まなみ奥様ストーリー【1】
1:
「ふーっ、やっと終わった……」
出張先でのビジネスホテル。
自動車部品メーカーで長く勤め、最近では規模も少しずつ大きくなってきた。ここらで資格を取ってきてくれ、というのが社長の指示だった。
“プレス機械作業主任者”……持ってきた資料には、そう印字されている。
(いずれ取ってみようとは思っていた。これがあれば、転職も少しは有利になるか?)
すでに試験は終わった。ぼんやりと、そんなことを考える。
40歳になり、久城(くじょう)はなんとも言えない不安の中にあった。転職とは言ったが、実際はそれほどの意欲もない。今の環境にすごい不満があるわけでもない。
かつての同級生も今ではさまざまだ。順調に管理職をのぼっていく者もいれば、起業して忙しくする者もいる。その逆で、倒産や転職での失敗で明るいとは言えない人生を送る話も聞いた。
俺はいい方だ、なんて考え方も虚しくなるぐらい、のっぺりとした道筋が見えるようだった。
(ま、試験は終了。さてさて、出張ならコレだよな)
ばすん、とベッドに勢いよく寝転ぶ。スマホをいじり、目指すは風俗情報サイトだ。