癒えない傷は無いだろう
傷は癒えると思っている。
癒えるのにかかる時間はまちまちだとしても。
このことを考えたきっかけは、違う考え方の人に出会ったからだ。
経緯
そもそもは、たまたま居合わせた人(Aさんとする)と好きな本の話になり、私は原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』を持ち出した。
以前にも書いたことがあるが、私がその本の中で1番好きなセリフがある。
困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。
本当は自分で読んでほしかったが、どうしてもそのセリフが今知りたい、と言われたので仕方なくその場でAさんへ教えた。
そしてその教えたセリフに対する反応が、「この言葉刺さりますか」というニュアンスのものだった。
Aさんの主張
まず、好きなセリフとして紹介したものに対する反応がそれかい、とは思ったが、違う人間なので仕方ない。
Aさんの主張を聞いてみた。
「癒えない傷に耐えきれなくなった人が、命を絶ったりするんじゃないですか」
確かに、そういう人はいると思う。
ただそれは、治る過程を待ちきれなかった人だと思うのだ。
その人だって、生きていれば、きっといつかは回復したと思う。
完全にとはいかなくても、例え何年かかっても。
人間とは、そういう風にできていると思う。
潰れないために、生きていくために。
そうやって治る過程に、時間がかかる人も、時間がかかる傷もある。
ただ、渦中にいるときは気が付きにくい。
だから、一生癒えないような気持ちになるし、癒えなかった未来を想像して、余計に苦しくなったりする。
信じるということ
そこで、原田さんのセリフだ。
今がどんなに大変でも、傷が癒える未来が来るんだよ、ということを気付かせてくれる優しさがあると思った。
そして、その人の傷が癒えることを信じている、という信頼も感じた。
だからこのセリフが好きなんだ、と、このとき思い至った。
これから先、もしものすごく大変なことが起こっても、このセリフのことを思い出したい。
自分のことを信じてみたい。