手術は常に最良の選択ではない。

当店では、様々な理由で流通に乗れなかった子を「トライアウト犬」と名付けて里親さんを募集しております。

今回、偽関節と言って、左前足が骨折したままくっつかないで固まってしまった為に本来曲がるはずのない箇所、手首と肘の中間がぶらぶらになってしまったポメラニアンを引き取りました。

最初に見たときは、ありえない方向に手が曲がっているので流石にエッ!!と驚きましたが、見ていると痛がっている様子はなく、折れたままになってしまった前足を理解し、自分の体とうまく付き合っている様子でした。
その時の様子がこちらです↓

そして、里親を募集する立場に立って考えた結果、この状態のまま募集をする選択肢ももちろんあったのですが、骨が既に固まっているので本人は痛くないにしても見た目がショッキングな為、流石にその状態のまま飼い続けてくれる里親さんを見つけるのが難しそうだなと判断したのと、仮にこの状態のままで里親さんが見つかったとしても、飼い主として、親心として、手術をして元の真っ直ぐな状態に戻してあげる方法がないかと必ず思うはずだと思い、それならばと当店でまずは手術をしてあげた後で里親さんを募集しようと決めました。

そんな流れで手術をすることになりました。
レントゲンを撮って、切開をしたところ、既に折れてからかなりの日数が経っていたため、折れた部分の骨が骨瘤の状態になっていたり、所々先が割れた状態になっていたため、プレートを入れたり、骨の髄にボルトを通す事が難しい事が判明したため、このままぶらぶらの状態で生活を続けること等を考え、僕自身で切断をしてもらう決断をしました。

手術を無事に終え、店に帰って麻酔から覚めたポメラニアンをいつものケージに入れてしばらく様子を見ていたのですが、朝まであった足がなくなっているせいで、最初はよたつき、戸惑っている様子でした。バランスを取るのがなれていないので、ご飯を食べる時も食べづらそうに見えました。ケージの中を、スキップを覚えたての子供のような、それでも変わってしまった体の動かし方に慣れるためにウロウロしながらたまにチラッと目があう度に、なにか訴えられているような気がしました。

「ぶらぶらの状態でも、足があったほうがよかったな」
「手先や指から伝わる感触が無くなっちゃって不便になっちゃったよ」
「なんで勝手に切っちゃったの?」

もちろんこれは本人が思っていることではなく、人間が勝手に想像で思っているセリフではありますが、この結果をこの子は望んでいたんだろうか?
手術のリスクとして、切断の可能性もあると本人に伝えらることが出来たなら、この子は手術をOKしたのだろうか?と色々と考えてしまいました。

手術後の様子がこちらです↓

近年、ペット保険が普及し、飼い主の医療負担が下がる分、動物病院では手術をすすめるケースも増えてきていると思います。
もちろん手術をすることで、比較はできませんが延命につながったり、痛みを取り除いたり、QOLが上がったりするケースも沢山ありますが、一番の問題は、当たり前のことですが、手術をすることで失うものやリスクについて「本人」の了解、納得が取れないことだなと実感、というか痛感しました。

今回は腕の切断の手術でしたが、それはあくまで一例であって、癌の場合は腫瘍の切除手術をしてさらに抗がん剤の治療をすることもあります。関節が弱いときにはプレートを入れる手術もあり、心臓に雑音がある場合は心臓の手術、門脈シャントの場合はバイパス手術、、、etc
そのそれぞれに、当然のことながらリスクがあります。失うものがあります。そして、それを実感できるのは本人だけです。

何を伝えたいかって言えば、手術を含めた治療には何かしらのリスクはつきものです。そして、手術をする、しないを決めるのは動物病院の先生でもなければ手術を受ける本人でもなく、飼い主の決断にかかっています。手術をするとどんないいことがあるのか、どんなリスクが有るのか、そしてあくまで想像の範囲になってしまいますが、リスクが降り掛かってしまったとき、本人はどう思うだろうか?ということまで考えて決断すると、手術をするかしないかで迷っている飼い主さんはすんなり答えが出る事が多くなるんじゃないかなと思います。手術をすること(≒お金をかけること)が常にベストでもなければ、常に正義でもなく、常にペットにとって良い結果を生むわけではないという事を痛感しました。







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