専業主夫の妻、仕事を辞める?
私は生粋の専業主夫。賃労働をしておらず、経済面においては100%妻に依存している。そんな経済的大黒柱である妻がフルタイム労働に冷めつつある。妻が無職になる日は近いかもしれない。
妻が働かなくなったら我が家の収入はゼロになる。普通は焦りや不安を感じるだろう。妻に対して「そんなこと言わずに働いてよ」とお願いするかもしれない。私も不安がないといえば嘘になるが、労働に冷めつつある妻を見てワクワクしている自分もいる。
労働に冷めつつある妻
元来、妻は働く意欲が強い人だった。ただ、ここ最近は仕事への熱が冷めつつある。理由はさまざまあるようだが、今回は深ぼらないでおく。詳細は妻が書いてくれるかも?
妻は会社員として保障が充実した立場にある。大事が起きない限りは倒産も解雇もないだろう。健康保険も厚生年金も労使折半だし、いま話題の「主婦年金」にも加入できる。有給休暇や退職金、家賃補助などの福利厚生も充実している。会社員からしたら「当たり前」かもしれないが、労働者の中ではかなり手厚い保障を受けている。
そんな妻が会社を辞めたら、生活は今よりも確実に不安定になるし、将来への不安も募る。それでも、どこかワクワクしてしまうのだ。
妻に「仕事を辞めたい」と言われたら?
妻に「仕事を辞めたい」と言われたら、私は「じゃあ辞めれば?」と答えるだろう。私には、妻が仕事を続けるか否かを決める権限はない。では、仮に妻が仕事を辞めたらどうするのか。
まず、我々は余命を生き抜くだけの金融資産を保有してはいない。いわゆるFIREはできない。一定の貯蓄はあるので数年間は生き延びられても、いずれ貯蓄が底を尽きて路頭に迷う。
妻の代わりに私が稼ぐのかといえば、そうとも限らない。必要に迫られれば私も働くだろうが、極力働きたくない。私は二度と会社員になりたくないので再就職する気はゼロだ。そもそも職歴がダメダメなので、労働者としての価値(いわゆる市場価値)は著しく低い。
現実的には、妻が好きなだけバイトをして、不足分があれば私もバイトをすることになりそうだ。妻はフルタイム労働に冷めつつあるが、何かしらの社会活動には参加していたいようだ。そして、私と違って労働全般を嫌っているわけでもない。フルタイム労働に特有の拘束感や責任感が嫌なだけで、労働それ自体は嫌ではないようだ。
そこまで不安にならない理由
FIREできるほどの金融資産もなければ、夫(私)の稼得能力も低い。そんな中、妻が会社を辞める機運が高まっている。にもかかわらず、私は多少の不安感とともに「この後どうなっちゃうんだろう…!」というワクワクを感じている。ここでは私が不安に思わない理由、そしてワクワクする理由を考えてみる。
生活コストが安い
我々は生活コストが安いので収入が減っても、なんとかなる。今は東京通勤圏に住んでいるが、仮に妻が会社を辞めてバイトをするのなら、もっと家賃が安いエリアに引っ越せる。過去の家計簿と各地の家賃相場をもとに試算した結果、年間140万円あれば最低限の暮らしを維持できる。これならバイトで十分稼げるし、労働の頻度も減らせる。
今がボーナスタイムだと思っている
正直、今の生活にはかなり余裕がある。妻の労働条件が良いことに加え、配偶者控除や主婦年金のような「いつなくなってもおかしくない優遇制度」の恩恵を受けている。「こんな暮らしが長く続くはずない」と思っているので、今より生活が苦しくなってもある程度は受け入れられる。これについては、夫婦ともに学生時代に貧乏生活をしていたことが大きいだろう。
妻も「こっち側」にきた感覚
私は労働が嫌いだし、周りに煽られて労働と消費を繰り返す生き方には否定的だ。「お金を使わなければ働かなくて済む」という原理原則に従い、日々節約している。大きな出費(マイホーム、マイカー、冠婚葬祭)をする気はないし、有名な節約術も一通り実践している。なんなら、穴が空いた服を平気で着続けているし、ヘアカットも家で済ませているし、真の意味でSDGsやDIYの精神を体現している。
一方の妻はかつて労働に意欲を燃やし、節約家ではあるもののファッションや美容にもこだわっていた。今でも妻の個人的な出費額は私の3倍ほどある。そんな妻が、私のような「労働嫌いのドケチ野郎」に近づくのかと思うと少し嬉しい。
人の変化を見るのが面白い
妻の考えが変化していく過程を隣で観察するのが楽しい。妻がフルタイム労働について悩み、考え、行動する姿を見ていると、すごく勉強になる。同じ悩みを抱えていても、その背景は人によって違うのだ。
「(フルタイム)労働が嫌だ」という悩みは同じでも、私と妻ではその理由が違う。そういうことを分析して、あーだこーだ話し合うのが面白い。話し合う過程で、それぞれが大事にしている価値観が露わになったり、過去の特定の経験と結びついたりする。これが最高に面白い。
あとがき
少し前にいろいろあって「私、仕事辞めるかも…」となっていたが、労働意欲は一時期より回復したように見える。とはいえ、以前よりは確実に冷めたようだ。定年まで働く気はなく、引き続き「いつまで会社員を続けるか」という問題と向き合っていくらしい。
妻は会社員になって5年目なのだが、世間的には5年で退職を検討するのは早い方だと思う。ただ、1年足らずで会社員ルートから外れた私からすると、5年も働き続けている妻は変態だと思っているし、いつ辞めても驚かない。私は「共同生活者」として家庭に参画する意識はあるが、仕事の件に関しては「観察者」として妻の思考や行動を追っていきたい。