見出し画像

私という「外国人お荷物」が終わらない宴の「テント張り」文化に震えた週末

誕生日会の新しいカタチ

「お誕生日会」と聞いて、私は、ケーキを囲んで「ハッピーバースデー」を歌い、プレゼントを渡し、数時間でお開きになる、そんなイメージを抱いていました。特に子どもにとっての誕生日会がその象徴として思い浮かびます。大人が誕生日会を盛大に開くのは、芸能人やセレブだけのことだろうと私は思っていました。

しかし、フランス、特にブルターニュ地方の人々の生活様式を知ることで、その認識は見事に覆されました。


百歳のお祝い、二日間の宴

ある日、夫の大学時代からの友人夫婦の合同誕生日パーティーに招かれました。二人は五十歳でしたが、その誕生日を祝うために「百歳のお誕生日」というユニークなテーマを設定していました。

ノルマンディー地方から車で三時間の距離を移動し、ホスト夫妻の提案でその家に一泊することになり私は、フランス流のカジュアルなディナーや優雅な朝食を楽しみにしていましたが、実際のパーティーは私の予想を超えるものでした。

テントと宿泊、途切れないパーティー

午前11時、ちょっと早かったかなぁと思いながら到着すると、すでにシャンパンを手にした人々が談笑しており、パーティーは始まっていました。

その時点で、私は「外国人お荷物」としての旅が始まったことを感じました。フランス語がうまく話せない私は、笑顔と「ウィ(はい)」「ノン(いいえ)」を織り交ぜながら、その場に溶け込もうと必死でした。

パーティーは昼食、午後のゲーム、そして夕食と続く。

「日本の歌を歌って」と言われれば歌い、ブルトン民族舞踊に誘われて見様見真似で踊りました。

すべては「場の空気を読む」という日本人としての使命感から。

自分の足がもつれようと、リズムが取れまいと、とにかく「楽しそうに」するという技術を、この歳になってこの地に移住してから改めて磨きました。

夜になると、庭に次々とテントが設営されていきました。最初は子どもたちの遊び場かと思いましたが、実は泊まりのためのテントでした。

「あれは…?」と尋ねると、ホストは「みんな泊まっていくのよ」と言いました。この時点で、ブルターニュ流の「パーティーは途中で終わらせない」という独特の考え方に触れたのです。

そして何より衝撃だったのは、一度家に帰った人々が朝食を持参して戻ってきたことでした。

世代を超えた共遊の魅力

何かと大人と子供を分けるフランス文化を目の当たりにしましたが、ブルターニュ地方では、大人と子供が、ゲームや踊りでは世代を超えて一緒に楽しむのが当たり前です。

子どもたちは無邪気に走り回り、大人たちはその中で楽しみながら、自然にコミュニケーションを深めていきます。

この「世代を超えて共に遊ぶ」というスタイルは、ブルターニュの文化の大きな特徴であると強く感じました。

「人と過ごす時間」の価値

二日間、終わることなく続いたパーティーを終えて、私は「人と過ごす時間」の大切さを改めて実感しました。

スマートフォンをいじる人はほぼ皆無で、テレビも無く、ただワインを飲みながら、歌い、踊り、語り合う時間。

その中で感じることのできる深い喜びは、何物にも代えがたい貴重な体験でした。

でも、正直言って疲れた。

何時間にもわたる宴、次々と続くテント張り、そして朝食を持って再登場する人々の姿を見ながら、私は心の中で「これ、終わらないんじゃ…?」と思わずにはいられませんでした。

それでも、今となっては、この不思議なパーティーの流れの中で学んだ「人と過ごす時間」の価値を大切にしたいと思います。


いいなと思ったら応援しよう!