「叶えたいことは、あえて口に出す」。パーソナルジムトレーナー・小林佑太朗さんの【人となり】
こんにちは! ピーターです。
先日のnoteで言及した8年越しのインタビュー企画こと「HITOTONARI」、始動します。私の身近にいる人の「今」から、その根底にある資質や感性を深掘りしていきます。
第1回目は、東京都江戸川区でパーソナルジムを経営されている小林佑太朗さんにお話を伺いました。小林さんは25歳で開業され、2023年5月現在、私自身もトレーニングでお世話になっています。
高校生の頃には、スポーツトレーナーになることを決めていたという小林さん。トレーナーで経営者という現在の彼を形成するのは、どんな経験や価値観なのか――たっぷり語っていただきました。
この記事に登場する人
■話し手:小林佑太朗さん
1996年、東京都江戸川区生まれ。スポーツトレーナーを養成する専門学校卒業後、東京都内のパーソナルトレーニングジムにて2店舗のスタジオマネージャーを務める。フリーのトレーナーを経て、2021年4月に江戸川区瑞江にパーソナルジム「THE WORKS GYM」をオープン。2023年5月現在、葛西・一之江の店舗も経営中。
■聞き手:ピーター
ホットリンクのインハウスエディターで広報。万年運動不足だが、歩くこととスクワットは好き。
始まりは「自分ならもっとできるんじゃないか」
――いつもジムでお世話になってます! トレーニングの合間にお話しすることもありますが、改めて自己紹介をお願いできますか?
小林:
パーソナルジム『THE WORKS GYM』でトレーナーをしている小林です。25歳の時に江戸川区瑞江でスタジオをオープンし、翌年に葛西、今年5月に一之江店をオープンさせました。
――一之江店のオープン、おめでとうございます。たしか、学生時代は野球に打ち込んでいたんですよね。
小林:
はい。小中高とずっと野球をやっていました。
――そこからスポーツトレーナーの道を選んだのは、どんなきっかけがあったんですか?
小林:
高校生の時に、野球の練習だけでなく、筋力トレーニングにも取り組んだことが大きいですね。
その時に出会ったトレーナーさんが……ちょっと…。一人ひとりの部員と向き合っていない感じがして、微妙だったんです。
部員が100人くらい居たので難しい部分もあったとは思うんですが、「自分ならもっと部員たちに向き合ったトレーニングやコミュニケーションができるんじゃないか」と感じました。
もともとスポーツに関わる仕事がしたいとも考えていたので、高校3年生の夏頃にはトレーナーになろうと決めていました。
――憧れの先生が居て…ではなく、「自分の方がうまくできるかも」がきっかけだったんですね。高校卒業後は?
小林:
専門学校に行きました。進路の相談をしていたうちのおばあちゃんに「4年間大学に通うよりも、専門学校の2年間でぎゅっと学んで、すぐに働いた方が良い」と言ってもらい、スポーツトレーナーの専門学校を選びました。
――どんなことを学んだんですか?
小林:
トレーニングのやり方や、人体に詳しくなるための解剖学が中心でした。民間団体が発行する資格があって、それをとるための勉強もありました。ただ、早く現場に出たいって気持ちが強くて、学校の勉強よりもバイトの比重が高かったですね。フィットネスクラブのバイトを週5とか6ぐらいで入れていました。
――では、卒業後はすぐに独立に向けて動かれたのでしょうか。
小林:
いえ、19歳で入学して20歳で卒業した後、1年間だけパーソナルジムに在籍しました。独立したい気持ちは入学当初からあったんですが、計画的に経験を積むべきだという考えもあって。独立することを前提に、バイト先とは別のパーソナルジムに就職しました。
就職先はいわゆるベンチャー企業だったので、なんでも挑戦させてもらえました。入社直後に配属先の店長が辞めてしまったので、社長に「店長をやりたいです」と言ったら、やらせてくれたんです。
――えっ、新卒で、社会に出たばかりなのに…?
小林:
そうです。もともと社会に出たらがむしゃらに行こうと思っていたので、手だけはあげようと立候補したら、「じゃあやってみて」という話になって。
そこからの1年間は、本当に必死でした。店舗運営とスタッフのシフト調整やマネジメント、そして、お客様のトレーニングもやっていました。この時の経験は、自分でジムを運営する上でもすごく活きています。
――一番の学びはなんですか?
小林:
シフトの調整や店舗で実施するキャンペーンの設計、顧客管理や支払い方法の管理など、店舗運営に関することは何もかも学びでした。トレーニングの方法は学校で勉強してしていましたが、店舗運営に必要な知識やノウハウには全く触れてこなかったので、最初は本当に覚えることばかりでした。
「どうすれば、お客さんに喜んでもらえるか」にひたすら向き合う
――そうなると、2年・3年と続けても、学べることはたくさんありそうですが…?
小林:
1年で辞めた理由は、僕が店長になった店舗の売り上げが、前年の2倍を超えたからなんです。
――えっ!
小林:
これは本当に自信をもって言えます。1年で売り上げが2倍になったので、「もうこの会社で学べることはないな」と思い、独立しました。
――す、すごい…。ただ、パーソナルジムってマンツーマンですよね。売上を増やそうにも、対応できる人員もトレーニングの枠も決まっていると思うので、どうやって2倍にしたのか想像がつかないです。
小林:
実際に何をやったかと言うと、ジムのレイアウトを変えて、稼働できるスペースを増やしたのが大きかったですね。会社の予算的にも問題ない範囲だったので、僕から社長にお願いしました。その結果、新規の会員さんが増えて、既存のお客様の継続率もあがったんです。
継続率に関しては、他にも工夫したことがあって。
まず、トレーナーを担当制にしました。もともとはランダムというか、お客様の予約時間に空いているトレーナーをアサインしていました。担当制にしたことで、お客様とのコミュニケーションが密になり、より適切なアドバイスができるようになりました。その結果、信頼や安心感アップにつながりました。
あと、絵を描くのが上手なスタッフさんがいたので、ダイエットやトレーニング方法などをジムに設置したホワイトボードで発信する際に、可愛い絵を書いてもらったんです。そうしたら、お客様の目にも留まりやすくなって、ジムを利用する際の満足度があがったんです。
――なるほど。お客さんの満足度の変化は、どういう形で把握していたんですか?
小林:
トレーニング時のコミュニケーションや継続率の数字からも見えてきますが、お客様に自由に書いていただくノートを置いていたので、そこから知ることができました。書き込んでもらったコメントのうち、「これがよかった」「こうなると嬉しい」という声はどんどん採用したり、拡大していきました。
そのノートは、入会に来た方が書類を書くために使うテーブルに置いていたので、新規のお客様には「利用されている方の声」として見せていました。
――そのようなアイディアは、どうやって発想していたんですか? いろんなジムに足を運んだり、勉強や情報収集をされていたんでしょうか。
小林:
いえ、そういうことは特にしていなくて。ただひたすら「どうやればこのジムがよくなるか」を本当に毎日考えていました。
ジムを良くすることを考えていくと、「どうやってお客さんの満足度を上げられるか」「どうすれば、お客さんに喜んでもらえるか」に行き着きます。なので、お客様に満足してもらいたい気持ちがアイディアにつながったんだと思います。
もちろん、自分から「店長をやりたい」と言ったことへの責任感もありました。でも、「どうやって売上をあげるか」よりも、お客様の満足度をあげたい気持ちの方が大きかったです。
――その結果、売上2倍…! そして、独立という美しい流れが……
小林:
でも、この後挫折するんです。
――ここまでかなり順調なのに……?
小林:
はい。店長をやっていた会社を22歳で辞めた後、フリーランスになりました。フリーのトレーナーというのは、自分で箱(店舗)をもたずに、いろんなジムと業務委託契約をしてトレーニングを担当するんです。完全報酬型だったので、予約も自分でとる必要があったんですが、ぜんぜん予約が入らなくて。
今思えば、営業の仕方が良くなかった。集客にSNSを使ったりするんですが、新規のお客様が集まらないような方法をやっていました。フリーになってしばらくは、食べていくのに精一杯で「やばい…辞めようかな」と思ったぐらいです。
――フリーランスであることを辞めるというより、トレーナーそのものを?
小林:
そうです。今までが順調だった分、キツかったですね。不安に駆られて、転職も考えました。「フリーランスってやっぱり厳しい」「そもそもトレーナーに向いてないかもしれない」と悩む日々が3~4ヵ月は続きました。実は転職先から内定ももらっていたんです。
――転職を考えただけでなく、実際に活動していたんですね。
小林:
はい。内定先は、スポーツとは全然関係のない人材系の会社でした。その会社から、「本当にやるんだよね?」と最終確認の電話がかかってきた時に「いや、待て」と。「うまくいかないと言っても、まだ3ヵ月とか4ヵ月だよな。何言ってんだ」と、ハッとしました。
結局転職はせずに、フリーのトレーナーを続けることにしました。あのまま転職していたら、今の自分はなかったなって、本当に思いますね。
でも、諦めかけていたところから踏みとどまったので、そこからはちょっとずつ本を読んで知識を入れたり、研究をするようになって。その結果、お客さんも増え始めました。このときに、革命的なアイディアが出たんです。
――革命的。
小林:
そうです。ジムの入り口や掲示板のところに、トレーナー紹介みたいなポップがあったりしますよね。名前や簡単な自己紹介と、一言が書いてあるような。
それをお客さんの立場になって見たときに「これを見ても、トレーナーを選ぶ気にならないな」って感じたんです。なんでそう感じるのか考えたら、みんなパワーポイントで適当に作ってるんですよ。色使いが悪くて、そもそも文字が読めないものもあって。
僕がお世話になっていたジムもそういうポップでした。自分で作っていたんですが、デザイナーの方を探してかっこよくデザインしてもらい、それをジムに貼りました。すると、一気に予約が入るようになったんです。ここからすべての予約時間が埋まるようになりましたね。
――小林さんは以前にも、SNS広告やチラシでもデザインが大事だと言っていましたが、こんなところでもデザインの力を感じさせられるとは思わなかったです。
小林:
「デザインがちゃんとしている」というだけで差別化できるじゃないですか。そのポップに変えてから急に問い合わせが増えたので、良い意味で目立つことができたし、圧倒的に差別化できたんだと思います。
でも、満枠が続くようになったところで、コロナがきました。
「今日人と話したくないな」と思うことが本当にない
――えっ…タイミング……! ジムって、ものすごく影響を受けましたよね。
小林:
やばかったですね。予約で埋まっていたスケジュールが一気にゼロになりました。そもそもジム自体が営業できなくなりましたからね。フリーランスは固定給ではなく、稼働した分を報酬としてもらうので、コロナになったからと言って補填みたいなものもなくて。
2ヵ月くらいジムが閉まることになったので、その間にもたくさん勉強しました。 この先コロナがどうなっていくのか、あの時点ではわからなかったので、「自分の意思で店を開けられるようにしないといけない」って気持ちが芽生えて、そこから開業に向けて本格的に動き始めました。
2020年の4月ごろから開業準備を始めて、経営に必要な知識を学んで事業計画書を作って、翌年の1月に瑞江で物件を見つけました。契約や内装工事などを経て2022年4月に「THE WORKS GYM」をオープンさせました。
――そういう流れで生まれたジムだったんですね。なぜ瑞江に?
小林:
地元だからです。コロナというハンデがあっても、地元だったら街のことをよく分かっているので、十分戦えそうだと思って。
――実際トレーナーになって、独立もされて、高校生のころに思い描いていたトレーナー像とギャップを感じることはありますか?
小林:
イメージ通りではあります。でも、独立したことに伴う不安とプレッシャーが半端ないですね。
――不安やプレッシャー、あるんですか? そういうのを小林さんから感じたこと、ないです。
小林:
ありますあります。「うわーーー」ってなりますよ(笑)。会社を辞めてフリーランスになった直後なんて、「俺、来月からフリーランスだ。どうしよう。仕事とれるかな…」みたいな不安に駆られて、ちょっと体調悪かったです。
――今でも?
小林:
全然あります。毎日抱えていますよ(笑)。
瑞江をオープンさせるときは、そこまでの不安はなかったんですよ。やっぱり地元だし、気持ち的にも「やるぞ」の方が強かったので。葛西のオープンのときもそこまでなくて、今回の一之江店のオープン(2023年5月13日)のプレッシャーがやばかったですね。お客さんに本当に来てもらえるか心配で。
――ご自身のメンタルケアのためにやっていることはありますか?
小林:
お客さんのレッスンをやっていると、回復するんてますよ。お客さんとお話して、そこで持ち直しているなって感じます。あとは、近所の居酒屋さんに行ってマスターや常連さんと話して、ワイワイするのも息抜きになりますね。
――やっぱり、人と接するのが好きなんですね。
小林:
そうですね。「今日人と話したくないな」と思うことが本当になくて。
――すごい。私も私で、トレーニングにくると体を動かすことはもちろん、小林さんとの会話が気分転換になります。
小林:
そう言ってもらえると、すごく嬉しいです。お客様からは「身近にいないタイプ」とよく言われるので、いい距離感で話せているんだと思います。
「江戸川区のパーソナルジムと言えばここ」を目指して
――3店舗目となった一之江店のオープンに際し、学んだことや発見はありますか?
小林:
毎日あります。瑞江や葛西とは地域柄が違うので、とるべき戦略も全く違うんです。これまでやってきたことを一之江で試して、改善して、またやって……を繰り返しています。ただ、今回の一之江店でかなり学べたので、自信がつきました。
――どんなタイミングで「次の店舗を出そう」と考えるんですか?
小林:
そうですね……まず、僕の中で毎年一つは何かにチャレンジすると決めていて。去年は葛西、その前が瑞江のオープンでした。店舗を出すって、わかりやすいチャレンジなんですよね。その決まりが「新店舗を出す」という選択の後押しになっています。
あとは、やっぱり地域の状況も重要で、近くに競合になりそうなジムはあるのか、スタッフがそこに行けるか、適した物件があるのかなど、当てはまる条件が多ければ新店舗を出すって判断になりますね。
――今までの判断も間違っていないから、きっと毎年順調に新しいチャレンジができているんだと思います。
小林:
周りからは「有言実行だね」と言われます。実は、そこにもこだわっていて。叶えたいことは、あえて口に出すようにしています。
ジムのお客さんや友だちに言うことで、自分にプレッシャーがかかるんですよ。それをバネにする力が僕は強いみたいで、ものすごくパワーが出ます。何かを決断をするときも「自分でこう言ったよな」って、後押しになるんです。だから、実現したいことは積極的に口に出しています。
――小林さんから感じる、意志の強さの根源に触れられた気がします。それでは最後に、「これからこうなりたい」という未来への展望を口に出していただけますか?
小林:
地元が江戸川区なので、江戸川区に密着したパーソナルジムでありたいです。
そのためにも、まずは江戸川区の都営新宿線沿いに店舗を出していきたいです。そして、ゆくゆくは江戸川区の全ての駅に店舗を出して「江戸川区のパーソナルジムと言えばここだよね」となったら、嬉しいですね。一つずつ実現させていきます。
――力強い「有言」いただきました! 小林さん、ありがとうございました。