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母の好きな歌

 今晩、懐かしい音楽を聴いていた。

 それは母が好きな歌手の歌で、幼い頃、車でよく流れていた記憶がある。今改めて聴いてみても、僕もその歌手の歌がたまらなく好きだ。

 それから、急に、母に電話“しなきゃな”と思った。それと同時に、過去の記憶も呼び起こされてきたような気がする。

 たぶん重い。あまりに重い話になる。

 いつか語ろうと思いながらも、簡単には語りたくなかった。そして、直接語れば、周囲の人は引くのではないかという恐れも多分抱いている。でもこの際、もう書いてしまおうと思う。正直なところ聞いて欲しい。みんな理解してくれなどと贅沢なことは言わないから、身近な人には知っていて欲しいと思う。だけど、よほどのことがない限り話すこともないのだ。「まともな」家庭に生まれて、思い悩むことなく生きてきた人には、僕の話が重いのは分かりきっている。

 どこから話すのが適切かはわからない。今、母は病院に居る。今は体調も落ち着いているようなので、心配はないだろう。それもあって、普段から話すことはないけれど、年に数回電話で話す。母から電話が掛かって来ることもあるし、僕から電話することもある。そして電話で話すと母は泣いて喜ぶ。末っ子で一番可愛い存在なので、たぶんこのように泣くとしたら僕に対してだけなのだろうと思う。

 それから、電話よりも低い頻度で、病院に会いに行くこともある。遠いのでそんなに頻繁に行けない。僕は、母に会いに行っていないことを時々思い出しては、申し訳なく思いつつ、何もできない(正確には、すぐにその場で会いにいくこともしない)。僕が会いに行くと、母は本当に泣いて喜ぶ。そんな母を見て、泣きそうになる。その場で泣いたことはないけれど。(この文章を書きながら、僕は泣いている。)母に対して、申し訳なくも思いながら。僕が僕自身を責める必要がないのもわかっている。そうわかっていても、僕は自分の責任だと思っているところがあるようだ。責めたい人間が居ない訳ではないが、誰かを責めても仕方がないとも思ったりする。

 書くことはあるけれど、ひとまずここで止めて、公開してみようと思う。

 重いのはわかっている。それでも書いてみようという気になったのだ。

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