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決して«ランガルドゥ»じゃない『ベルナデット』最高でした。

こんにちは。あるいはこんばんは。
おしゃま図書です。
ライフハックとして、なるべく試写会情報をゲットしたら応募するようにしているのですが、今回、大好きなトリコロル・パリのサイトで、『ベルナデット』の試写会プレゼントをやっていると知って応募したのです。

そして、試写会ゲット!
もう! 本当に! トリコロル・パリさん大好き!!! 昨日、見た帰りに早速「見たよ!」と投稿しましたが。
トークショーあるとは書いてあったけど、小柳帝さんのトークでした(その昔、少しだけ中目黒でROVAに通ってたことあり)。

あまり映画のネタバレにならないように、「アリアケパンチ」的に興味深かったところなどについて、少しあげていきたいと思います。



ベルナデットはこんな話

【あらすじ】
ベルナデット・シラクは、夫ジャック・シラクを大統領にするため、常に影で働いてきた。ようやく大統領府のエリゼ宮に到着し、自分の働きに見合う場所を得られると思っていたが、夫やその側近、そして夫の広報アシスタントを務める娘からも「時代遅れ」「メディアに向いていない」と突き放されてしまう。だが、このままでは終われない。参謀の“ミッケー”ことベルナール・ニケと共に、「メディアの最重要人物になる」という、華麗にして唯一無二の“復讐計画”をスタートさせる!

公式サイトより

というわけで、1995年、2002年の2期10年大統領を務めたシラクさんの奥さんのお話。フランスではとても人気があったらしいけど、日本びいきのシラク大統領のことは知っていても、ベルナデットさんのことは正直、知りませんでした。
貴族出身で、妻は夫をたてて一歩後ろに、という、いまのフランスからは考えられない超父権主義な時代の教育を受けたベルナデットが、娘世代から「時代遅れ」と言われるのも致し方ないのかもしれませんが、そこで諦めるのではなく、頑張ったんですよね。
「これは事実を自由に脚色したお話」と前置きしているから、見る側も、ある程度エンタメとして楽しむ心構えができましたし。面白おかしくしてるところもあるでしょうけど、現代のジェンダー感覚でいうと、女癖の悪い亭主関白なシラク大統領はドン引き要素満載でしたが、ほんとに、もう、めちゃ面白かった。フランスの政治の歴史とか、少し知識を入れてたほうが、断然面白みが増しますね。(観てから後で復習しても良いかもしれませんが)


ランガルドゥ(Ringarde)

この言葉、きっと『エミリー、パリへ行く』を観ているならピンとくるはず(観てない人にはゴメンナサイ)。そう、ピエール・カドーがエミリーのバッグに付いていたチャームをみて言った台詞です(後にそれがピエール・カドーのブランディングにつながっていくのですが)。吹き替え版ではこんなやりとりに。
エミリー「ランガルドゥってどういう意味?」
ジュリアン(エミリーの同僚)「意味は野暮。野暮なビッチって言われたの」
ちなみにジュリアンの台詞を元の英語版でみると、「It means "basic." He called you a basic bitch.」となっていて、「ビッチ」はここからきたのね、と思いましたが、フランス語版では 「Ça veut dire "médiocre". Il t'a traitée de provinciale.」(ダサイってこと。あんたのこと田舎者だって呼んでたわ)となってました。言葉が違うと、また雰囲気も変わりますね。どっちにしても、「ランガルドゥ」がいい意味では使われないというのはよくわかりました。

ベルナデットの話に戻りますね。
夫に無視されるのはもうたくさんと、自分を変えようとするベルナデットが、イメージ戦略担当のミッケー(ドゥニ・ボタリデス)と、まずは己を知り、対策を立てることにしたわけですが。そこで、大統領官邸で働く若者にリサーチし、手書きでまとめたグラフを見せるミッケーがよい。
そして、まずみんながベルナデットに抱く印象に「ランガルドゥ」という意見が多かったと言われるわけ。映画では「時代遅れ」と訳していました。これ、聞き取れたとき、すぐに『エミリー、パリへ行く』が思い浮かび、クスッとしました。古風な夫に尽くす貞淑な妻のイメージをうまいこと訳したんだなぁと勉強になりました。


バーバパパ(Barbapapa)

一方、シラク大統領の広報アシスタントをしている娘のクロード(ちょっと声がシャルロット・ゲンスブールに似てる気がした)が、ベルナデットの着ている服を観て、字幕では「これって綿菓子の色?」って訳されていたのですが。あれ、日本でもおなじみの絵本やアニメの「バーバパパ」と同じピンクだからなんじゃないかな、と個人的には思ったので、私ならそのまま「“バーバパパ”の色」ってするかな、とか思いました。逆に、バーバパパが日本で知られていなかったら、他の訳し方があるのかもしれない。よく、Google翻訳があれば、語学なんて勉強しなくてもいいじゃんという意見もありますが、私はそうは思いません。その土地だからの表現を同じ意味のニュアンスで伝えるっていう芸当は、AIだけでは不十分で、人が訳すことはなくならないと思っています。


クラブ・ドロテ(Club Dorothée)

ベルナデットが自身の慈善活動を、若者に人気の有名人に協力してもらうことで広報活動しようと画策しているシーン。いろんな人があがるんですね。人気ボーイズバンドの2BE3にオファーしようとするも、「残念ながら、彼らは左派なんで…」と、クラブドロテの番組に出ているLes Musclésを勧められるも…結局、柔道家のダヴィド・ドゥイエにした、という話。
クラブドロテは日本アニメを大量に放送していたフランスの子供たちに人気だった番組で、なかには歌のコーナーなんかもあって、Les Musclésも人気があったらしいです。

同じ時代にTahiti 80とかダフト・パンクがいたって、嘘でしょ?って思うくらい、もっしゃりしてます。1990年代って、まだクラブドロテの人気が高かった時代なので、アリアケパンチ的にはクスリとするネタでした。
ぜひ、フランスで日本のアニメがなんで人気なのか興味ある方は、アリアケパンチ1号をご覧くださいね😊 

ちょっと話がそれちゃってすみません。
とにかく、「自由な脚色」が売りのこの映画ですが、フランスのHuffPostでもどこが本当でどこが嘘か、みたいな記事が出てました。2BE3のくだりなんかは、面白く脚色した部分のようですが、柔道家のダヴィド・ドゥイエはホントの話。当時の画像も残っていました。


男の皮(Peau d'Homme)

公式サイトで、この映画を作ったレア・ドムナック監督は、これが長編第一作と書いてあってビックリ! まぁ、ドヌーヴくらいの大御所になると、もう、脚本を気に入れば出演するって感じなんでしょうね。資金力のある映画のときはしっかりもらいそう。あくまで私の個人的な想像ですけど。
やはりカリスマ感、ハンパないもんね。どんどんフランス映画が力を持っていた頃の俳優さんが亡くなっていくじゃない? アラン・ドロンも、ジャン=ポール・ベルモンドも、ジャンヌ・モローも…。そんななか、今もなお、現役で活躍するカトリーヌ・ドヌーヴって、ホントにステキ。
そして、この監督レア・ドムナックさんがね。いま日本でクラファンやってるバンド・デシネ『男の皮(Peau d'Homme)』の映画化を企画していると書いてあって、それも超気になる!と思ったの。

バンド・デシネはいつかアリアケパンチでもやりたいなと思っているので、彼女の次回作も注目したいと思います。


そして何よりご本人が、ご存命という事実にビックリ!

自由な脚色、自由な演出がこの映画のキモですが、大体伝記映画って亡くなった後につくられるこいるのかと思いきや!!! ベルナデットってまだご存命なのですね…。カトリーヌ・ドヌーヴと並んで写ってる記事があって、ビックリしました。ということは、この映画で自由に脚色していることも、良しとしているということですよね。
「dans la peau de 〜」というフレーズ、そういえばシャルル・アズナブールの自伝ドラマのときにみてたじゃんね…。ここではベルナデット役のカトリーヌ・ドヌーヴって見出しですね。そうか。〇〇役の~という言い方って、「dans le rôle de〜」 しか思いつかなかったけど、これから日記を書くときに使ってみよう。このな«Public»って、なんだろ、向こうの『女性自身』みたいな雑誌かな?

また、マリ・クレールのサイトでは、バーバパパ色のスーツでプレミアに登場した写真が!

えっとね、91歳だから、バルドーの1個上ね。
めちゃお元気。(ちなみにシラク元大統領はもう亡くなってます)


監督のインタビュー音源もチェック!

ホントに、なんでも見つかる便利な世の中。監督レア・ドムナックのインタビュー音源がSpotifyで聴けるわー。

音源元のAlloCinéはフランスの映画公開情報をチェックする際によく見ているサイトなのですが(日本でいうところの「映画.com」みたいな感じ)、ここでインタビュー音源などがあること、今まで知りませんでした。トークショーのときに、小柳帝さんが、「監督がインタビューでフォレスト・ガンプに影響受けたと言ってた」みたいなことを話されていたのですが、ネタ元はこのインタビュー音源かな? と思いました。どうだろう?
それにしても。せっかく、日本にいながら、フランスの情報をフランス人と同じサイトを観てチェックすることができるというのに、私の情報収集力の低さよ! ちゃんとチェックしていたら、去年の段階でここまでの情報を把握できていたのかと思うと、反省しかないです。

日本公開は11月8日。
フランスが好きな方、女性の生き方を描いたお話に興味がある方におすすめです!


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