「住民サービスが向上する/低下する」とは何か
■財源が今より少なくなる = サービス低下?
大阪市廃止・特別区設置、いわゆる大阪都構想についての住民投票が告示され、論戦が活発になっています。
中でも、住民サービスがどうなるのか、という点に注目が集まっているようです。
住民サービスに関する主張としてよく見かけるものには
大阪市を廃止して特別区を設置するといった制度・仕組みの変更や運用には今よりお金がかかる。
その分、今まで住民サービスに使われていたお金を減らさざるをえなくなる。
だから、住民サービスは低下してしまう。
というものがあります。
しかし、使えるお金が少なくなるということが、本当に住民サービスが維持できないことを意味するのでしょうか?
■あべこべの発想
結論から言うと、因果関係があべこべなんじゃないかと思っています。
大阪都構想とはなるべく少ないコストで今までと同等水準の住民サービスを提供しやすくするために、制度・仕組みを変えることです。
制度を変えるのにコストがかかるから住民サービスにかけられるお金が減ってしまう、のではなくて、住民サービスにかけられるお金が今より少なくても提供するサービスの水準は維持できるように効率的な制度に変えていく、というのが大阪都構想なのです。
結果的に住民サービスの提供にかかるお金が少なくなりますが、これは「住民サービスの低下」ではありません。コストパフォーマンスが良くなっている分、むしろ「住民サービスの向上」と言えます。
前回の記事でも書きましたが、人口縮減期となる今後は、このような逆転の発想つまりパラダイムシフトが必要となります。
今は、人口拡大期のように何もしなくても税収が右肩上がりとなっていた時代とは全く違うということは押さえておくべきポイントです。
今後、税収が右肩上がりに増えていくわけではない以上、現行の住民サービスについてはできる限り効率的に実施し、浮いたお金を新しい住民サービスであったり成長への投資(具体的には、税収が増えるような事業)に使うという方向転換がこれからは必要になります。
逆に言えば、「財源が多い政令指定都市だから、これからも何も変えずに今のままで良い」ということにはならないのです。
というわけで、大阪都構想の3つのポイントである「集権化」「分権化」「民営化」を軸に、サービス提供におけるコストパフォーマンス向上の一例を見ていきます。
(なんで!?都構想が必要なん? より)
■集権化 ~調整のためのコスト(取引費用)の削減~
府と市の二重行政を制度的に解消するための「集権化」ですが、これにより今までの府と市の間で必要となってしまっていた様々な調整を実施するためのコスト(コースの定理で言うところの取引費用)を削減することができます。
■分権化 ~需要に対して過大な住民サービスのコスト適正化~
大阪市を比較的格差の小さい4つの特別区に再編する「分権化」によって、各特別区で実施される同じような住民サービスが果たして適正なコストなのかを4つの特別区間で比較検討することになります。その結果、費用がかかり過ぎている特別区の住民サービスは、費用のかけ方を他の特別区の水準に合わせざるをえなくなるでしょう。
■民営化 ~民間との協業による公的経費の削減~
今の大阪における地下鉄や公園管理に代表されるように、全てを地方自治体だけで賄う必要はありません。民間が実施可能な部分については民間委託などを含めた「民営化」によって、地方自治体としての公金の支出を減らすことができます。
住民からすれば、サービスを提供してくれる主体が誰であれ、トータルとして提供される住民サービスに不足・不満・不安が無ければ、何も問題にはならないはずです。
■本来あるべき地方自治体の姿
もしかすると、地方自治体に「最適化」とか「コストパフォーマンス」を求めることについて違和感を持つ方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、地方自治体の運営の基本となる地方自治法には、以下のような条項が規定されていることを頭の片隅に置いてもらえればと思います。
地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。
(地方自治法第2条第14項)
地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。
(地方自治法第2条第15項)
そういう意味では、大阪都構想とは特例的な政令指定都市制度から地方自治体として本来あるべき姿=原則へと回帰するものだとも言えるのかもしれません。
■おわりに
今回の記事もおおさか未来ラボの各コンテンツを参考にさせていただきました。いつもありがとうございます。
#だから私は大阪都構想 #今までお疲れさま大阪市
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