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世界のペット市場 データ/ファクト/トレンド2/4(ペットの健康)

Global State of Pet Care」を出典として現在の世界のペット市場のデータやトレンドがどうなっているかを見ていくシリーズ第2回目。第1回目はこちら。ベルギーに拠点を置くHealth for Animalsが発行したレポートです。

ペットの健康 グローバルトレンド要点

要点

・ペットの寿命は延びている
ペットの平均寿命が230%も延びた国もある。

・平均寿命が伸びている理由
ワクチン接種、獣医による治療、ペットのニーズに対する意識の向上により、寿命が延びている。

・ペットの飼い主はこれまで以上にペットケアに投資している
保険などのツールがペットケアコストの低減にも役立っている。

・発展途上国には、ペットケアに関する固有の課題がある
放し飼いにされている動物やコミュティで育てている動物には正式な飼い主がいないため途上国には独自の課題がある。

・ペット保険は、小規模ながら成長中の市場である。
ペット保険は現在まだ規模は大きくないがペットケア市場における成長市場である。

ペットの寿命は?

ペットの寿命

・ペットの寿命は、10~20年前に比べて格段に長くなり、ペットは健康的な生活を送ることができるようになった。これは飼い主や動物病院にとって、「シニアケア」や「加齢に伴う病気」がより優先されることを意味する。

ペットの寿命はどのように変化しているのか?
・米国の犬の平均寿命は、2002年から2016年の間に10.5歳から11.8歳になり、11.4%伸びた。
・日本では、1980年代に比べて現在の犬の寿命は50%、猫の平均寿命は同期間に230%伸びている。
・ある試算によると、世界全体として、犬の寿命は過去40年間で2倍になり、家猫は野良猫の2倍の寿命を持つようになった。

なぜペットは長生きするのか?ペットの種類によって異なるが、研究者は、以下のような主な要因を特定している。
・飼い主がペットの健康についてより深く理解し、意識するようになった。
・ワクチン接種の増加、栄養状態の改善、室内飼育の増加により、医療問題が減少している。
・症状が出たときに対処治療するのではなく予防医療が増えた。

ワクチン接種は増えているのか?

ワクチン接種状況

・多くの市場では、ワクチン接種のレベルに関するデータは乏しい。
・しかし、米国とカナダでの調査によると、91.5%の獣医師が、主要なワクチンを懸念したり、拒否したりする顧客がいると回答している。実際に、
   -犬の23%が定期的なブースター接種を受けていない。
   -猫の39%が定期的なブースターワクチンを受けていない。
   -飼い主は、ワクチン接種をしない理由の上位に「(特に理由はないが)必要ないから」と回答している。

狂犬病などの共通感染症のリスクはどうなっているのか?

人とペットの共通感染症のリスク

・ほとんどの国ではペットから人への疾病伝播のリスクは非常に低いままであるが、狂犬病などの疾病は発展途上国市場において根強い脅威であり続けている。
・狂犬病は毎年約59,000人の死因となっており、その半数は15歳未満の子供
・狂犬病が人に感染する原因の約99%は犬であり、狂犬病の年間総費用は約86億ドルと推定されている。
・最も被害が大きいのはインド。毎年約2万人の狂犬病死亡者を出している
・このような状況にもかかわらず、ほとんどの先進国では、ペットによる人獣共通感染症の発生率は非常に低くなっている。
・米国疾病対策予防センター(CDC)のデータによると、犬や猫に由来する人獣共通感染症の発生は非常に少ないことが示唆されている。

ペットの寄生虫のリスクは?

寄生虫のリスク

・ノミ、マダニ、寄生虫は、多くのペットにとって一般的かつ継続的な問題であることに変わりはない。
・フィラリア症は犬で28%、猫では19%が過去に感染した形跡があることが判明している。
・米国の大都市にあるドッグパークの85%で、少なくとも1匹の犬が腸内寄生虫の陽性反応を示している。全体では、公園で検査した犬の20%が陽性であった。
・英国の研究では、無作為に選んだ猫の28.1%、犬の14.4%にノミが寄生していた。
・これらの寄生虫の一部は人獣共通感染症であり、意図せず飼い主に移ることがある。したがって寄生虫の制御が飼育者にとっての健康をも向上させる理由となっている。
・寄生虫予防は、定期的な寄生虫駆除剤と、潜在的な問題を早期に発見し、ペットへのリスクを最小限に抑えるための定期診断検査が必要。

長寿化がペットの健康に与える影響

長寿化のリスク

・ペットの高齢化は、新たな健康リスクをもたらしている。人間と同じように、がん、肝臓病、糖尿病、老衰、関節疾患などの健康問題のリスクは、人生の後半になるほど高まっていく。これらのリスクに対抗するために、獣医師は通常、次のことを推奨している。
・獣医療の充実、高度化
・予防と早期介入に重点を置く
・専門的な食事と栄養
・ワクチン接種と寄生虫駆除を継続
・運動能力の維持
・メンタルへの良い刺激

疾病予防はどのように進化してきたか

疾病予防の進化

・モニタリングツールと診断により、獣医師は病気の新たな危険因子を特定し、早期の予防措置を講じることができるようになった。
・例えば、ビッグデータツールは、何百万頭もの動物の診断記録を集積し、慢性疾患の発症を示唆する微妙な健康状態の変化を特定するのに役立つ。
・小動物の獣医師は、こうした洞察を患者と共有し、健康問題を予測することで、ペットの寿命を延ばすことに役立てている。

ペットの健康維持への投資

ペット健康への支出状況

・コンパニオンアニマルのヘルスケアや治療に対する消費者の支出は、ここ数十年、特にPet Humanization(ペットの人間化、ペットの家族化)の進展に伴って増加している。
・ペット産業は、世界的に見ても大きな産業で、米国だけでも消費者は2021年にペットとペット関連製品に年間1236億ドル(20兆円規模)を費やしている
・モルガン・スタンレーの市場アナリストは、これが2037年までに2750億ドルにまで増加する可能性があると推定している。
・オーストラリアでは、2021年に犬や猫のために307億オーストラリアドルが支出され、支出の大部分はペットフード、獣医サービス、ヘルスケア製品に向けられた。
・英国では、獣医やその他のペットサービスに対する年間支出は、2015年の26億ポンドから2021年には40億ポンドと、わずか6年間で54%増加した。
・米国では、ペットの飼い主を対象にした調査で、犬や猫の飼い主が年に1回動物病院を訪れるのは約4割にとどまることが明らかになった
・獣医師会では、すべての動物が定期的(年1回以上)に獣医師の診察を受けることを推奨しているため、多くの地域で獣医療への投資が拡大する機会がある。

ペット健康市場はどれだけ大きいのか

ペットヘルス市場

・米国だけでも、2021年にペットの飼い主はペットのために1236億ドルを費やし、343億ドルは動物医療と製品(市販薬を含まない)に充てられている
・2021年に販売された動物向け健康製品の50%以上がペット用であり、畜産用製品が大半を占めていたわずか4年前(2017年)から切り替わった
・EUでは、ペットの飼い主がペットフードに毎年220億ユーロ近くを費やしており、年平均成長率は2.8%。
・しかし、多くのペット、時には50%以上のペットが、飼い主の調査に示されるように、いまだに毎年獣医師の診察を受けていない。

ペット保険加入率は?

ペット保険加入率

・一部の国が顕著な成長を遂げているものの、ペット保険の加入率は先進国、新興国ともに総じて低い水準にとどまっている。
・2021年末時点で、米国とカナダで保険に加入しているペットはわずか440万匹。これは2020年比で27.7%の増加ですが、両国にいる1億5千万匹以上の犬や猫の2-3%に過ぎない。
・米国ではペットの保険加入率は10~15%まで成長すると期待されている
・米国獣医師会は、ペットの健康保険に加入していると、飼い主が獣医師の勧告に従う可能性が高くなる と指摘している。

新興国におけるペットの健康状況

新興国のペットヘルス

・発展途上国や新興国におけるペットの健康は、一般的な先進国の状況とは異なる飼い方のパターンから、独自の課題に直面している。
・発展途上国では、自由に歩き回る犬や地域で飼われている犬が一般的で、先進国の大多数が「飼い主」を持つのに対し、発展途上国では推定5%しかいないという報告もある。
・このため、発展途上国では、狂犬病、レプトスピラ症、リーシュマニア症などの予防可能な主要疾病の課題が生じる。正式な所有権がないため、無差別な繁殖が行われ、さらなる健康被害が生じる可能性もある。
・発展途上地域では、収入の低さが専門的なケアや治療の障害となることがある。可処分所得が少ないと、動物病院での治療を受ける余裕もなく、その結果、動物病院部門の成長が阻害される可能性がある。つまり、治療を受けようとする飼い主でさえ、地元で利用可能な小動物の獣医師を見つけるのに苦労する可能性がある。
・新しい健康食品やペットフードなどの商品に対する規制や貿易障壁も一般的で、最も必要とされる市場に製品が入るのを阻んでいる。
・例えば、国によって複雑で異なる規制プロセスや、規制が未整備な市場はペットの健康増進に役立つ新製品を登録する企業の意欲をしばしばそぐことがある。
・専門知識の不足も大きな障壁となっており、発展途上国の市場には獣医の専門家の数が十分ではない。

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