大河ドラマ「武田信玄」見終わった

タイトルの通り、大河ドラマ「武田信玄」を見終わりました。

33年前、1988年の作品です。昭和最後の年でしょうか。
甲斐国、今で言う山梨県を拠点に絶大な力を誇り、甲斐の虎とも呼ばれた戦国大名、武田信玄。特に有名なのが越後の龍と呼ばれた上杉謙信と5回も戦った川中島の戦いでしょうか。この人物を若かりし頃の中井貴一さんが演じ、なんと平均視聴率が歴代大河ドラマナンバーワンを記録。前年の渡辺謙さん主演の独眼竜政宗に続き大ヒットを飾りました。

素晴らしい作品でした。とても面白かった。
甲斐の国主、武田信虎の嫡男に生まれ、家督を継ぎ、如何に大きな国に成長していったのかと同時に、家族とのすれ違い、それに伴う悲劇を描いた見応えのある話でした。

この作品の凄いところは主人公の武田信玄の魅せ方。彼の有能な面と無能な面をしっかりと描写している所だと思います。
特に、無能な面。これを最序盤から表現ないし匂わせているところ。それが徐々に回りに回っていき、中盤、終盤の悲劇へと繋がっていくところです。

まず、主人公である信玄、いや、晴信ですが、最序盤から父である武田信虎と仲が悪い、うまくいっていない所が描写されます。互いが互いを憎しみあっている。父は子の不甲斐なさ、情けなさを小心者と罵り、子は父の横暴さ、理不尽な所を憎む。血の繋がっている親子ゆえ生じる愛憎が表現されております。最終的には3話にて父を隣国の駿河(現在の静岡県)に追放し、国主の座に着くことになります。
更に、晴信の正妻である三条の方。こちらとも最初からすれ違いが生じ、噛み合わなさが表れています。八重という化物じみた架空の人物の存在もあると思いますが。
父親と妻と、いきなり身内との不和が描かれ、これはもしかすると家族関係で苦労するんだろうな。という印象を与えられます。
その印象の通り、じわじわと侵食していき、中盤、後半の悲劇に繋がっていく、取り返しのつかないところまで広がっていく描写が、悲しいけれど見事でもあり、非常に素晴らしい物語の展開の仕方でした。
特に、晴信の嫡男、義信との対立は正にそれを象徴したものであり、序盤から仕込まれた毒が回りに回り取り返しのつかない事に繋がるのを上手く表現しております。

晴信の嫡男、武田義信を演じる若かりし頃の堤真一さん。今年の大河ドラマ「青天を衝け」の平岡さんでもある。

大河ドラマではよく味方陣営、特に主人公は長所や有能な面が前面に押し出され、短所や無能な面、短所や悪虐非道な所がぼかされたりカットされたりするものです。
しかし本作品では短所、無能な面も描写し、それが後々に大きな禍根を生み、取り返しのつかないことになる所まで描写したこと。ここに非常に人間味のあるドラマを感じました。

もちろん、有能な所もあります。内政、戦術、国作りについては非常に優秀な所を発揮します。
ですが、前述した短所により、後々の武田家の滅亡に繋がったのだろうと思わせるに十分な説得力を生んだのだと思います。
晩年に至っては、晴信無しでは天下は取れない、立ち行かない事が家臣団の態度を見るからに明らかでした。義信が生きており、かつうまくやれれば少しは変わったのでしょうか。歴史にifはありませんが…
あくまでこのドラマを見るに、晴信のおかげで甲斐国、武田家は大きな力を得たが、晴信が亡くなったと同時に滅亡に繋がるんだろうなと、そう思わせるに充分な説得力を持つ描写でした。

最後、晴信が追放した父信虎が最後に病の床についた晴信を見舞いに行き、叱咤するシーンは感慨深いものがありました。追放された父より追放した子の方が先に寿命で亡くなる。何の因果なんだろうか。

平幹二朗さん演じる武田信虎。
「風林火山」を見たときの武田信虎は残虐非道な人物として描写されていましたが、本作での武田信虎は人間味のある人物として描写されていました。


最後に、この作品のテーマは、甲斐国が如何に強く大きくなっていったのかを描写すると同時に、家族、特に父と子の関係がもう一つのテーマだったと、そう思います。
兎にも角にも、本作品も非常に素晴らしい作品でした。
昔の作品でも面白いものは時代を越えて面白いんだなあと改めて思いました。

さて、次は何を見ようか。

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