365日のみじかいおはなし(43日目)
カバクマ
18時。
夕食前にコーヒーを飲もうと思った私はいつものカフェへ。中に入ると、店の様子がいつもとまるで違う。一面真っ白な壁に物1つなく、中央には目つきの鋭い白衣の男が立っているのだ。
「コンばんわ。ポマトってご存知ですか?」
ポテトとトマトをかけあわせた野菜のことだろうか。というかここはどこだろう。呆然と立ち尽くす私に男は話を続ける。
「ボクはね、ポマトの動物版を研究してるんです。この動物、なんだか分かりますか?」
男はいつの間にか、ツノの生えた大きなイヌのような動物を連れていた。
「イヌ・・・ですかね?」
「おしい、イヌーです」
「・・・イヌー?」
「イヌとヌーをかけあわせた動物です」
ヌーがどんな動物か知らないから、いまいちピンとこない。しかし、変な男に絡まれてしまっていることは分かる。
「では、別の動物を紹介しましょう。あれはウサギです」
男が右手で指し示したところにはウサギ・・・なのに羽を使って飛んでいる動物が。
「あの、なんで飛んでるんですか?」
「あぁ、これはね、ウサギとサギをかけあわせてるんです」
「サギ・・・あ、鳥の。なんかまぎらわしいですね」
「ですよね、名前はウッサギとかにしましょうか」
いや、どうでもいい。
「ウッサギとかにしましょうか」
繰り返す男を尻目に私は思った。
(早くここから出たい)
ドアを押して外に出ようとすると、男はあわてて私を止める。
「ちょっと待ってください、最後にもう1つだけ見てください」
振り返った私に男はニヤリと笑いかける。
「実はボク自身もかけあわせ動物なんでチュよ」
言われてみればこの男、目がつり上がっていて、、、
「キツネズミって言うんでチュ、人間のふりをしてたんでチュよ」
もう意味がわからない。強引にドアを押して店を出ると、後ろから男の声が追いかけるように響いてくる。
「最後にもう1匹だけ紹介しまチュ! こちらはカバクマ。3匹の動物をかけあわせていまチュ」
「うわぁーーーーーーーー」
もう何が何だかわからずぼくは叫び、振り向かずに走って逃げよう・・・と思ったところで視界は白くぼやけていく。
「すげー変な夢みたなぁ」
悪夢から目覚めた私は小さくつぶやき、ふぅとため息をつく。時計を見れば朝6時。夢の内容を思い出そうとしたが・・・全然覚えていない。
カバクマ。
そうだ、「カバクマ」って言葉と「3匹の動物」ってことだけは覚えてる。
えーっと、カバと、クマと・・・
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