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靴の作り方

革で作られたハードな靴がたくさん並ぶ不思議な店がある。
ハードボイルド、という言葉が似合う店。
噂によると靴の修理を行っているらしいが、看板にはなにもでておらず、ただただ格好いい。こんな店の店主は、きっと格好いい人なんだろう。

家の近所にあるのだが、通るたびに中をのぞいてしまう。

昨日は、その店のとなりの空き地のごみ置き場に、たくさんの革の切れ端が捨てられていた。茶色の、すべすべしてそうな革の切れ端。

格好いい店主が、夜な夜な、革から靴の型を丁寧に切り取っているところを想像する。
その前には、きっと革に型をあてて線をひいて。

革を縫い合わせて、穴をあけて…
と、ここまで想像して、私は全く靴の作り方を知らないことに気づいた。
インソールは入れるのかな?どんなものを?
あんなに硬い靴、どうやって縫い合わせているのかな?
穴は?靴ひもを通す穴はどうやってあけているんだろう。

遠い昔に、紐と厚紙だけで靴のデザインから模型作成までやった美術の授業を思い出した。本当の靴づくりはあれの何倍も手間と経験とセンスと原材料費がかかるんだろうな。

知らない、と言えばこの世はわからないことだらけで、例えばお金の稼ぎ方もよくわからない。わからないから、とりあえず手に職をつけて、「既存の稼ぎ方」のルートにのっかろうとしているけれど、本当にそんなんでいいのか?本当は何がやりたいんだ?と悩む日々だ。

悩む日々だといいつつ、本当はぐでぐでと、悩むことすら放棄している日々だ。格好悪くて涙が出そう。

あと2週間くらいしたら、また拘束されて詰め込まれて人間関係にもまれて空気の薄い日々がはじまるんだけれど、その事実にぶち当たるとふわ~っとした気持ちになってしまうので、とりあえず借りている本を読み始めて、冷凍庫にあるクッキー生地を焼いて、ためてしまったLINEも返そう。

クッキーが焼けたら、お茶を入れて、食べながら将来どんな生活がしたいか書き出そう。ルーズリーフに適当に書いてみよう。話はそれからだ。

あの店で売られているような革靴の似合う、ハードボイルドな格好もいつかはしてみたい。




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ぺちこ
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