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【代表インタビュー②】初めての事業立ち上げから楽天への事業売却に至るまで
こんにちは、ペイフォワードの森川です。
今回は当社代表の谷井が1997年に初めて起業した事業について詳しくインタビューをしていきます。
1997年に設立された合資会社デジタルネットワークサービスではどのようなサービスを展開していたのですか?
無料のメーリングリストサービスを提供していました。
メーリングリスト用のメールアドレスを僕らが発行、そのアドレスに自由にメンバーを追加して使うことができるというものです。
ビジネスモデルとしては広告収益です。メーリングリストとして配信するメールの先頭5行分を広告スペースとして確保し、広告枠を企業などに対して販売するというモデルですね。
広告枠としての価値を高めるためには、たくさんのユーザを獲得することが重要なので、初期は全く売上がないまま、とにかくユーザを増やすことに専念していきました。
2000年10月にこのメーリングリストサービス事業を楽天に売却をされていますが、その頃にはユーザ数はどの程度まで成長したのですか?
楽天とのM&Aが決まった頃のユーザ数は約70万人、売却が完了した頃には約100万人になっていました。
最終的には無料のメーリングリストサービスとしては業界トップクラスのサービスに成長させることができました。
なぜ無料のメーリングリストサービスを提供しようと考えたのですか?
メーリングリストサービスに最初に触れたのは、新卒で入社したNTTの社内です。
当時は企業がメールアドレスを持つことすら一般的ではなかった時代に、IT化が進んでいたNTTでは社内でメーリングリストを自由に作れる仕組みがあったので、会社の同期とのやり取りなどで活用していました。
でもNTTを辞めた後、友人同士のやり取りに使うためにメーリングリストサービスを探していたところ、メールプロバイダが提供する有料サービスしかないことを知りました。友人同士で使うとなると費用を誰が負担するのか、ということでユーザとして非常に不便さを感じました。
そこで無料でメーリングリストサービスを提供したら爆発的に広がるんじゃないか、と考えたのが最初のきっかけですね。
当時から広告収益のビジネスモデルは Webサービスにおいて、よく使われている手法だったのですか?
はい、当時は他に無料掲示板や無料のチャットサービス、無料のホームページ作成ツール等がありました。
当時の無料の掲示板サービスだとOTD BBS、チャットサービスだとゆめみ亭、無料のホームページ作成だとガイアックスが有名でしたね。
ちなみに僕の会社も含めて、当時盛り上がっていた無料の Webサービス系の会社は全部関西の企業でした。ガイアックスも本社は東京だけど、関西人が作っていたということで、なぜか4社なのに「関西無料御三家」とか呼ばれていました(笑)
この事業における成功要因は何だったのでしょうか?
大きく2つあります。
1つはメーリングリストというサービス自体が「バイラル性」があったこと、そしてもう1つは今も2社目に創業したシナジーマーケティングにも受け継がれている「101点のサービス」です。
メーリングリストの持つ「バイラル性」について詳しく教えて下さい。
メーリングリストは、1人が作るとそのグループの中に複数人のユーザを追加していくという仕組みになっています。
だからメーリングリストを作る最初の1人がどんどん新しいユーザを連れてきてくれる、というサービスの特性があるんですね。
そこに僕らが自由に活用できる広告枠が入っているので、広告契約が入っていないときは「あなたも無料でメーリングリストを作りませんか?」といった広告を入れることができます。
すると、無料で作れることを知った人が他のグループ、学校の部活や、会社の同期などのグループでメーリングリストを作ろうと動いてくれるので、どんどん新しいグループが生まれ、そこに新たなユーザを連れてきてくれるというのが「バイラル性」です。
調整さんとかも同じ特性を持っていますね。
当時の「101点のサービス」とはどのようなものだったのですか?
サービスを提供し始めた頃はそもそものインターネットのユーザ自体が少なく、約数百万人程度でした。
また当時のインターネットの世界での風潮としては、初心者に対して排他的でハードルの高いものになっていました。
例えば初心者の人が初歩的な内容を掲示板で質問すると、「それくらい自分で調べろ」と返されてしまうような場所です。
でもインターネットはこれから間違いなく普及して全国民が使うものになるだろう、という仮説を持っていました。
だとすると、まだインターネットに触れていない約1億人がこれからインターネットユーザになり、全員が「インターネット初心者」というフェーズを通ります。
そんな「インターネット初心者」が排他的な対応をされることなく、ユーザフレンドリーなサポートを提供すると、必ずファンになってくれるだろうと考え、「101点のサービス」を徹底するという戦略を取りました。
企業としても手厚いサービスを提供しているところは少ないなかで、当社のサービスは24時間サポートでメーリングリストだけでなく Excel や Word の使い方まで教える、といったサポートを続けていったところ、徐々にファンが増えて、口コミやまとめサイトなどで評判となり、ユーザが増えるようになりました。
会社の設立から事業売却までに2度の出資を受けたとのことですが、どのようなタイミングで出資を受けたのですか?
最初に出資を受けたのはユーザ数が20万人を超えた頃です。
創業メンバーの3人とそのメンバーの妹含め合計4人で2LDKのマンションでサービスを運営していた頃、日本最大のベンチャーキャピタル企業であるジャフコさんから電話を受けて出資の提案をいただき、1億3,200万円を出資いただくことが決まりました。
その出資金で2000年1月に株式会社インフォキャストを設立、オフィスを構えて、とにかくユーザ数を増やしていくために広告宣伝に一気に投資しました。広告宣伝への投資は、サービスのLTVとユーザの獲得コストが見合う状態にしなければならないので、ユーザ獲得コストを意識しながら、ひたすら資金を投下していきました。
それが1度目に出資を受けた時の話です。
2度目の出資を受けたのはいつですか?
同年の4月です。楽天をはじめとした複数社に2.4億円を出資いただきました。きっかけとしては、その頃のサービス展開としては無料のメーリングサービス提供という仕組みを企業向けに提供するというOEMモデルを開始し、楽天や他企業に提案しに行ったことから出資の話をいただくことになりました。
同年2000年10月に事業売却をされていますが、どのようなプロセスで判断に至ったのですか?
当時の状況としてはインターネットバブルが崩壊し、1,300万人ものユーザを抱えるアメリカの競合企業が、IPOに3回チャレンジするも結局IPOできずにヤフーに買収されるという出来事がありました。
ヤフーは日本にも進出しており、自分達のビジネスで今後拡大を目指すには分が悪いと判断し、役員会議で話し合った結果、事業売却という判断に至ったという背景です。
そしてその後すぐにシナジーマーケティングの前身となるインデックスデジタル株式会社を創業しました。
続きも気になりますが…。シナジーマーケティング創業からヤフーとのM&Aに至るまでの話については、次の記事に書いていきます。
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