今日は春節
今日は春節だそうだ。いわゆる旧正月というやつである。
去年の今頃は、旅をしていた。
寒さの中で、知らない街を彷徨い歩いた。余所者の外国人、ましてや日本人が行くことのないであろう街路も数知れないはずである。
そんな時間を回想する。
できることなら、気に入った女の子のためにすること以外には、なんの義務も責務も抱えず、また歩きたい。特定の目的地を持たず、ただひたすらに。
田舎の街の食品店が並ぶ路地で、犬肉店の前を通った時、これまで一度も嗅いだことのないような匂いを感じた。あれが獣の匂いというものなのだろう。店のシャッターや壁には茶色い油のようなシミがこびりついていて、店の佇まいはいかにも古くて、なんとも言えない虚しさを感じさせた。空もたしかに暗かった。でも、一瞬気が滅入るような感覚もあったけれどそんなに気分は悪くない。
そんな断片が私の頭の中を過ぎる。ただの断片に過ぎない。