365日のみじかいおはなし(7日目)
タブーな話
ここはオフィス街の隅にある小さな居酒屋。
仕事仲間のFとKが酒を飲んでいる。
グチでひとしきり盛り上がり話のネタも尽きたころ、酔いの回ったKが禁断の話題に足を踏み入れた。政治批判だ。
「政府の文書偽造問題、どう思う? オレあれはマズいと思うんだよね」
どんなに仲が良くても、政治や宗教の話題は踏み入れないのがルール。そう、これはタブーな話。その点に関してKはわりとルーズであり、これまで何人かの友人が彼から遠ざかっていた。
しかしここでささやかな幸運。
Fも政府に不満を持っていたのだ。
「オレもあれは国民をなめてると思うよ」
2人はふたたび盛り上がり、グラスを手にとりあえず乾杯。
Kはグビグビと上機嫌に言った。
「だよな。隠そうとしてるのがバレバレだよ」
Fも同調する。
「今の政府はそういうところがダメなんだよなぁ」
こうして2人は政治を肴に楽しく酔う・・・はずだった。
しかし次の瞬間、Fは一気に酔いが醒めることになる。
Kがこう言ったのだ。
「今の政府はみんな人がいいからウソが下手。もっとうまく隠さないとダメだよな」
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