女神の前髪 8 通り過ぎた瞬間
私にそんな力はありませんよ。
今の仕事で精いっぱいです。
私はその場で簡単にそれも軽く断ってしまいました。
幸運の女神が微笑んで、「あっ、そう!と言って通り過ぎた」瞬間だった。かも知れません。
あの工場長のもう一つの目的がこれ。
「機械を売ってみませんか」だったのかも知れません。
もう数年後であれば、冗談で出た言葉であってもそれに乗じたと思います。
私が社長になっていたら考えたかもしれません。
その時の私は現業の延長線までにしか関心がありませんでした。
入社2年目で数千万投資した新規プロジェクトで精いっぱいだったのです。
会社のオーナーとしての事業創造、その視点がありませんでした。
自分が本当にやりたい仕事、やりたい事業についても考えたことがありませんでした。
事業家の卵として器が小さかったのです。
今であれば、即断しないで数日猶予を貰ったと思います。
結局私の一番やりたい仕事は、機械のエンジニアリングだと、後でわかりました。
後年に独自の新会社を作ったくらいでしたから。