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J.S.Bach/パルティータ第6番 ホ短調 BWV830より〈トッカータ〉
1725〜31年、J.S.バッハが46歳になる時までおよそ6年にわたって推敲を重ねながら書かれた。
パルティータとは変奏曲の一種であり、舞曲を中心にまとめられた組曲のことを指す。
その中で 各小曲は全て同じ調で書かれ、統一感が図られる。
バッハは鍵盤楽器のために6つのパルティータを書いた。それぞれキャラクターは異なるが、その全てに綿密な構成と展開が用意されており、非常に充実した内容を持つ。
第6番は強い芯と孤高さを感じさせる、シリアスでドラマチックな作品である。
その冒頭楽章、本日演奏する〈トッカータ〉は3つの部分から成る。
始まりは即興的で幻想的ながらも、精神の森、ある いはドイツの暗く大きな森へ、深く深く入り込んでいくようだ。
直後のフーガ部分からは長い思考 の旅が続き、その末に行き着く終結部分は冒頭よりも一層確信に満ちている。
この〈トッカータ〉だけでも、バッハの哲学と深淵の片鱗を感じていただけるのではないだろうか。
ここに続く舞曲楽章も、テイストを変えながら様々な表情を見せ、圧巻のラストを迎える。
皆様にも是非全曲を通して聴いていただきたい。
2021.11.7 第34回荻窪音楽祭/茨城音楽文化振興会コンサート「学生演奏家による室内楽の夕べ」より