオノーイに移籍したというニュースを聞いた時には本当にビックリした。
そのサーオノーイも今は離れたという事で、これからどうするのか心配していたのだが、こうしてゴイの元気な姿を観る事ができて、一安心した。最近はソロの仕事も増えてきているようで、彼女のこれからの活躍がますます楽しみだ。
そして終盤には、この楽団のマスターであるブート・チャッカパンが登場した。ぱっと見、若そうな印象のブートだけど、調べてみたらまだ28歳と本当に若かった。
これだけの若さで独り立ちして楽団を作るという事は、よほどの確信と自信が無ければ出来ない。実際、ラビアップ時代からのファンであろう人たちがしっかり付いてきてくれているようだし、若いだけでなくルックスも良いし、実力もあるから、これからますますファンが増えていくことだろう。
それと、これが非常に大事なのだが、経営者としてしっかり楽団を管理していけるかという事だが、その辺も知り合いのスタッフから話を聞くかぎり問題なさそうである。
栄枯盛衰が激しいモーラム業界であるし、楽団を維持していくには様々な障壁があるだろうが、何とか乗り越えて、長く続いてほしい楽団である。
最後に、今回の記事のタイトルに「モーチットでモーラムを観られるのは最後になるかも」と付けた理由だが、このコンサートを観た後の12月4日に、チャトチャック地区を管轄する事務局から、下の写真にある警告が発せられた。
内容を簡単に要約すると、「チャトチャック・バスターミナルに隣接する広場で、許可を得ずに大きな音を出す行為は禁止である。法律に違反した場合は懲役6か月以下、5万バーツの罰金、またはその両方が科される。」という事が書かれている。
この警告をFacebookで観た時は、「え~、もうモーチットでモーラム出来ないの?」という気持ちが湧き上がってくる前に、「許可得てなかったんか~い!」とツッコミたくなった。
モーチットがコンサートの会場として使われるようになったのは、そんなに昔ではない。僕の記憶だと2017年頃からだと思うから、まだ6年ほどといった所だ。
モーチットの周りは、東側が大きな公園だし西側はバーンスー駅だから、住宅はほとんど無いように思うが、いかんせんタイでのコンサートは大音量だから、その先に住んでいる人たちの所まで届いていたのかもしれない。それで苦情が来たのだろう。
ただ、「たった6年しか・・・」と思うよりも、「よく6年もの長い間もったものだ」と考える方が妥当かもしれない。タイではよくアパートの隣とかでコンサートをやっているが、我々の感覚からしたら考えられない事だ。
バンコクでは年々コンサートが出来る場所が少なくなっている。時間も25時までという制限があるし、音楽を目当てにタイを訪れている身としてはとても残念だ。
とは言え、モーチットも許可を得れば今後もコンサートなどに使えるのかもしれない。年明け2024年1月以降にもモーチットでコンサートをやる予定を発表している楽団がいくつかあるが、それはこの警告が発表される前に出されたものなのか、許可を得て予定を立てたものなのかはまだ分からない。
今後の動向を見守る事にしよう。