365日のみじかいおはなし（118日目）

別れの一言

13時。
大学の食堂で彼氏とランチをしていると、彼は突然切り出した。

「ごめん、ずっと黙ってたんだけど・・・アメリカに行く」

絵の勉強のために、ニューヨークへ行くというのだ。入学した頃から「留学したい」が口癖だった彼。いつかこんな日が来るんじゃないかって思ってた。

（別れることになるのかな・・・）

私は不安をまぎらわせるために、わざと明るく言った。

「そっか、いついくの？ってか、アメリカ人と日本人って全然性格違うよね、なんでだろう？」

今後の話から逃げたくて、わざと話題を変えたのだ。

「教育の差」

彼は無表情にそう答えると、黙ってまたパスタを口へ運ぶ。結局、気まずい雰囲気のままランチを食べ終え、私はゼミの教室へ。午後の授業がない彼は「じゃあな」と言って校門から去って行った。

その日の夕方から、彼と連絡が取れなくなった。電話も繋がらない。夜、耐えきれなくなった私は、彼の友人にLINEを送る。すると驚きの答えが返ってくる。

「えっ！聞いてないの！あいつ、さっき飛行機で行っちゃったよ！」

・・・

・・・

・・・！！

そこで私は気づいたのだ。

彼がランチのときに言った言葉は、

「教育の差」

ではないことを。

そして、それが別れの言葉だったことを。

「今日行くのさ」