2020年8月31日の夜に。
今年は夏が終わってしまう寂しさを感じない。夏と、そのあとに続く何かとの間にある目に見えない境界を潜り抜ける、という感覚がない。少なくとも僕にはそう感じることができない。
今年の場合は、カレンダーに従って行動しているわけではなく、規則正しい生活をしていないからかも知れない。
クーラーの効いた部屋で、好きなだけ過ごすことができて、暑さを避けて外出できるからかも知れない。
たまたま、今日の東京は、涼しい天気だからなのかも知れない。
祭りも花火大会も無く、「あ、終わっちゃったね」と好きな子と話すこともない。たとえ口に出さないとしても、その余韻と沈黙を共有することもないからかも知れない。
なぜなのかは、わからなくてもいい。
僕たちは、「夏」という物語を必要としていて、それが過ぎ去ろうとするときの寂しささえも、愛しているのだと思った。