ばっくれ
出勤すると、隣の部署の人が1人、無断欠勤らしかった。
昨日、上司に長いこと叱られていたところを見かけた人だった。話を聞くと、かなり落ち込んでいたらしい。
隣の部署の人は、
「ばっくれかねえ。嫌になってしまったなら仕方ないよね」
とのことだった。そんなもんなんだ。
でも寝坊かもしれなくて、寝坊歴のある人だからわからないねって。
そうであってほしい。切実に。
同じような流れで、出社してこないと思ったら、未遂をしていた人と、本当に帰らぬ人になってしまった人を知っている。
知っているから、心配になった。
どうか寝坊であってほしい。
事故でも無ければいい。
それと同時に、現場の危機感の無さにも肩透かしをくらったような気持ちになった。
そういうことがあるってことを、思い付かないのだろうか。
まさかね、と思っているのだろうか。
私が特殊で心配性なのかもしれないけれど、意外と周りの人はみんな普通で(心の中では心配しているのかもしれないが)、普通の日常が続いていて、変な感じがした。
それでも結局、私も通常通りに仕事をした。
連絡先も知らないその人のことを、とやかく言える立場ではない。
仕事をしながら、その人のことを考えた。
仮に、ばっくれだとしよう。
普通なら怒られるかもしれない。
社会人としての責任感が足りないだとか、周りの迷惑をうんぬんかんぬんとか。
でももしかしたら、ばっくれることができたということは、自分の心かストレスの限界値を、無意識にでも自分でわかったということなんじゃないだろうか。
それなら、それはとても必要なスキルで、むしろ「自分を守れてえらい」と、褒められても良いくらいなんじゃないかと思った。
明日会えるかわからないけれど、本当にばっくれだったら、心の中でそっと褒めたたえることにしよう。
でもやっぱり、ただの寝坊であってほしい。
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