入れるたび、消していく
もはや音楽は、聞き放題の時代だろう。
Apple musicやLINE MUSICのようなサービスや、spotifyのようなアプリが登場し、出先でも音楽は聞き放題になった。好きなアーティストの新譜も、ポチッとするだけですぐに聞くことができる。
昔から音楽を聴くのが好きで、登下校時には欠かせなかった。勉強のお供でもあった。音楽を聴くことで勉強に入り込みやすくなり、気づけば音楽も聞こえなくなるほど集中する。
昔は今のようなサービスはなかったから、私はずっとTSUTAYAでCDを借りたり、好きなCDは買ったりして、ウォークマンに入れて聴いてきた。
TSUTAYAでCDを厳選したり、パソコンで取り込みながら歌詞カードをじっくり読んだり、そしていれたての曲をウォークマンから何度も何度も繰り返して聴く瞬間は、思い出すと、あれが幸せだったんだなぁと思える類の記憶だ。
と、過去のことのように書いているが、実は今でもこのようにして音楽を聴いている。もちろんアプリなんかも使ってはいるけれど、本命はウォークマンだ。
人影もまばらになったTSUTAYAのCDコーナーに赴き、いそいそと数枚選んで帰る。家でパソコンに取り込み、ウォークマンに入れる。
が、ここで問題が発生しているのだ。本当に昔からこの方法で音楽を聴いているため、音楽データが膨大になっており、ウォークマンに入りきらない。
もちろん、もう聴かなくなった音楽は順次ウォークマンから消していっているのだけれど、それでも追いつかなくなってきて、最近では一つ新しいものを入れるたびに、一つ消さなければいけない状況になっている。
これは苦渋の選択で、いつも長時間かけて悩んでいる。今ではほとんど聴かなくても、一時期はずっと聴いていたせいで、曲を聴くとその当時の風景が思い出されるような曲さえある。そういった曲を「今は聴いてないから」と消してしまうのは、やはりしのびないところがある。
消す悲しみに耐えられないので、私も何かしらのストリーミングサービスに切り替えようかなぁと思ってはいるが、それはそれで、もうウォークマンには戻れなくなるような気がして、CDを手に取る頻度も極端に減ってしまう気がして、寂しいのだ。寂しい。
電子書籍が出た時も思ったけれど、愛着のあるものに別の新しい形態が出た時に、あまりうまく受け入れられない性格のようで、少し難儀だなぁと思っている。
本当は、どちらものいいとこ取りをできたり、未練なく新しい形態の利便性を堪能したりできれば一番良いのだろうけれど、ねぇ。